【指導参考事項】
1. 課題の分類  新得畜試 肉牛 育種、飼養
2. 研究課題名  外国肉用牛の特性ならびに飼養試験成績
   第3報 カナダ輸入無角ヘレフォ−ド種・アバディ−ンアンガス種の特性ならびに飼養試験成績
3. 期 間  昭42〜48
4. 担 当  新得畜試・種畜部、肉牛科(細野 信夫・荘司 勇)
5. 予算区分  道単
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 外国肉用牛の本道飼養条件下における適応性調査、各飼養試験を通じて外国肉用牛の能力と経済性を把握する。

8. 試験研究方法
 ○特性調査
 (1) 外国肉用牛の繁殖飼養体系に関する調査。
 (2) 外国肉用牛(輸入、生産牛)の体系、発育に関する試験。
 (3) 外国肉用牛(   〃    )の繁殖能力に関する調査。
 (4) 外国肉用牛(   〃    )の疾病に関する調査。
 ○飼養試験
 (1) 哺乳子牛の放牧期クリ−プフィ−ディングに関する試験
 (2) 繁殖雌牛の放牧飼養に関する試験

9. 結果の概要・要約
 ○特性調査
 (1) 外国肉用雌牛は、春分娩を主体とする繁殖形態に通じ、更期牧牛交配によって受胎成績も良好であった。
 年間飼養体系は、冬期間妊娠、春分娩、春〜秋授乳、冬期離乳という循環をとり、粗飼料主体飼養に通する品種と認められた。
 (2) 外国肉用牛の体系・カナダ輸入無角ヘレフォ−ド種は体高、体長があり、体積豊かで良好な産肉体型を有した。カナダとアメリカ輸入アバディ−ンアンガス種はともに産肉体型は良好であり、両国の体型値には有意な差は認められなかった。
 カナダ輸入牛を母とする育成雌牛アメリカ輸入牛生産のものと比べて体高がやや高い傾向が認められた。
 (3) 外国肉用牛の繁殖能力、ヘレフォ−ド種の4産次めでの適期牧牛交配において受胎率90%、生産率85%程度の成績を示した。アバディ−ンアンガス種の繁殖成績はやや下廻ったが品種差とは認められない。
 (4) 外国肉用牛の疾病、タイレリヤ症発症頭数は経年的に少なくなった。年により、肺炎子牛下痢症、ピンクアイの発生を認めるが、へい死例はなく、繁殖障害、趾問腐らんの少ないことが特徴で、耐病性がたかい。
 ○飼養試験
 (1) 47〜48年度ヘレフォ−ド種春分娩(3〜4月)の母、子牛をCreep群24頭、N.Creep群24頭に処理し、放牧末期2ヵ月Creep群子牛に濃厚飼料を給与し、子牛の発育、母牛の体重推移、採食行動調査をおこなった結果、その間の子牛日ぞ増体重に差はなかった。去勢牛肥育試験の育成過程においてはCreep-Feedingを受けたものの増体がよい傾向を認めた。Creep群子牛は濃厚飼料摂取により生草採食時間の短縮が認められた。
 (2) ヘレフォ−ド種成雌牛を用いて改良草地に輪換、連続放牧し成雌牛の増体量、子牛の発育、草地利用性を調査したところ、増体日量は成雌牛では、春分娩牛0.67kg、冬分娩牛0.82kg放牧中分娩牛0.29kgであり、子牛では、春生まれ0.92kg、放牧中分娩牛は1.0kgで放牧能力の高いことが認められた。

10. 主要成果の具体的数字
 ○特性調査
 (1) 輸入雌牛の測定値
 ヘレフォ−ド種雌牛(生後60ヵ月) (cm、kg)
部位/
国別
体高 十字
部高
体長 胸囲 胸巾 胸深 腰角巾 尻長 かん巾 座骨巾 管囲 体重
アメリカ 117.4 118.2 145.0 194.7 48.0 67.2 50.6 49.5 44.1 30.3 19.0 541.8
カナダ 122.5 123.6 156.0 194.5 46.0 67.6 51.4 48.2 48.0 32.4 19.6 558.5

 アバディ−ンアンガス種(生後60ヵ月) (cm、kg)
部位/
国別
体高 十字
部高
体長 胸囲 胸巾 胸深 腰角巾 尻長 かん巾 座骨巾 管囲 体重
アメリカ 113.7 115.6 143.4 191.2 46.8 67.1 50.2 48.0 46.8 30.4 18.1 501.3
カナダ 115.2 117.8 144.2 195.2 46.9 68.2 51.0 48.2 46.7 29.6 18.0 535.2

 (2) 育成雌牛の発育成績
 ヘレフォ−ド種、アンガス種の発育成績(kg)
月令/
品種
1ヵ月 3 6 9 12 15 18 21 24
ヘレフォ−ド種 53.2 99.2 169.2 215.6 257.7 289.9 327.5 254.7 407.9
アンガス(アメリカ) 52.1 89.2 162.2 205.3 223.3 282.5 301.3 326.7 389.8
アンガス(カナダ) 49.1 87.2 155.4 193.4 231.0 262.2 293.7 323.4 344.2

 (3) 繁殖成績・離乳時体重
 無角ヘレフォ−ド種の繁殖成績
項  目 1産 2 3 4
繁殖頭数 30 30 30 30
受胎頭数 27 24 25 27
分娩事故発生頭数 1 0 2 2
生産頭数 26 25 23 26
受 胎 率 90.0% 85.0 83.3 90.0
生 産 率 86.7% 83.3 76.6 86.6
分娩問隔 12.0% 11.9 11.9 11.8

 アバディ−ンアンガス種の繁殖成績
1産 2 3 4
30 30 30 30
28 25 26 25
5 1 2 0
22 24 24 23
93.3 83.3 86.6 83.3
73.3 80.0 80.0 76.6
11.9 11.8 11.9 11.9

 離乳時体重(昭48)
品種 頭数 生時体重
(kg)
210日令
補正体重
(kg)
日増体重
(kg)





27 32.2 208.4 0.84
32 30.7 187.4 0.74


ディ





21 30.5 197.7 0.79
16 30.9 194.2 0.68
  注) 1. カナダ輸入牛(43〜44)2〜4産双生児
     2. アメリカ、カナダ輸入牛(43〜44)

 ○ 飼養試験
 (1) 放牧期Creep-Feeding試験
  子牛増体重(kg)
年次 処理 開始時 終了時 全期
増体量
210日令
補正体重
47 C 136.4 187.9 0.82 193.0
129.0 174.6 0.72 170.4
N-C 134.9 187.9 0.86 180.2
131.4 180.2 0.77 175.3
48 C 155.6 216.2 0.96 218.0
150.0 211.5 0.98 209.4
N-C 161.3 221.0 0.95 213.0
138.5 187.8 0.78 180.4

 (2) 放牧飼料試験
  増体成績(kg)
区分 放牧
処理
開始時
条件
開始時
体重
終了時
体重
増体
日量
成雄牛 輪換(A) 放牧中
分娩
515.8 533.8 0.29
〃  (B) 冬分娩牛 524.2 632.7 0.82
連続(C) 春分娩牛 489.7 578.7 0.67
子牛 輪換(A) 放牧中
出生
41.2 84.4 1.0
連続(C) 春出生 90.0 193.6 0.92

11. 今後の問題点

12. 成果の取扱い
 1) 外国内用牛は、完了草地における放牧能力がすぐれ地謡が良好で、また、耐寒性、耐病性も高いことが認められた。
 2) 放牛交配による子牛生産率がたかく春分娩の形態において受胎率90%を維持した。
 3) 大格牛が有利で、高乳時(210日令)、去勢牛200kg、雌子牛185kg以上に達し、発育良好であった。
 4) 繁殖雌牛は耐寒性がたかいので、冬期簡易な施設でも越冬可能であった。
 5) 放牧期Creep-Feedingは優良草地では離乳時までの子牛発育促進効果が認められなかった。