【指導参考事項】
1. 課題の分類  新得畜試 肉牛 飼養
2. 研究課題名  外国肉用牛の肥育法に関する試験
3. 期 間  昭44〜48
4. 担 当  新得畜試・種畜部・肉牛科(清水 良彦他5名)
5. 予算区分  道費
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 春季生産の去勢牛を用いて、濃厚飼料主体の肥育および粗飼料主体の肥育についてその産肉性を検討する。

8. 試験研究方法
 A 農耕飼料多給による方法
  試験1. 農耕飼料給与方法と単純化について
   Ⅰ型 肥育期間329日 濃飼3種類 体重の1.0、1.3、1.5%  乾草自由採食  
   Ⅱ型   〃   250日  〃 2  〃┐
                        │セルフフィダ−にて朝夕
                        │各1時間自由採食
   Ⅲ型   〃   250日  〃 1  〃┘
  試験2. 仕上げ体重と肉質について 
   Ⅳ型 肥育期間340日 仕上げ目標体重520kg┐
                               │濃飼(1種類)、乾草自由採食
                               │を体重1.5〜1.8%  〃
   Ⅴ型   〃   267日   〃       460kg┘
                               
 B 放牧をとり入れた方法
  試験3. 放牧を加味した肥育について(飼養期間468日)
   Ⅵ型 舎飼育成期(濃飼体重の0.85% 乾草自由)放牧、肥育期(濃飼1日5〜8kg 乾草自由採食)
   Ⅶ型   〃    (   〃   0.25%   〃   ) 〃    〃 (        〃         )                 
  試験4. 放牧仕上げによる肥育について(飼養期間634日)
   Ⅷ型 1冬舎飼期(濃飼1.5kg、乾草自由)放牧、2冬舎飼期(濃飼2.0kg、乾草自由)採食
   Ⅸ型    〃   ( 〃 0.6kg   〃   ) 〃    〃   ( 〃 1.0kg、 〃   )放牧


9. 結果の概要・要約
 1. Ⅰ型の肥育では、増体および枝肉歩留が悪く、肥育度合いも低い。
 2. 濃飼は従来より多給で、1種類の配合飼料給与が可能である。
 3. 濃飼多給肥育では、安定的に格付「中」以上を得るには520kg程度の体重が必要である。要した飼料は濃飼約2.1t、乾草約1.25tで、枝肉歩留り約60%、正肉歩留り約80%であった。
 4. 舎飼期の栄養水準高区(D.G0.75kg)、中区(D.G0.45kg)、低区(D.G0.25kg)の放牧中増体日量は、それぞれ0.76kg、0.94kg、0.90kgで、中・低区は高区に対して代償性発育が認められたが、中区と低区には差がなかった。
 5. 放牧を取り入れた肥育では、打和尚性発育を利用しても完全に取り戻すに至らないので、その経済性は飼料費と枝肉代金との関係でみると、舎飼育成期の栄養水準が高いⅥ型が有利である。
 6. 放牧後期の濃飼補給効果は少なく、むしろ草地条件を良好に保つ管理技術が有効である。
 7. 2冬舎飼2夏放牧の放牧仕上げでは、枝肉歩留りが低く、枝肉規格肉の組成からみても肥育度合いが十分でなく飼い直しが必要である。しかし、飼養日数が長くかかりすぎるのでその経済性は少ない。
 8. アンガス種は、ヘレフォ−ド種に比して、播体では舎飼期でまさり、放牧期で劣り肉肉質ではまさる傾向が認められた。

10. 主要成果の具体的数字
区分 月令
(月)
体重
(kg)
増体
日量
(kg)
飼料摂取量
(kg)
肥育度
指数
(%)
開始時 終了時 開始時 終了時 濃飼 乾草


1
H種 Ⅰ型 7.8 18.8 182 422 0.73 1224 1193 368
Ⅱ型 8.2 16.5 202 436 0.94 1417 459 179
Ⅲ型 7.8 1.61 195 428 0.93 1436 370 376
A種 Ⅲ型 8.3 16.6 218 446 0.91 1566 310 391


2
H種 Ⅳ型 8.8 20.1 217 524 0.91 2094 11245 442
Ⅴ型 8.2 17.0 222 460 0.89 1577 886 405


3
H種 Ⅵ型 8.1 23.7 172 513 0.73 1431 1216 434
Ⅶ型 7.1 22.7 170 484 0.67 1220 1191 413
A種 Ⅶ型 7.1 22.7 174 491 0.68 1220 1329 421


4
H種 Ⅷ型 8.1 29.2 183 568 0.61 566 2100 451
Ⅸ型 7.9 29.0 184 511 0.52 254 2530 423
A種 Ⅸ型 8.2 29.3 213 533 0.51 254 2710 428

区分 解体成績 肉質
枝肉量
(kg)
枝肉歩留(%) 正肉歩留(%) 枝肉
格付
脊脂肪
の厚み
(cm)
組成(%) 保水力
(%)
と殺前 終了時 水分 粗蛋白 粗脂肪


1
H種 Ⅰ型 208 54.2 49.3 81.0 0.8
Ⅱ型 241 59.9 55.2 79.3 1.5
Ⅲ型 235 59.2 55.0 79.8 並〜並 1.3
A種 Ⅲ型 257 62.3 57.8 80.2 並〜中 1.5


2
H種 Ⅳ型 290 59.8 55.3 77.6 中〜上 3.0 72.7 21.2 5.2 55.5
Ⅴ型 252 59.4 54.8 77.9 〜中 1.7 74.4 21.4 3.3 58.0


3
H種 Ⅵ型 286 59.8 55.8 76.0 〜上 1.4
Ⅶ型 266 59.4 54.9 76.1 中〜中 1.6
A種 Ⅶ型 269 59.6 54.8 76.3 〜上 1.6


4
H種 Ⅷ型 299 56.0 52.6 77.1 並〜並 1.1 74.6 21.0 3.9 61.0
Ⅸ型 265 55.7 51.9 78.9 1.0 75.4 20.7 3.0 63.4
A種 Ⅸ型 275 56.2 51.6 79.9 1.1 74.8 19.7 4.7 58.2

11. 今後の問題点
 (1) 肉の理化学的性状と枝肉格付および官能検査との関係を明らかにする必要がある。
 (2) 枝肉の体構成(筋肉・脂肪・骨)が、飼養方法と仕上げ体重の違いによってどのように変化するか明らかにし、それに伴う飼養技術を確立しなければ成らない。
 (3) 放牧をとり入れた方法では、秋季生産牛についても今後検討する必要がある。

12. 成果の取扱い
 濃厚飼料多給による方法では全期間舎飼いするので、素牛の生産時期は春季でなくてもよい。