【指導参考事項】
1. 課題の分類  野菜の貯蔵、加工
2. 研究課題名  簡易貯蔵庫による野菜貯蔵試験
3. 期 間  (昭和46〜47)
4. 担 当  北海道立中央農試試験場園芸部加工科
5. 予算区分  道費
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 空気調節式、簡易貯蔵庫による冬野菜貯蔵の適否を明らかにする。

8. 試験研究方法
 簡易貯蔵庫の構造、特徴
 ・ 本貯蔵庫はビニ−ルハウスのような形に鉄骨を組みこれに100mmの断熱材を当てその上にカラ−トタンを張り断熱性と気密性をもたせた。地上けっmせつのかまぼこ型の簡 かつ安価な低温庫である。
 ・ 貯蔵条件は0〜2℃湿度80〜90%とし、温度の調整は貯蔵原料の呼吸熱と庫外冷気の積極的な導入で行い、これら一連の操作は、温度調節器で自動的に行われるようにし、庫内の空気は外気導入の有無にかかわらず絶えず循環されるようにした。
 貯蔵方法
 ・ 作物名:キャベツ
   品種:四季穫  収穫:11月9日〜10日  予乾:10日間  包装処理:厚さ0.03、0.05mm、無孔、有孔ポリフィルム、0.03mm塩ビフィルムによるライナ−包装、0.05mmポリフィルムで積み上げた容器全体をおおうシ−トかけ。外装容器はポリコンテナ−またはすかし木箱

9. 結果の概要・要約
 庫内温度は12月中旬から3月末まで設定どおり0〜2度の範囲で安定し、庫内温度分布も均一で湿度も換気によって80〜90%になった。低温庫としての機能は優れていたといえる。また11月〜3月の電気料として2万7千円(消費電力量2064KWH)を要したが、これはキャベツ30tを3月まで貯蔵した場合に1kg当り0.9円に相当する。本貯蔵庫は建設費維持費の安い低温庫として十分利用できる。
 ・ 簡易貯蔵庫内で20kg入りすかし箱を多数積重ねフィルム覆う(シ−ト掛)にすれば、調整重量歩留は1月で9割、2、3月で8割となり実用性はあると考える。
 又、トレンチも貯蔵ロスは少なく鮮度も優れているが、冬期に雪中からの出荷作業が天候に左右されやすい欠点がある。
 その他、貯蔵性に関係があると思われた点は
Ⅰ 収穫後の取扱い、収穫後に20kg入のすかし箱で屋内に重ね、10日間予乾(減重約2%)を行ったものは、予乾せず入庫したものに較べて2月までの減耗は大差がなかった。
  従って収穫後は予乾の状態に置き、10日以内に順次、調整入庫するこたが可能で作業の配分上から好都合である。
Ⅱ 包装と貯蔵の方法 簡易貯蔵庫内では湿度80〜90%、温度5〜0℃の場合は20kg入の箱ごとにライナ−包装したものは球の外側が湿腐状となり調整歩留りは劣り、箱を4〜5段積みとして多数の箱をフィルムで覆ったシ−ト掛のものは緑色も遅くまで残り調整歩留りも良い。
又、トレンチは雪中掘出しの困難を除いては品質、歩留りが優れていた。

10. 主要成果の具体的数字
 庫内・外の温度(℃)・湿度(%)平均
時期/
項目
10月 11月 12月 1月 2月 3月
27〜
31日
上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬 下旬 上旬 中旬
庫内温度 10.2 6.4 4.3 3.9 3.4 0.9 0.1 0.7 0.3 0.1 0.5 0.3 0.5 -0.2 -0.3
庫内湿度   80* 80 87 87 88 89 87 86 87 89 89 85 85 83
庫外温度 9.3 4.4 1.6 2.3 1.1 -2.7 -9.7 -4.6 -5.8 -8.0 -6.7 -4.0 -4.0 -5.3 -6.1

 包装、予乾の効果、トレンチ貯蔵との比較
項目/
時期/
調整重量歩留り(%) 良個数割合(%)
12月 1月 2月 3月 12月 1月 2月 3月
無 包 装 89.7 88.9 80.4 73.1 100 100 94.7 82.1
 〃  予乾 91.5 87.5 83.1 71.9 100 100 90.9 83.8
有孔0.03 91.3 87.7 80.2 71.8 97.9 100 95.0 69.2
 〃  予乾 90.6 88.7 83.0 65.2 97.2 100 100 73.5
無孔0.03 89.5 80.0 80.4 71.0 97.5 94.4 93.7 74.4
 〃  予乾 92.3 87.2 74.1 59.8 100 97.2 90.0 67.7
有孔0.05 90.8 87.7 76.9 74.2 100 97.7 92.5 63.3
 〃  予乾 93.7 86.3 82.4 71.6 100 97.2 94.4 57.5
無孔0.05 85.1 83.7 78.8 65.2 93.7 97.2 93.2 61.7
 〃  予乾 92.4 89.9 85.5 72.3 100 100 100 73.0
無孔0.05 シ−ト 93.9 88.7 80.8 79.0 100 98.9 95.4 68.2
 〃  〃 予乾 89.6 89.9 81.6 77.2 98.2 100 91.7 83.3
無孔0.03 塩ビ 92.2 88.9 83.1 71.3 100 100 97.2 60.9
トレンチ 85.0 82.8 75.6 100 100 91.2

 播種期と歩留り
項目/
播種時期/
処理
調整重量歩留り(%) 良歩留り
12月 1月 2月 3月 12月 1月 2月 3月
無包装 5月23日 89.7 88.9 80.4 73.1 100 100 94.7 82.1
6月22日 83.9 83.4 78.7 76.2 100 100 100 98.4
無孔0.03 5月23日 89.5 80.0 80.4 71.0 97.5 94.4 93.7 74.4
6月22日 87.6 86.2 84.2 82.0 100 100 100 100
トレンチ 5月23日 85.0 82.8 75.6 100 100 91.2
6月22日 78.5 79.8 77.4 100 100 100 97.0


11. 今後の問題点
 1. 品種別、熟度別の貯蔵可能期間の検討
 2. 貯蔵単位の検討

12. 次年度の計画(成果の取扱い)
 注意事項
 1. 材料
 病害虫の被害のあるもの、又は収穫及び運搬中の切傷や打痕のあるものは、貯蔵中の腐敗や調整ロスが増大するので、なるべく入庫しない。
 2. 貯蔵庫の取扱い
 庫内温度は0℃に設定する。ただし庫外温度が0℃以下にならない11月の入庫時は庫内温度調節目盛を庫外最低温度に合わせ、外気温の降下にあわせて順次0℃に近づけるように目盛りを調節する。また、換気によって湿度を80〜90%に待ち、過湿は絶対にさける。