【指導参考事項】
1. 課題の分類  新得・滝川畜試  牛  衛生
2. 研究課題名  方牧牛の吸血害虫に対する集団防除法確立にに関する試験
3. 期 間  昭46〜48
4. 担 当  新得畜試・研究部・衛星科(岸 晃司・工藤 卓二)
        滝川畜試・研究部・衛生科(更科 孝夫)
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 集団放牧時における飛来昆虫類によると考えられる発育の停滞や夏季乳房炎の発生、ピンクアイの伝播等アブ、サシバエ類を中心にした被害が増加している傾向にあるので、これらの昆虫についての被害解析と防除法を検討する。

8. 試験研究方法
 (1) 道内におけるアブ類の分布
 (2) アブ、サシバエ類の生態
 (3) アブ、サシバエ類による被害
 (4) ダストバッグ(D・B)とバックラバ−(B・L)の作製とその性能
 (5) アブ類に対する粉剤の殺虫効果
 (6) D・BとB・Lの効果
 (7) D・Bの野外実用化試験

9. 結果の概要・要約
 (1) 道内66ヵ所の放牧地およびその周辺より、アブ類成虫6属24種26.094個体を、9ヵ所から幼虫5属9種517個体を得た。全道各地でニッポンシロフアブかゴマフアブが優占し、道央・道南では前者が、道東・道北では後者が優占した。
 (2) アブ類の出現時期は5月から9月で、7月下旬から8月上旬に最盛を示した。ノサシバエの最盛期は、アブ類より遅れて8月上・中旬であった。
 (3) アブ類に暴露した牛は、尾の運動頻度が高まり、そしゃく(採食・反すう)時間が短縮し、心拍数(最大・最小)は常に高い水準を持続した。アブ類による吸血量は、大型アブ、中型アブ、小型アブの順で200〜300、100〜150、20〜30mgであった。
 (4) D・Bによって散布された粉剤は牛体の下腹部を除く体表全域に付着した。B・Lは顔面、側腹部、背部に付着することが観察された。
 (5) 市販殺虫剤4種(トリクロロホン、セビン、Bayer39007、GC4072)の牛体散布後、牛体長に接触した除翅アブ(ニッポンシロファブ)は、その接触時間の長短(2分と5分)にかかわらず、24〜48時間後に死亡した。
 (6) D・BとB・Lを小頭数の牛群に利用させた結果(試験4〜10)、D・Bによるノサシバエの減少率は78〜100%であったが、イエバエ類やアブ類に対しては明らかでなかった。B・Lは、ノサシバエに対して、平均56%(91と21)の減少率を示したが、イエバエ類、アブ類に対する効果は明らかでなかった。
 (7) D・Bを集団放牧牛に自由利用法で応用したところ、ノサシバエが減少した。使用した粉剤量は、1日1頭平均10g内外であった。

10. 主要成果の具体的数字
 (1)飛来および吸血アブの体重 (mg) (1972年)
種類 飛来アブ 吸血アブ 吸血アブ/
飛来アブ
例数 平均体重 (範囲) 例数 平均体重 (範囲)
ヨスジメクラアブ 34 16 (7〜20) 17 24 (21〜30) 1.50
    メクラアブ 33 28 (18〜37) 12 60 (40〜113) 2.14
    キバアブ 30 127 (69〜200)        
ホルパ−トアブ 9 53 (40〜67) 5 90 (70〜97) 1.70
     アカアブ 8 271 (174〜361) 3 582 (496〜584) 2.15
キノシタシロアブ 66 64 (10〜89) 3 113 (131〜192) 1.77
    シロフアブ 18 152 (99〜195) 5 260 (209〜340) 1.71
ニッポンシロフアブ 103 131 (80〜193) 29 246 (201〜313) 1.88
    ゴマフアブ 2 30 (27〜30)        

 (2) アブ類暴露牛の経済的生理変化
  図9. 暴露牛の経済的生理変化(1972年)


 (3) D・BとB・Lの効果
器具 試験 ノサシバエ イエバエ類 アブ類





4 93 24 88
5 99 100 42
6 100 26 100
7 78 58 2
8 78 -25 -39
9 100 54 1
10 100 4 1





4 91 19 -19
5 21 -11 85

11. 今後の問題点
 (1) 生態学的防除法とその基礎資料
 (2) 避陰舎の衛生昆虫類に対する予防効果
 (3) アブ、サシバエ類とタイレリア病、夏季乳房炎の関連
 (4) D・BとB・Lの自由利用法における適用条件の検討

12. 成果の取扱い
 (1) 地域の優占種を認識し、7〜8月の最盛期間中に、地形・環境に合わせて防除対策を講することが必要となる。
 (2) D・B利用による防除法は可能な限り強制利用にすること。 D・Bの自由利用法を採用する場合には、D・B設置場所以外に、牛の休息場所がないこと。
 (3) D・Bに屋根を設けるか、カバ−付きD・Bを使用すること。
 (4) 殺虫剤は極力低毒性のものを使用すること。