【指導参考事項】
1. 課題の分類  根釧農試・新得畜試 乳牛 衛生
2. 研究課題名  牛乳房炎の乾乳期治療法に関する試験
3. 期 間  昭和43〜49年度
4. 担 当  根釧農試(佐野信一)
        新得畜試(八田忠雄・工藤卓二・岸晃司)
5. 予算区分  道単
6. 協力分担  なし

7. 目 的
 牛乳房炎の発生が多く、酪農経営を阻害している現状から、乳房炎の発生実態を調査するとともに、乳房対策の一手段として乾乳期治療をとりあげ、その結果について検討する。

8. 試験研究方法
 (1) 実態調査
 (2) Bengathine cloxacillinによる牛乳房炎の乾乳期治療試験
 (3) Bengathine cloxacillinによる牛乳房炎の乾乳期治療野外応用試験

9. 結果の概要・要約
 (1) 実態調査:
 初産牛をスト−ルバ−ンで飼養すると、潜在性乳房炎の発生が18.7%,他の群では11.5%であるのに対し、フリ−スト−ルバ−ンのそれでは7.2%の発生であった。しかし2産次に至と、スト−ルバ−ン、フリ−スト−ルバ−ン間に於ける乳房炎発生に差が認められなくなってきた。
 (2) Bengathine cloxacillinによる牛乳房炎の乾乳期治療試験:
 乾乳前と乾乳期を経て分娩後の乳房炎を観察したところ、乾乳期間中乳房炎が持続するもの、健康乳房のまま持続するもの、健康乳房が乾乳期間中に感染するもの、乾乳前乳房炎であったものが、乾乳期間中に治療するものなどが見られた。これに対し乾乳直前、合成ペニシリンの一種であるBengathine cloxacillin500mgを23頭,92分房の各々に対し注入したところ、分娩後の検査において、乳汁感染乳房および潜在性乳房炎が、7分房7.6%であったのに対し、対照群14頭56分房におけるそれでは18分房32.1%であり、両者間に明らかな差を認めた。
 (3) Bengathine cloxacillinによる牛乳房炎の乾乳期治療野外応用試験
 農家5戸の1年次、平均成牛頭数123.9頭の臨床型乳房炎の発生が48.8%(実頭数分房に対し)であったのが、処理を行った。2・3年次の発生が126.3頭の26.5%、138.2頭の27.8%と、処理前に対し半分程度に低下させることが出来た。

10. 主要成果の具体的数字
 牛乳房炎乾乳期治療成績
菌種 乾乳前1ヵ月
(分房)
乾乳直前
(分房)
分娩7〜11日
(分房)
分娩後1ヵ月
(分房)


(14頭
56分房)
Staphylo coccus 6 (10.7) 7 (12.5) 8 (14.2) 10 (17.8)
Strepto coccus 12 (21.4) 20 (37.5) 10 (17.8) 10 (17.8)
Others 3 (5.4) 8 (14.3) 0  (0) 0  (0)
21 (37.5) 35 (62.5) 18 (32.1) 20 (35.7)


(23頭
92分房)
Staphylo coccus 13 (14.2) 21 (22.8) 3 (3.3) 8 (8.7)
Strepto coccus 16 (17.4) 33 (35.8) 0  (0) 0  (0)
Others 5 (5.4) 13 (14.1) 4 (4.3) 5 (5.4)
34 (37.0) 67 (72.8) 7 (7.6) 13 (14.1)
  ( )内は%
  Othersはその他の菌で、大部分はコリネバクテリウム菌属
  乳汁感染および潜在性乳房炎の合計

11. 今後の問題点
 今後は多頭数飼養にともなう、群単位の乳房炎対策を考え乾乳期治療、乳房洗浄消毒、ミルカ−の整備点検、デイッピングなどの組合わせによる、一種の技術体系をとる必要がある。

12.成果の取扱い