【指導参考事項】
1. 課題の分類  新得・滝川畜試 経営方法 畜産
2. 研究課題名  大型畜産経営の経営方式に関する調査研究
                 −大型酪農の実態分析−
3. 期 間  昭和46〜48(46〜50)
4. 担 当  新得畜試 経営科(斉藤 恵二・山川 政明・大沼 昭)
        滝川畜試 経営科(渡辺 義雄・黒沢 不二男・川崎 勉)
               特別研究員(米内山 昭和)
5. 予算区分  道単
6. 協力分担  専門技術員(経営)、関係農業改良普及所(43ヶ所)

7. 目 的
 家族性農業に限定し、今日的段階の大型酪農経営の実態分析により、その経営経済的性格を明らかにし、その発展方向を検討しようとする。

8. 試験研究方法
 (1) 調査対象: 昭和45年度の指定生乳生産者団体への出荷乳量130トン以上の酪農経営
 (2) 調査方法: 配票調査(関係酪農改良普及所の協力による)配票320戸 回収228戸(回収率71.3%)
 (3) 分析方法: <分類>
 地域別(道南・道央・網走一般・十勝・根釧・天北・西紋の6地域)
 規模別(〜29、30〜39、40〜49、50〜59、60〜69、70〜)
 <視点>
 組織構造・経営効率(所得要因・労働効率・資本効率)
 発展方向

9. 結果の概要・要約
 (1) 調査対象の地域別・規模別分布
    <地域別>
           道南6戸(43.7頭)、道央29戸(48.3頭)、網走一般26戸(40.1頭)
           十勝27戸(40.2頭)、根釧117戸(47.0頭)、天北・西紋23戸(49.6頭)
    <規模別>
           29頭以下9戸、30〜39頭61戸、40〜49頭90戸、50〜59頭44戸、60〜69頭14戸
           70頭以上10戸
 (2) 経営組織
  ① 労働力、3.5人(家族労働力2.9人 82.67%)
  ② 土地、耕地38.5ha、草地2.3ha、計40.8ha
  ③ 乳牛、経産牛35.5頭、育成牛20.4頭、成換45.7頭
  ④ 固定資本額、土地2025万円、建物505万円、大農具336万円、乳牛909万円、計3775万円
 (3) 技術構造
  ① 飼料の生産力水準: 乾草1番2.8トン、牧草サイレ−ジ1番2.7トン、デント6トン、根菜5トン、
                   平均刈取回数  乾草2.3回、サイレ−ジ1.6回
  ② 生産技術体系: 乾草〜モア−体系が大半
               牧草サイレ−ジ〜ハ−ベスタ−体系が70%
               デントコ−ン〜ハ−ベスタ−体系が60%
  ③ 粗飼料給与のD・M構成
     十勝−乾草1887kg、牧草サイレ−ジ505kg、放牧1271kg、デント625kg、その他310kg、計4600kg
     根釧−乾草1059kg、牧草サイレ−ジ1499kg、放牧1840kg、デント5kg、その他82kg、計4561kg
  ④ 濃厚飼料給与技術<日乳量区分別>
     10kg以下−1.9kg、11〜20kg−3.2kg、21〜30kg−4.4kg、31kg以上−5.9kg
  ⑤ 繁殖技術:初産、月令27.5、分娩間隔13.3月、種付回数2.1回、廃用年令11.7才
  ⑥ 産乳性
     平均出荷乳量153.4トン、経産牛年間乳量4.46トン、規模の増加で低下傾向を示す
  ⑦ 乳牛管理(成換1頭当り年間時間)
     全平均120.8時間、根釧106.3時間、十勝134.6時間、30〜39頭133.6時間、50〜59頭115.9時間、70頭以上  101.7時間  
 (4) 経営収支
  ① 粗収入  乳代713万円、その他227万円、計940万円(乳代率75.8%)
  ② 経営費  飼料費193万円、その他384万円、計577万円
  ③ 所得    363万円
  (所得率38.6%) 成換1頭当り7.9万円、家族労働力1人当り127.4万円
            ha当り    89.0万円、固定資本100万円当り207万円             
 (5) 経営効率
  ① 牛乳生産原価
     27.2円(道央32.9円 規模別に差なし
  ② 労働効率
     総労働1人当り純生産111万円
     家族労働1人当り労働報酬115万円(悲嘆労働対象の増加につれて増加する)
  ③ 資本効率
     資本収益額224万円 (60頭以上で300万円前後となる)
     資本収益率12.7% (土地含めて7.9%)60頭層まで低下しない
     負債残高805万円 (成換1頭当り17.6万円)
 (6) 発展方向
  ① 総体的にみれば大型酪農の現段階は再生産性、資本蓄積機能をもっていると認められる。
  ② しかし、個別毎にみれば、分散が大きく、改善を要する農家が多い。
  ③ 農家の志向調査では、なおかなり土地・乳牛規模の拡大を意図している。
  ④ 所得上位10%農家の経営構造と対比して、改善の示唆とした。
  ⑤ またほぼ同一規模にある諸外国の酪農経営との比較を行い発展の可能性を検討した。
  ⑥ 以上のことから、今日段階の本道大型酪農は、基調としては発展の可能性を有すると判断されるが、内部充実(ことに生産性向上諸技術の改善)に
    充分配慮することが必要といえる。
  ⑦ 現生産組織構造を前提とすれば、当面の規模拡大目標は、成換60頭程度と判断される。

10. 主要成果の具体的数字
 表1. 経営収支および牛乳生産原価                   (単位:万円)
区別 粗収入 経営費 所得 成換頭
当り所得
ha当り所得 家族労働力
1人当り所得
牛乳1kg当り
生産原価
(円)


道南 875 596 279 6.4 58.4 89.4 28.3
道央 1149 831 318 6.6 94.9 120.9 32.9
網走一般 883 531 352 8.8 126.2 126.6 28.7
十勝 890 486 404 10.0 111.3 140.3 25.3
根釧 910 536 374 8.0 84.2 131.7 25.8
天北・西紋 975 632 343 6.9 69.7 108.9 27.0


〜29 821 453 368 13.2 189.7 151.4 25.5
30〜39 806 484 322 9.1 108.1 115.8 29.0
40〜49 897 531 366 8.3 94.1 130.2 26.0
50〜59 1036 660 376 7.0 82.6 118.6 28.0
60〜69 1212 790 422 6.5 57.6 179.6 26.2
70〜 1467 997 470 5.9 58.8 144.2 26.5
総体 940 577 363 7.9 89.0 127.4 27.2

 表2. 負担労働対象規模別労働効率 (全道)
類  型 経営規模 粗収入
(万円)
家族労働報酬
(万円)
家族労働1人
当り労働報酬
(万円)
土地
(ha)
成換
(頭)
土地5ha以下10頭以下 15.8 36.0 853 356 91
土地6〜10ha 11〜15頭 28.3 41.7 382 342 105
土地11〜15ha 16〜20頭 38.0 48.9 374 345 132
土地16〜20ha 21〜25頭 42.3 49.9 362 352 164
土地21ha以上26頭以上 69.2 63.1 425 345 208
全道平均 40.8 45.7 363 328 115

 表3. 資本効率と負債
区分 利益
(万円)
総資本Ⅰ
(万円)
総資本Ⅱ
(万円)
利益率Ⅰ
(%)
利益率Ⅱ
(%)
負債残高
(万円)
追加負債限界
(万円)


道南 150 1831 49.3 12.1 4.1 795 351
道央 179 2479 10359 8.5 3.0 1019 286
網走一般 214 1689 2839 13.2 8.0 572 402
十勝 269 1647 2624 17.4 10.8 566 678
根釧 238 1945 2849 13.4 9.0 795 467
天北・西紋 184 2110 3317 8.8 5.9 1091   ▲129


〜29 241 1387 4174 18.8 9.1 279 866
30〜39 185 1559 3237 13.1 8.0 544 396
40〜49 230 1907 3784 13.3 8.3 729 362
50〜59 223 2319 4170 10.5 6.7 1145 183
60〜69 308 2445 4636 13.1 8.4 1214 301
70〜 281 3189 5445 9.2 6.8 1495 530
総体 224 1960 3849 12.7 7.9 805 412

11. 今後の問題点
 ① 近年の飼料を中心とした諸物価高騰と収益性との関連
 ② 労働投下様式の体系的把握
 ③ 経営部門(搾乳・育成・飼料生産)の合理適結合性

12. 次年度の計画(成果の取扱い)
 経営方式作成のための精密調査を実施する。(清水町・本別町・上士幌町3戸)