【指導参考事項】
1. 課題の分類  新得畜試 肉牛 育種
2. 研究課題名  肉用牛の放牧適性品種選定に関する試験
           Ⅰ 放牧牛の血液成分と増体量
           Ⅱ 放牧牛の糞水分と増体量
3. 期 間  昭44〜48
4. 担 当  新得畜試 研究部・飼料科(渡辺 寛)
                     衛生科(岸 晃司・工藤 卓二・八田 忠雄・谷口隆一)
6. 協力分担  帯広畜産大学・家畜育種学教室(光本 孝次)

7. 目 的
 肉用牛の放牧適性品種を選定する資料を得るため。

8. 試験研究方法
 実験Ⅱ.放牧牛の血液成分と増体量
 1. 期間:6月上旬〜11月上旬(昭和46〜47年)
 2. 供試牛および試験区分
品種 牧草放牧地 野草牧草地 牧草地の植生
A種(育成めす) 8頭 8頭 牧草地:いね科47% まめ科47% その他6%
野草地:いね科8% その他ささ、いたどり等
B〃(  〃   ) 8〃 8〃
H〃(  〃   ) 8〃 8〃
 3. 肉用育成牛の血液成分の品種、放牧地、時期による変動の統計学的検討
 4. 放牧育成牛の血液成分と増体量の検討
 実験Ⅲ.放牧牛の糞水分と増体量
 1. 期間:6月上旬〜11月上旬(昭和47年)
 2. 供試牛および試験区分
放牧地 A種 B種 H種 H種 合計
牧草地 3頭 3頭 3頭 3頭 12頭
野草地 3 3 3 3 12
 3. 糞水分量の肉牛品種、放牧地、時期(月)による変動。放牧地の草の水分、糞水分および増体量の相互関係の検討

9. 結果の概要・要約
 実験Ⅱ.
 1. 血液成分の品種差は、u-N、Hb、Ca、放牧地間ではu-N、時期間ではHt、Hb、T.P、P、Ca、水分、Eosin各項目でそれぞれ有意差が認められた。放牧時期別に全項目の相関係数行列について検討した。
 2. 放牧全期平均増体量に対する血液成分寄与率はA種、H種の放牧期のu-Nが最も高く、B種ではT.Pが高かった。
 実験Ⅲ.
 1. 放牧牛の糞水分の含有率は品種間に有意な差は認められなかった。放牧月間では、6月が最も多く、8月と10月が少なかった。
 2. 採食草の水分量と糞水分量の相関は、B種でr=0.89*であった。
 3. 放牧牛の糞水分含量と増体量の相関を調査したが、有意な相関は認められなかった。

10. 主要成果の具体的数字
 実験Ⅱ.
 1. 血液成分の時期による変動
項目 入牧期 放牧期 退牧期
Ht       %(x1) 32.8±3.4 33.3±3.9 36.8±3.9
Bwater    %(x3) 82.8±1.0 82.7±1.2 81.5±1.3
u-N  mg/d1(x4)  12.6±3.2 16.6±6.0 15.0±6.4
P    mg/d1(x5)  6.8±0.9 6.9±0.9 7.3±0.8
Ca   mg/d1(x6) 9.7±1.7 11.0±0.7 11.8±1.8
W.B.C     (x7) 98.8±26.8 100.9±27.4 104.0±23.7
T.P     %(x9) 6.4±0.4 6.5±0.4 6.8±0.5
 2. 血液成分と増体量の関連
  A種  Y(増体量kg)=0.250+0.017x4−0.022x1−0.098x9+0.059x6
 +0.001x7+0.006x3+0.007x5  R2=0.739  R.S.E=0.006
  B種  Y( 〃 〃 )=0.819−0.205x9−0.042x5+0.012x1−0.019x6
 +0.011x3+0.001x4−0.00008x7  R2=0.757  R.S.E=0.001
  H種  Y( 〃 〃 )=−10.532+0.025x4+0.132x3+0.013x1−0.002x7
 −0.038x5−0.040x6+0.010x9  R2=0.801  R.S.E=0.009 
 実験Ⅲ.
牧草地放牧
牛の糞水分
品種 糞水分±S.D 品種 糞水分±S.D 牧草地の草生
A種 88.34±1.44% H種 87.38±1.30% いね科47% まめ科47%
その他6%
B種 86.54±2.05 N種 88.06±1.62
  放牧地別:牧草地平均87.56%、野草地85.22%(P<0.5)

11. 今後の問題点
 1. 肉牛品種の血中u-Nと消化率、増体量と消化率の関連を明らかにしたい。
 2. 放牧初期の下痢は重度のものが多い。これら、重度の下痢は体重の減少をともなうのが普通で、経済的な損失も大きい。重度の下痢予防対策が必要である。

12. 成果の取扱い
 1. 放牧牛の健康管理の手段として血液成分の検査が行われているが、栄養判定に利用する場合、u-N、T.Pの測定が適当である。
 2. 野草地での放牧は、放牧期の下痢(軽度)を少なくするのに役立つ。下痢対策の面から野草地を利用することが考えられる。