【指導参考事項】
                                牛 家畜衛生
牛肺虫の越冬と舎内感染および草地での感染防止に関する試験
        (昭和46〜48年)  (滝川・新得畜試衛生科)  (道単)

目 的
 牛肺虫の防除を最終的な目標として、越冬、舎内感染および草地での感染防止について検討する。

試験方法
 1. 感染子虫の越冬に関する試験
 2. 越冬した汚染草地での感染試験および保虫牛と健康牛の混牧による感染試験
 3. 牛肺虫の舎内感染と長期間にわたる保虫牛の存在
 4. 汚染草地の夏期休校および更新による感染防止

結果の概要・要約
 1. 低温(4℃)に保存した感染子虫は、保存とともに生存率と感染力は減少するが、最高13カ月生存し、10カ月保存子虫も感染力をわずかに有していた。秋期における感染子虫は夏期における感染子虫より長期間生存し、道内においてもわずかの越冬子虫存在が認められた。
 2. 越冬した汚染草地に牛を放牧したところ、前年の汚染が極端に高い場合のみ感染の成立が認められた。保虫牛と健康牛の混牧によって健康牛への感染が認められた。
 3. ル−スバ−ン方式の牛舎では、冬期間においてもある程度の保虫牛(10〜16LPG)が存在すれば舎内感染は起こり得る。
 また長期間観測した実験感染牛28頭中9頭は、感染後100日以上にわたって第1期子虫を糞便内に排泄する保虫牛であり、最高は186日であった。
 4. 汚染草地の夏期1ヵ月休校は感染防止には無効であった。2ヵ月休校は感染度を減少させる効果を示したが、非常に高い汚染草地では、3 ヵ月休校によっても感染を防止できなかった。低汚染草地の更新により感染は防止された。

主要成果の具体的数字
 1. 越冬した牛肺虫汚染草地での牛を用いての感染試験
地 区 年 度 汚染第1期子虫数
(匹/m2)
放牧頭数 結 果
滝 川 1967 14.000 2 陰性
1972 90.000 2 陽性
新 得 1971 900 8 陰性
1972 2.200 4 陰性
1973 400 4 陰性

 2. 牛肺虫の舎内感染試験
時 期 汚染牛 同居牛
頭 数 平均 LPG 頭 数 糞便内第1期子虫出現日 最高 LPG
1 490.8 2 30.5 51.7
30.1 2 40.5 109
1 15.6 2 59.0 15.8
0.7 2

今後の問題点
 1. 草地における牛肺虫の汚染度測定法および子虫の生態を明らかにする必要がある。
 2. 舎内感染の起こる環境と防止法を明らかにする必要がある。
 3. 長期間にわたる保虫牛の摘発法と免役学的検討。
 4. ワクチンの開発および応用法の検討。

普及指導上の注意事項
 今回の結果をもとに、以前の事項に補追することは以下のとうりである。
 1. 前年における汚染が極端に高い草地では、翌年の放牧によって感染が成立する危険性があるので、このような草地では更新するかもしくは採草地に転用することが望ましい。
 2. 冬期間のル−スバ−ン方式の育成牛舎では、舎内感染に十分な注意が必要である。そのため保虫牛を舎内に持ち込まないことが重要であり、牛の一般状態に常に注意を払い、保虫牛の早期発見と駆虫励行に努める。
 3. 入牧前の保虫牛検査を必ず実施して放牧時には陰転したものを入牧させることを原則とする。陽性牛は隔離して駆虫し、10日位観察後に一般牛と混牧させる指導が必要である。また汚染草地の最低2ヵ月以上の夏期休牧も感染程度を減少させる効果はあるが、完全防止はあまり期待できない。