【指導参考事項】
道東・北部地域酪農における資源利用の経済性
                     昭和47〜48年
        北農試 農業経営部経営第1研究室

・ 目 的
 北海道地域の酪農経営は昭30年代後半以降、顕著な経営規模拡大をとげたが、なお、この定着化には再検討を要する課題が多い。そこで、この課題では、経営資源配分の適正化をはかる観点から、道東・北部地域の酪農経営における資源利用の経済性を検討し、経営改善のあり方について考察する。

・ 試験方法
 道東・北部地域(根室、宗谷、網走支庁管内)の酪農経営(昭43〜45年度、農林省牛乳生産費調整対象農家62戸)を対象に、牛乳生産関数を計測し、(1)主要利用資源の限界生産力と機会費用の比較、(2)生産力指標と経営要因指標との相関分析により、資源利用の経済性とその配分の適正化方向を検討した。

・ 試験成果の概要
 (1) 5資源要因による牛乳生産関数の計測結果、各類型とも購入飼料支出、飼育労働、固定資本の生産弾性値が高く、自給飼料支出、飼料作土地の牛乳生産への寄与率は低位である。また、計測された生産関数は規模に関して収益逓減的関数であり、規模の経済性を確認できない。
 (2) 利用資源の限界生産力は類型間格差が顕著であり、経済方式類型間では土地、労働の生産力格差が大きく、草地酪農の地域間では根室は土地、資本の限界生産力が高いが天北ではそれが低位である。
 (3) 資源の平均価値生産物と機会費用との代替比率は購入飼料支出、固定資本、飼育労働において大きく、この経済性が高い。しかし飼料作土地の利用経済性は低い。
 (4) 経営間の生産効率にも格差が大きく、この差違は労働・土地の平均生産力水準差に関連が深い。
 (5) 以上のことから、経営資源利用の適正化の観点では、土地面積拡大よりも資本・労働への資源配分を増加し経営集約化を進めることに合理性がある。また、生産効率の低位な農家群では、とくに労働・土地生産力の向上が経営改善の要因となる。

10. 主要成果の具体的デ−タ
 第1表 牛乳生産における主要資源の生産弾性値
項目/
地域・類型
標本戸数
(d・f)
生産弾性値 生産弾性値も和
φ
Σ  βk
k=1
決定係数
  −2
  R
β1
購入飼料
β2
自給飼料
β3
飼育労働
β4
飼料作土地
β5
固定資本
1000円 1000円 10時間 ha 1000円



根室 19
(30)
**
0.2978
(.1116)
-0.0273
(.1165)
0.1247
(.1412)
0.0406
(.1298)
*
0.1529
(.0972)
0.5889 0.9303
天北 19
(30)
**
0.1617
(.0687)
-0.1042
(.1017)
**
0.2355
(.0948)
0.0045
(.0745)
*
0.0535
(.0423)
0.3510 0.9828
畑地 酪農
(網走)
24
(40)
***
0.2380
(.0765)
*
-0.1227
(.0837)
***
0.4325
(.1310)
0.1010
(.0890)
*
0.1608
(.0929)
0.8097 0.9465
  注) ( )内は標準誤差

 第2表 利用資源の平均限界価値生産物(上段:円)と機会費用との比較
資源/
地域・類型
購入飼料支出 飼育労働 飼料作土地 固定資本



根室 1.805
(1.648)
1.058
(0.635)
5.993
(0.855)
86
(1.438)
天北 1.001
(0.915)
1.648
(0.988)
897
(0.095)
37
(0.610)
畑地 酪農
(網走)
1.237
(1.129)
3.668
(2.198)
30.480
(1.112)
110
(1.843)
  注) ( )内は機会費用との比較(倍)

 第3表 経営要因指標と各資源平均生産力との回帰分析結果
項目/
地域・類型
d・f 各資源平均生産力の偏回帰(偏決定)係数 決定係数
 −2
  R
購入飼料 自給飼料 飼育労働 飼料作土地 固定資本



根室 13 ***
0.4796
(0.4046)
*
0.2904
(0.1597)
***
0.7942
(0.5641)
-0.2305
(0.1035)
0.1347
(0.0221)
0.4615
天北 13 -0.0263
(0.0043)
**
0.3529
(0.2801)
***
1.3880
(0.8785)
**
0.2784
(0.2799)
0.0010
(0.0000)
0.9407
畑地 酪農
(網走)
18 0.0573
(0.0512)
-0.0981
(0.0802)
***
0.5162
(0.8510)
**
0.2064
(0.2375)
***
0.2074
(0.4325)
0.8642
  注) ( )内は偏決定係数

・ 普及指導上の注意事項