【指導参考事項】
3月どり (加温長期どり)イチゴ栽培試験
              イチゴ 栽培一般
              北海道・道南農試
・ 期 間  昭和46年〜48年
・ 予算区分  道単
1. 担 当  園芸科  今野寛・高橋総夫

2. 目 的
 大型固定ハウスの周年利用をはかる一環として、冬期間の加温による作型設定のため加温開始時期の適期と品種の関連および適正栽培密度を検討する。

3. 試験方法
 試験Ⅰ  加温開始時期設定試験 (46年度は奇形果多発により収量調査はできなかった)
   加温時期による品種反応、GA効果と苗大における生産性
 試験Ⅱ  栽植密度試験
  低温期における高畦など栽植方法と密度との関連 (畦4条:高畦2条:高畦1条×粗:密)加温は最低気温5℃を維持する程度とし温風暖房機のみを利用した。地温はポリマルチにより昇温をはかった。花粉媒助は46年=無処理、47、48年は蜜蜂を導入した。
  定植期は固定ハウス利用のため前作物が終了次第となり遅くなる。

4. 結果および考察
 試験Ⅰ
  加温時期による収量は休眠が完全に覚醒していないと思われる半矮化的生育を示す区(47年1月区と48年12月区)が長期間、大果が得られ多収となった。半矮化株は花房が1度に出現せず株負担に応じて順次出現するので果肥大における競合が少なく大果が得られると考えられた。休眠が完全に覚醒していると思われる区(47年2月区と48年1月〜2月区)は葉柄が徒長し過繁茂的生育となり、又加温開始までの無加温状態での低温影響を受け、花房数が少なくなるなど退化現象もあり少収となった。低温遭遇量不足で矮化的生育を示した区(47年12月)は果肥大における株負担が大きく、上物果数、1果重など劣り少収であった。このことから長期×大果=多収を得るには半矮化的生育をさせることが良く、そのためには低温遭遇積算時間(5℃以下)で600時間を指標として加温を開始すべきと考えられた。
 品種は宝交早生が低温充足が早く、又大果連続収穫が可能であり、この作型にもっとも適していると考えられた。
 GA処理は休眠が覚醒していない区においては上物果数、1果重など増加し多収効果がみられたが覚醒そている区では生育が過繁茂となり減収するなど逆効果であった。
  苗大については茎径の太い、充実している大苗が好成績である。
 試験Ⅱ
  高畦は成畦、定植労力がやや多くなるが、①高地温経過による生育促進(開花、熟期、着果数)がみられ早期、全期収量が多い。②花房が畦肩より垂下するので果に日光が良くあたり、又通気性も良く病果の発生がみられない。③収穫においては花房が並列状態のため熱果が一目瞭然であり、作業が早く且つ取残しがないなど有利な面が多い。高畦間では収量が僅差なので、成畦労力、灌水施設面から2条植が得策と考えられた。
 密植による増収効果は、休眠が完全に覚醒していない時点の加温の場合は生育が半矮化状態であり、その後も果肥大による形態的矮化で徒長がないので、効果が大きい。覚醒後加温の場合は密植により徒長、過繁茂となるので増収効果は期待できず、むしろ苗数確保、定植労力を多く要する欠点が強くなり不利である。

5. 主要な試験デ−タ
 第1図 5℃以下の低温積算時間


 第2図 葉柄長


 第3図 収量(上物=7g以上、 下物=〜4g)


 第4図 栽植密度と収量

6. 今後の問題点
 ① 施肥法および量の検討(含追肥)  ② 鉢育苗の検討

7. 成果の取扱い (普及指導上の注意事項)
 ① 長期どり作型のため、特にハダニの育苗中よりの徹底防除を実施する。
 ② 定植ほ場が過湿であったり、深苗えは芳枯病が発生しやすいので注意する。
 ③ 寒冷期の定植になるので苗の根土はなるべくつけること。
 ④ 苗床期間が長いので、ランナ−除去、除草など周到な管理をし株の充実をはかること。