【指導参考事項】
1. 課題の分類  IX−C  951−27
2. 研究課題名  単胚種子利用によるてん菜紙筒移植栽培の無間引・苗無選別に関する試験(追補)
3. 期 間  昭和49〜48年
4. 担 当  北海道農試てん菜部栽培第一研究室
        道立北見農試特用作物科
5. 予算区分  経常
6. 協力分担

7. 目 的
 てん菜栽培の省力化のため単胚種子を利用した無間引・苗無選別紙筒移植栽培の実用の可能性を検討する。特に諸種の施肥栽培条件における2本立株および欠株の影響を調査する。

8. 試験研究方法
 無間引栽培に関する基礎として2本立株と施肥水準との関係、苗無選別栽培の基礎として欠株と施肥水準、株立本数、畦幅等について調査し、また、実際的な無間引・苗無選別栽培試験など合計10の試験を行なった。

9. 結果の概要・要約
 1. 無間引移植栽培で問題となる2本立株は従来の結果と同様普通の栽培条件では20%程度まで差支えないことを確認した。しかし多肥条件では地上部の繁茂の関係から2本立株は収量を低下させる傾向のあることを知った。
 2. 苗無選別移植栽培で生ずる欠株の収量・糖分に対する影響は施肥条件であまり変化がなく今までの結果と同様20%以内ならば許容出来ることを確めた。
 3. 欠株による株立本数低下を防ぐ目的で畦幅の効果を検討した結果、収量・糖分に対する影響は栽植本数よりも畦幅自体で大きな効果をもち、狭い畦幅では欠株によって多少本数が少なくても、欠株がなくて本数の多い広畦のものよりも収量・糖分がまさった。
 4. 一定の畦幅で株間の変化によって栽植本数を変えた場合、欠株の影響は根重ではそれほど大きくないが、根中糖分で著しいので無選別移植栽培では広い株間は避けるべきである。
 5. 無間引と苗無選別とを組み合わせた実際的な省力栽培では、播種粒数を適当に選び適正な育苗および栽培管理を行う限り従来の間引・選別の場合とほとんど変わらない収量・糖分が得られる。しかし現在の実際栽培のように多肥、疎植、畦幅拡大の条件下では2本立株や欠株の害があらわれやすいので、栽培の正常化が先決問題であろう。

10. 主要成果の具体的数字
 施肥水準と2本立株割合の関係 (48年てん菜部)
施 肥 2本立株割合(%) (対標準肥指数) (対0%指数)
0 20 40
標準肥 (糖量kg/10a) 100 100 100 100 106 103
765 812 798
1.5倍肥 791 789 779 103 97 99 100 100 98
2倍肥 787 771 762 103 95 97 100 98 97

 畦幅と欠株割合との関係 (48年てん菜部)
畦 幅
(cm)
欠株割合(%) (対50cm畦指数) (対0%欠株指数)
0 10 20
50 (糖量kg/10a) 100 100 100 100 100 96
729 728 703
60 686 673 684 94 92 97 100 98 100
70 624 646 612 86 89 87 100 104 98

 栽植本数(畦幅一定)と欠株の影響 (48年北糖)
処 理 根 重 根中/
糖分
糖 量
7.000本
 欠株0%
    10
    20
    30 
(5.44)
100
(15.64)
100
(851)
100
96 99 95
100 98 98
99 97 96
5.500本
    0
    10
    20
    30
105 97 102
101 96 97
107 96 102
100 96 96

 無間引・前無選別移植栽培の結果 (48年北見農試)
処理区別 根 重 根中/
糖分
糖 量
間 引・選 別 (4.39)
100
(16.00)
100
(702)
100
無間引・選 別 103 100 103
無間引・無選別 100 101 101

11. 今後の問題点
 無間引・苗無選別移植栽培は必然的に生ずる2本立株によって時に根重・根中糖分の低下を招くこともあるので、その原因を充分解明して安定性を確立する必要がある。特に多肥、疎植、広い畦幅で危険性があると思われるので、これらの点についての栽培法の正常化が前提条件になろう。

12. 成果の取扱い
 てん菜栽培の省力化のためこの無間引・無選別栽培法は利用される方向にあるので安定した効果を得るための前提条件を確立するようにこの試験結果を利用する。