【普及奨励事項】
1. 課題の分類  草・飼:A-5(1)
            畑 作: X-a  101-1
2. 研究課題名  トウモロコシ「北交22号」に関する試験
3. 育成機関名およびその所在地  農林省北海道農業試験場(札幌市豊平区羊ヶ丘1番地)

4. 来 歴
 昭和39年に「N85×N21」を母とし、「T23×T24」を父とした複交配によって作出されたフリント種一代雑種である。最初、子実用として育成され、検定試験が行われてきたが、昭和45年度以降もっぱらサイレ−ジ用として試験機関および現地試験に供試された。また昭和42年度以降岩手県農試においてススモン病抵抗特性検定試験に供試された。
 自殖系統の来歴は次の通りである。
   N85:道内在来フリント品種「岩内在来A」より育成
   N21:道内在来フリント品種「坂下」より育成
   T23およびT24:イタリアより導入されたと思われるフリント品種「GranoturcoMarano」を奥羽試験地より分譲を受けて育成

5. 特性の概要
(1) 形態的特性
  稈径やや細く、分けつ数多く、またとくに1株あたり有効雌穂数が多い。
(2) 生態的特性
  熟性は「交4号」と「交8号」との中間である。初期生育旺盛で、登熟も良好であり、生草収量に比べて乾物およびTDN収量が高い。とくに比較的寒冷地域、またはその他の地域においても冷害年次には、外国輸入品種などに比べて生育・登熟の進度が良好で、栄養収量の安定性が高い。耐倒状性はやや強く、また耐病性は中位である。
(3) 採種栽培
  採種にあたっての雌雄畦比は単交配2:1、複交配3:1である。単交配「N85×N21」の採種の場合、両系統の出穂期に差異があるので、「N85」の発芽期ごろに「N21」を晩播きする。複交配の採種の場合は同時播きでよい。また、あまりに高濃度の除草剤の使用は「T23」、「T24」および「T23×T24」の植物体に被害を及ぼすことがあるので注意を要する。


6. 奨励態度
 十勝山麓・沿海地帯、根釧地方で気象条件の比較的良好な地域、ならびに網走地方の一部における中生サイレ−ジ用品種として利用されうる。普及対象地域内でもより寒冷な地域においても考えられる。また網走地方などにおいてはその栄養収量の安定性を生かして、より晩生の「交8号」との配合利用も考えられる。

7. 栽培上の注意
 耐倒状性は完ぺきとはいえないので、あまり極端な密植は避け、大体450〜600本/a程度の栽植密度が適当と思われる。またススモン病およびゴマハガレ病抵抗性は中位であるので、その常習的な多発地帯での栽培は避け、また肥培管理をよくして生態的防除をはかるなどの配慮が望ましい。

8. 新品種名候補
 1. タイセツ  2. タクホク  3. キタマサリ  3. ホクシン

9. 試験成績
 道内各試験地における収量調査(年次平約)
試験場所 試験
年次
(昭)
生総重 TDN
交4号
対比
(%)
交8号
対比
(%)
W573
対比
(%)
北交22号
のaあたり
収量
(kg)
交4号
対比
(%)
交8号
対比
(%)
W573
対比
(%)
北交22号
のaあたり
収量
(kg)
北海道農試 46〜48 135 79 82 403 118 93 94 77
十勝農試 116 79 91 440 108 96 111 73
北見農試 106 75 97 614 106 84 97 91
上川農試 110 72 76 423 104 77 77 85
中央農試 46〜47   71 74 372   97   120
原々種農場 46〜48 151 74 82 385 158 86 89 73
根釧農試 47〜48 122 88 149 620 126 119 183 94






鹿追 46〜48 145 89 105 592 144 134 141 114
音更 120 91 97 687 118 120 114 107
更別 110 87 95 630 96 116 111 107
足寄 131 79 86 473 121 104 121 99
浦幌 121 85 88 530        
忠類 48 118   92 644 98   112 94
美幌 46〜48 105 81 88 699 98 90 91 137
端野 114 85 99 691        
遠軽 48 94 70 75 513 102 113 96 95
朝日 46〜48 110 75 79 498        
白糠 47〜48 94 83 99 688 100 110 116 105
中標津 47 114 90 111 567 100 112 146 67
鶴居 48 101 86 96 883 115 114 117 134
弟子屈 48 114 84 91 624 119 107 131 102
  注) TDN収量の算出は次の換算式(新得畜試方式)によった。
     TDN=無水茎葉重×0.582+無水雌穂重×0.850