【指導参考事項】
1. 課題の分類  果樹
2. 研究課題名  キイチゴの品種適応性に関する試験
3. 期 間  (昭44〜48)
4. 担 当  北農試作二部園1研  中島 二三一・西山 保直
5. 予算区分  経常
6. 協力分担

7. 目 的
 キイチゴは、夏期冷涼な気候を好み、果実は加工原料として関心がよせられるなどから品種を蒐集し、本道における適応性を検討する。

8. 試験研究方法
 15品種を1m四方のコンクリ−トわく(底なし)に定植、わくは3×3mに設置した。1株当りN35g、P2O525g、K2O35g施して、10a当り堆肥500kg、石灰は1〜2年おきに50kgをそれぞれ施した。仕立ては発育の良い新梢を残して叢状形とし、混み合っている部分は間引いた。病害虫防除は、殺ダニ剤主体に殺虫、殺菌剤を加工して年4〜6回散布した。

9. 結果の概要・要約
 Blackberryは、耐寒性弱く、熟期も遅いので本道に不適であり、Dewberryは、甘味少なく生食にに向かない。Raspberry(赤、黄)は、耐寒性強く、香気があって多甘などから生食にも適し、多収ですぐれている。優良品種の「Latham」「Go lden Queen」に比較すると次のとおりである。
 (1) 「Flaming Giant」樹勢中で、樹高1.3m前後。上向開張性で7月中旬より成熟して「Latham」より7日位早い。果実は平均2g内外で大きいのは4g位である。熟果h鮮紅色で短だ円形、品質良く、多収である。
 (2) 「September」樹高1.5m前後で樹勢、樹姿、果実の大きさ、果色、果形などは上記品種と似ているが、熟期は2日位早い。本品種は、二季成りで1回目は7月中旬〜8月中旬に熟し、2回目は9月中旬から降霜するまで熟する。従って収量はきわめて多く、品質も良い。
 (3) 「Cuthbert」樹勢強く、樹もほぼ「Golgen Queen」位の大きさとなり、上向開張性で、熟期は7月下旬〜8月下旬で、果実はだ円形、熟すると濃赤色となり、品質は良く、堅固で「Latham」よりくだけにくく、Brixも高い。収量は中位である。

10. 主要成果の具体的数字
品種名 1株の茎数(本) 樹高
(cm)
樹幅(cm) 樹姿 凍害
程度
昭45 46 47 48 東西 南北
Raspberry Flaming Giant 10 5 7 8 129.7 124.7 104.3 上向開張性
   〃   September 10 5 8 8 150.0 145.0 141.0
   〃   Cuthbert 10 5 8 8 232.0 201.7 216.0
   〃   Latham 10 5 8 8 206.0 163.0 170.3
   〃   Golden Queen 10 7 7 8 210.3 201.7 210.3
 Dewberry Rucretia 43.3 458.7 354.7 匍匐性 ±
 Youngberry Tips 68.0 521.7 496.0 ±
 Raspberry Munger 67.7 499.3 459.0 ±
 Blackberry Cameron 54.3 467.3 395.3 ±
  注) (1) 樹高、樹幅は昭和46、47、48年の平均を示す。
     (2) 凍害程度の一は被害なし、±は1部分被害あり。

品種名 発芽期
(月日)
開花(月日) 収穫期間
(月日)
1株の収量
(g)
平均果実
(g)
Brix
(%)
Raspberry Flaming Giant 4.20 6.19 6.30 7.13 7.20〜8.17 1211.9 1.9 7.7
   〃   September 4.19 6.16
8.15
6.25
9.7
7.8
10.7
7.19〜8.16
9.20〜11.1
1498.1
544.2
2.1
2.1
8.4
11.3
   〃   Cuthbert 4.22 6.24 7.6 7.18 7.29〜8.24 830.9 1.6 11.1
   〃   Latham 4.23 6.23 7.4 7.18 7.27〜8.24 1439.9 2.0 9.4
   〃   Golden Queen 4.23 6.26 7.7 7.18 7.29〜8.26 1469.9 1.6 12.1
 Dewberry Rucretia 4.25 6.16 7.1 7.16 8.1〜8.30 814.3 4.2 6.6
 Youngberry Tips 4.25 6.20 *6.30 *7.13 8.5〜8.27 177.6 4.9
 Raspberry Munger 4.26 6.20 *6.30 *7.13 △8.1〜8.18 △273.6 △5.0
 Blackberry Cameron 4.25 6.18 △7.2 △7.16 8.4〜8.28 211.8 2.9
  注) 昭和45464748年の平均を示すが、*は2ヵ年、△は3ヵ年の平均を示す。

11. 今後の問題点
 (1) キイチゴの栽培法の確立。
 (2) 利用、加工の検討。

12. 次年度の計画(成果の取扱い)
 (1) 耐寒性強く、夏期冷涼な気候を好むので暖地では茎葉繁茂し結実少ない。
 (2) 繁殖は株の周辺に発生する吸枝による。
 (3) 植付はやや深植えとし、早春の土壌水分のある頃が望ましい。
 (4) 土壌の適応性は広いが、有機質の富んだ砂壌土が適する。
 (5) 栽植距離は、恒根でうね間2.0〜2.5m、株間1.0〜1.5m、株仕立ては2m四方でよい。
 (6) 風害を防ぐためかるくしばって1株の茎数7〜8本が適当である。
 (7) ナミハダニが多発するので注意すること。