【指導参考事項】
りんご樹体のゆ合組織形成促進試験
1. ユゴ−ザイF1効果試験
・ 期 間  昭和47〜48年
・ 担 当  道立中央農試園芸部果樹科  松井 文雄・峰岸 恒弥
・ 予算区分  道単
・ 協力分担  なし

・ 目 的
 りんご樹体のゆ合組織の形成を促し、ふらん病の侵入阻止をはかるため、植物生長調整剤ユゴ−ザイF1の効果を検討する。
・ 試験方法
試験Ⅰ      (昭和48年)     
供試薬剤  ユゴ−ザイF1(主成分硫酸オキシキノリン0.180%、a-ナフタリン酢酸ナトリウム0.004%、その他の成分酢酸ビニ−ル樹脂他)
処理方法  約50年生の国光を供試し、1区9〜10個所につき、3月12日および5月1日に処理した。処理は亜主枝の側面を10cm平方の大きさに削り取り、速かに供試薬剤を塗布することによった。
調査方法  (1) ゆ合組織の形成状況:上・下・横の切口からのゆ合組織の進展程度を測定した。
 (2) 切口縁に対するゆ合組織形成割合:切口の上・下・横の縁について、ゆ合組織の形成割合を調査した。
 (3) 発病率:切口中ふらん病の発病が認められた個体の百分率。
試験Ⅱ  (昭和48年)
供試薬剤  試験Ⅰと同じ
処理方法  10年生デリシャスおよび旭を供試し、1区デリシャス10病患部、旭8病患部につき6月6日に処理した。
調査方法  (1) ゆ合組織の形成状況:ゆ合組織の盛り上り状態を3段階に分け、該当個体数を調査した。
 (2) 切口全縁に対するゆ合組織形成割合:切口全縁を10として、ゆ合組織の形成されている割合を平均値で示す。
 (3) 発病率:処理個体中ふらん病の発病が認められた個体の百分率。


・ 結果の要約
 1. 昭和47年度の結果:紅玉を供試し、3月17日および4月18日に主幹に切口をつけ、ユゴ−ザイF1の効果をみた結果、無処理区に比し明らかに塗布効果があった。
 2. 本年の結果:試験Ⅰでは、ユゴ−ザイF1は無処理に比し、顕著な効果が認められたが、対照薬剤のバルコ−トとの差は明らかではなかった。試験Ⅱでもユゴ−ザイF1とバルコ−トとの差は明らかでなかった。
 3. 以上の結果から、ユゴ−ザイF1は無処理に比べ塗布効果はあり、その効果はバルコ−トと同等であると考えられる。
 4. バルコ−トは−20℃に数時間おくことにより凍結し、冬期間低温下に放置することにより変質(分離域は擬固)したが、ユゴ−ザイF1は同様の処理によっても凍結、変質しないことから、本道のような寒冷地での実用性は高いものと考えられる。

・ 主要成果の具体的数字
 表1 試験1の結果
処理期日 塗布薬剤 調査数 上   部
ゆ合組織の形成状況 形成
割合
〜3mm 4〜6 7〜9 10mm〜 平均
1 3月
12日
ユゴ−ザイF1 9 1 4 4 0 5.2 10
2 バルコ−ト 9 2 4 2 1 6.0 10
3 無処理 9 9 0 0 0 -0.9 9.4
4 5月
1日
ユゴ−ザイF1 10 1 4 5 0 6.9 10
5 バルコ−ト 9 0 5 2 3 7.3 10

下   部 横   部 発病率
(%)
ゆ合組織の形成状況 形成
割合
ゆ合組織の形成状況 形成
割合
〜3 4〜6 7〜9 10〜 平均 〜3 4〜6 7〜9 10〜 平均
1 4 5 0 0 3.0 9.7 1 1 5 2 7.6 10 0
2 4 4 1 0 3.9 10 0 2 6 1 8.5 10 0
3 9 0 0 0 -1.7 7.4 6 2 1 0 3.4 10 0
4 0 9 4 0 5.9 10 1 4 3 2 7.3 10 0
5 0 6 1 0 5.5 10 0 5 3 2 8.0 10 0
  注) 10月4日 調査

 表2 試験2の結果
品種 供   試
塗布剤名
供   試
個体数(L)
ゆ合組織の形成状況※ 切口全縁に対する
ゆ合組織形成割合
発病率
(%)
1 2 3 指数
デリシャス ユゴ−ザイF1 10 0 4 6 2.6 10 0
バルコ−ト 10 0 5 5 2.5 10 10
ユゴ−ザイF1 8 0 0 8 3.0 10 0
バルコ−ト 8 0 1 7 2.9 9.9 0

※ゆ合組織の形成状況  1. ゆ合組織の形成はあるが盛り上りが良くない
 2. 盛り上りが中程度
 3. 盛り上りが非常に良い
    
            1A+2B+3C
指数=─────
        L
     (A、B、Cは各段階に属する個体数)
  注) 6月6日処理  10月2日調査


・ 使用上の注意事項
 1. 殺菌力およびゆ合組織形成促進効果は、バルコ−トと同等であるので、使用法はバルコ−トに準じ、病患部を削り取る時は必ず大きめに除去し、速かに薬液を塗布すること。
 2. 毒性は普通物であるが、使用に当たっては農薬使用上の注意事項を守る。