【指導参考事項】
1. 課題の分類  病害 畑作
2. 研究課題名  てん菜の苗立枯病に対するヒドロキシイソキサゾ−ル+PCNB粉剤の覆土処理による効果試験
3. 期 間  (昭和48年〜49年)
4. 担 当  北海道農試てん菜部、道立北見農試
5. 予算区分  経常研究およびその他
6. 協力分担  北海道てん菜技術推進協会

7. 目 的
  てん菜の苗立枯病防除薬剤DAPA・PCNB 粉剤に替わる新農薬の探索および紙筒育苗の覆土処理についての防除効果を明らかにする。

8. 試験研究方法
 (1) 温室内鉢試験 (北農試てん菜部、昭和49年):供試土壌はてん菜部自然土で標準施肥後中層土(3cm)、下層土(9cm)の上の覆土1cmにイソキサゾ−ル4%およびPCNB5%粉剤を覆土30kg当り夫々75gおよび125g混合してガラス円筒につめ、灌水3日後にこれら各層の土を鉢に移した。これに催芽させた種子きたまさりを播種して24日後に苗を抜き取り、立枯病および苗生体重を調査した。なお対照としてイソキサゾ−ル+PCNB粉剤全層区および無混合区を設けた。
 (2) 紙筒育苗防除試験 (北農試てん菜部、昭和49年):品種モノホ−プ、4月10日に播種した。育苗土はてん菜部連作土壌を用い、播種直前に標準施肥および薬剤を混合した。薬剤はイソキサゾ−ル4%およびPCNB5%粉剤を覆土30kg当り夫々75gおよび125g、育苗土300kg当り125gおよび250gの処理区を設けた。なお育苗土125g処理区は播種後14日目にイソキサゾ−ル30%液剤1.000倍液を3l/m2灌注した。発病調査および生育調査は5月16日に行なった。1区紙筒256本(1/3冊)、単式、なお調査後立枯病苗より病原菌の分離検定を行なった。

9. 結果の概要・要約
 1) 紙筒育苗におけるてん菜の立枯病防除にはイソキサゾ−ル4%粉剤(タチガレン)とPCNB5%粉剤による覆土処理が効果的であった。
 2) 本剤による防除は両薬剤とも紙筒育苗における覆土6冊分(約30kg)当り75gまたは125gの処理で従来のDAPA・PDNB粉剤6冊分の育苗土(約300〜350kg)当り250g処理に近い効果が認められた。
 3) 本剤の覆土処理は75gおよび125gとも無処理に比べると薬害は認められなかったが、DAPA・PCNB粉剤と苗生体重で比較すると、本剤125gではやや生育が劣るようである。
 4) 本剤による育苗土処理は6冊当り125gおよび250gとも効果的であるが、時により生育遅延が認められた。
 5) 本剤の覆土処理を行ない、さらに播種後2週間前後にイソキサゾ−ル30%液剤1.000倍液をm2当り3l灌注するとより効果的であった。

10. 主要成果の具体的数字
 (1) 温室内鉢試験 (北農試、昭和49年)
薬 剤 処 理 区 区  別* 立枯病率
(%)
苗生体重
g/本 比率
イソキサゾ−ル4%(粉)75g/30kg覆土

   PCNB5%(粉)75g/30kg覆土
覆土(上層土) 16.1 0.60 46
中層土 25.8 1.44 100
下層土 59.7 0.86 60
  同  上       25g/同上

  同  上       25g/同上  
覆土(上層土) 3.2 0.23 16
中層土 16.2 1.15 80
下層土 59.7 1.10 76
同上(粉)育苗土300kg当り250g+250g 9.7 1.43 99
無   処   理 83.9 1.44 100
   注) *:上層土のみ薬剤処理で中層土、下層土は無処理

 (2) 紙筒育苗試験 (北農試、昭和49年)
処   理   区 発芽率
(%)
調査
苗数
立枯
苗数
立枯病率
(%)
苗生体重
g/本 比率
1. イソキサゾ−ル4%+PCNB5%(粉)各 75g/30kg覆土 78.5 209 26 12.4 1.37 116
2. 同上粉剤     各125g/同上 79.7 228 11 4.8 1.41 119
3. 同上(粉)125g/300kg育苗土およびイソキサゾ−ル30%液灌注 79.3 218 11 5.0 1.20 102
4. 同上粉剤     各250g/300kg育苗土 77.3 218 11 5.6 0.89 75
5. DAPA4%PCNB5%(粉)250g/300kg育苗土(対照) 79.3 217 9 4.1 1.40 118
6.無  処  理 77.7 218 113 51.8 1.18 100
  注) 無処理区の立枯病菌検出率:Pythium spp.23.3%、Aphanomyces cochl−ioides 40.0%、Rhizoctonia solani 6.7%、Phoma betae 3.3%、
その他21.7%

11. 今後の問題点
 (1) イソキサゾ−ルおよびPCNB剤のてん菜に対する薬害の解明と、とくに本座剤の育苗土処理に対する実用化の問題

12. 次年度の計画(成果の取扱い)
 (1) ヒドロキシイソキサゾ−ル4%粉剤(タチガレン)とPCNB5%粉剤による紙筒育苗の立枯防除法は、その覆土だけ本剤を処理すると効果的である。
 (2) これら薬剤の処理量は6冊分約30kgの覆土に夫々75gが効果的であり、薬害の恐れはない。
 (3) ヒドロキシイソキサゾ−ル4%粉剤  普通物、魚毒A
    PCNB5%粉剤   普通物、魚毒A