【指導参考事項】
土壌及び施肥条件の異なる産米の食味特性について
                       (昭和45年〜49年)
                     上川農試土壌肥料科

目 的
 道産米の食味改善のための栽培法確立の一環として、6要素による化学的食味評価法を駆使し、土壌及び施肥条件の違いが産米の食味特性に及ぼす影響について検討せんとする。

試験方法
○供試材料
 1) 土壌条件と食味特性
  土壌型  :泥炭地、強グライ、黄褐色、礫質各土壌
  供試品種 :しおかり、そらち、イシカリ、ふくゆき
 2) 施肥条件と食味特性
  供試品種 :しおかり、そらち
  基肥N系列:0、0.8、1.6kg/a
  追肥N系列:幼形期、止葉期、出穂期、穂揃期夫々N0.2kg/a追肥
○調査項目
 炊飯特性、アミログラム特性値、飯米の粘弾性、N含量、澱粉含量、粘着度、官能検査、搗精度

試験成果の概要
 1) 同一年次において、土壌及び施肥条件による米の6要素の変動は、特に米飯の粘性とアミログラム特性値のブレ−クダウンの変動が極めて大きく年次間では高温年よりも低温年の変動が大きい。更に、これら3要素の官能検査のよる食味評価の間に正の相関が認められた。
 2) 土壌の種類では、湿田タイプ土壌郡よりも乾田タイプ土壌郡の産米の方が明らかに高い食味特性を示す。
 3) 「しおかり」、「そらち」両品種とも、基肥処理の違いによって変動が大きいのはブレ−クダウンであり、追肥処理で米飯の弾性値変動が比較的大きい。又、基肥Nの増加に伴ってアミログラム特性値は低下し、又、N追肥時期の遅いもの程各食味特性値は何れも低下する傾向を示す。
 4) 玄米及び精白米の蛋白含量はN増施及びN追肥によって増加し、N追肥時期の遅いもの程高い。一方、米の澱粉含量は蛋白含量と全く逆の関係を示し、玄米の澱粉含量と蛋白質含量との間に負の相関が認められる。特に出穂期追肥のものは他の追肥処理に比して蛋白含量がもっとも高く、澱粉含量が低い。
 5) 米粒内の蛋白質は澱粉と異なり、内向的に蓄積してゆくが、N増施並びにN追肥によって増加したNは主として胚乳部の外側に集積し、形態的にアルカリ可溶の蛋白質として増加している。
 6) 同一品種おいては、玄米及び精白米の蛋白含量と飯米の粘性、弾性並びに6要素による食味評価の間に夫々高い負の相関が認められ、米の蛋白含量が増加すると飯米の粘性及び弾性を低下させ、食味が悪くなる傾向を示す。

主要成果の具体的デ−タ−
 1. 米の6要素とその変異係数
要因/
測定項目
土壌(8) 基肥(16) 追肥(16) 官能検査による
食味との相関
平均値 C.V. 平均値 C.V. 平均値 C.V.
加熱吸水率 2.48 2.2 2.43 3.2 2.43 1.6     
膨張容積 (ml) 3.31 2.0 34.1 1.5 33.1 2.0
糊化温度 (℃) 88.4 0.7 87.0 0.8 87.6 0.7
ブレ−クダウン 87 14.9 88 10.0 83 12.7 0.686**
米飯の粘性(x106poise) 4.12 9.8 7.19 16.4 4.92 13.3    0.506
   〃   (x106dyne/cm2) 11.32 11.32 11.05 22.6 11.42 15.9 0.740**

 2. 土壌の種類と米の食味特性(しおかり)
土壌 玄米
千粒重
(g)
ブレ−ク
ダウン
米飯の
粘性
米飯の
弾性
玄米の
蛋白含量
(%)
泥炭質 17.8 73 3.60 7.53 8.44
グライ 18.0 68 3.78 7.26 8.28
黄褐色 18.9 90 4.80 11.25 7.96
礫質 17.5 89 3.99 11.53 8.00

 3. N施肥と米の食味特性値、蛋白質及び澱粉含量(しおかり)
区 分 ブレ−クダウン 米飯の
弾性
玄米
蛋白含量
(%)
澱粉含量
(%)


N−0 95 10.8 7.79 84.9
〃−0.8 81 9.9 8.15 76.2
〃−1.6 77 8.8 9.22 72.8
N

幼形期 95 10.7 8.50 80.0
止葉期 88 10.0 8.62 81.6
出穂期 79 9.0 8.92 78.5
穂揃期 90 8.2 9.04 81.8

 4. N追肥と米の部位別N含量(そらち)

            N追肥時期

 5. 糖層BのN含量と飯米粘着度

         糖層BのN含量率(%)

 6. 玄米の蛋白含量と食味の関係(そらち)

      6要素による食味スコア

普及指導上の注意事項
 1) 土壌透水性の良否及び生育後半における土壌N供給力の大小が産米の食味に対して密接な関係をもつので、食味向上のために土壌の排水性を良好にする必要がある。
 2) Nの後期追肥には、登熟歩合の向上、千粒重の増加などのプラス面と蛋白含量の増大、食味の低下などのマイナス面があり、特に出穂期追肥ではその傾向が大きいので、N追肥にあたっては土壌の特性及び登熟期間中の天候を考慮する事が必要である。