1.課題の分類 果樹 2.研究課題名 ジベレリンによるブドウ“バッファロー”の種なし化と熟期促進試験 3.試 験 期 間 昭和47〜49年 4.担 当 北海道中央農業試験場園芸部 渡辺久昭、松井文雄、峰岸恒弥 5.予 算 区 分 道単 6.協 力 分 担 なし |
7.目 的
ジベリンの利用によりブドウ“バッファロー”の種なし化および熟期促進を図る。
8.試験研究方法
試験1. 第2回処理の濃度について(昭和48年)
処理濃度 第1回100PPm、第2回100PPm、50PPm
処理月日 場内6月25日と7月16日、余市6月22日と7月42日
仁木6月20日と7月9日
試験2. 第1回処理の時期について(昭和49年)
処理濃度 第1回、第2回共 100PPm
処理月日 6月16日、18日、20日、22日(無処理樹満開日7月6日)
試験場所 余 市
9.結果の要約
① ジベレリン処理によブドウ“バッファロー”を種なしとし、また熟期を促進することができた。熟期促進の程度は、年にもよるが約3週間であった。
② 現地(余市、仁木)の結果をみると第2回処理の濃度が100PPmで、50PPmより着粒数分よび一粒重で優り、そのため果房重が20〜30%大となった。しかし場内の場合は10OPPm、50PPm両者間に差は認められなかった。これは供試樹が不揃いのためであると思われる(試験1、表1)。
③ 第1回処理の時期について試験2の結果をみると最も早い6月46日(満開20日前)で有核果の混入が全くみられなかったが、満開18日〜14日前の他区では多少有核果が混入した。しかし実用上支障と左る程の率ではなかった。
他の試験結果からも処理時期の早い方が良いことが認められているので、実用上の処理適期は無処理樹の満開20〜14日前にあると考えられる。
④ 樹勢不良樹では、有核果が混入し易く、果房の大きさも劣るなど好結果は得られなかった(データ省略)。
10.主要成果の具体的数字
表1 濃度試験果房調査結果 (1973)
試験 場所 |
区 | 果房長 | 果房重 | 全粒数 | 一粒重 | 無核化率 | 晩腐病果率 | 裂果率 | 糖度 | 酸度 |
無処理 | (cm) 15.4 |
(g) 207 |
70 | (g) 2.9 |
(%) − |
(g) 0.2 |
(%) 0.1 |
(%) 17.4 |
(g/100mL) 0.93 |
|
中央農試 (長沼) |
100-50 | 14.4 | 155 | 43 | 3.3 | 64.3 | 0.1 | 0.0 | 16.7 | 0.86 |
100-100 | 14.2 | 141 | 38 | 3.3 | 70.4 | 0.4 | 0.0 | 16.6 | 0.93 | |
現地 1 (余市) |
100-50 | 19.9 | 202 | 71 | 2.8 | 100.0 | 0.0 | 0.1 | 16.0 | 0.66 |
100-100 | 19.8 | 241 | 78 | 3.1 | 99.7 | 0.4 | 0.5 | 16.0 | 0.58 | |
現地 2 (仁木) |
100-50 | 23.1 | 312 | 113 | 2.8 | 99.9 | 0.9 | 1.1 | 16.2 | 0.53 |
100-100 | 24.0 | 418 | 137 | 3.0 | 99.9 | 1.7 | 3.0 | 15.3 | 0.51 |
表2 処理時期試験果房調査結果 (余市、1974)
区 | 果房長 (cm) |
果房重 (g) |
着粒数 | 一粒重 (g) |
無核果 (%) |
糖度 (%) |
酸度 (g/100mL) |
無処理 | 18.1 | 291 | 85 | 3.3 | − | 18.9 | 0.77 |
6.16 | 21.1 | 445 | 101 | 4.3 | 100 | 14.5 | 0.88 |
6.18 | 19.5 | 336 | 81 | 3.7 | 95.4 | 14.6 | 0.98 |
6.20 | 18.9 | 323 | 79 | 3.8 | 97.2 | 14.5 | 0.96 |
6.22 | 21.2 | 320 | 97 | 3.1 | 99.8 | 14.1 | 1.07 |
注1) 各区3樹の平均、採収日は処理区8月29日、無処理区9月24日。
注2) ジベレリン処理区の糖度が低いのは、着果過多が主原因と思われる。また採収日もやや早過ぎたようである。
表3 供試樹の生育生態(余市、1974)
区 | 開花期 | 満開期 | 着色期 |
無処理 | 7.2 | 7.6 | 8.22 |
6.16 | 6.24 | 6.29 | 8.6 |
6.18 | 6.28 | 6.29 | 8.7 |
6.20 | 6.29 | 6.30 | 8.9 |
6.22 | 6.30 | 6.30 | 8.10 |
11.今後の問題点
①樹勢の良い丈夫な樹を作る管理法。
②処理適期巾の拡大と処理効果の安定
12.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
①ジベレリン処理は健全な樹のみに実施すること。また芽かきなどにより結果枝の生育を揃えること。
②第1回処理は無処理樹の満開予定日の20〜14日前に100ppm、第2回処理は満開約10日後に100ppm液に花(果)房を浸漬処理する。
③第1回処理は花穂を薬液中で2-3度振るようにする。また処理後8時間以内に20mm以上の降雨があった場合は再処理を行う。
④着果量は原則として1結果枝1果房とする。成らせすぎは果房の品質を下げ、樹体を弱めるので厳に慎しむこと。
⑤熟期促進は3週間程度と考えられるが糖度が充分のってから収穫する。