1.課題の分類:育苗 ⅡA 2.研究課題:水稲移植用型枠苗に関する試験 移植時の断根が活着に及ぼす影響 3.期間:昭和50年 4.予算区分:経常 5.担当:北海道農試 稲第2研究室 6.協力分担:北海道中央農試、上川農試 道南農試、北見農試、改良課 |
7.目的:機械移植中苗の活着に及ぼす移植時の断根の影響を苗質および本田温度条件と関連させて明らかにし、初期生育確保技術確立のための基礎的知見を得る
8.試験研究方法: 品質:ゆうなみ、播種期:4月23日
苗の種類:型枠苗(床土培養土使用、播種量 催芽もみ 150cc/28×58cm、枠内無施肥、
枠下㎡当たりN、K2 O各17g、P2O521g基肥、35日苗)
簡易マット苗(床土無培養土使用、播種量200cc/28×58cm、28×58cm当たりN基肥1g、1、2、3各葉期1g宛追肥、35日苗)
剪根処理:移植時に根を切らぬ様掘り取り、水洗後根長を0、1、2、3cmとした
吸 水 量:a/10000ポットに各30個体使用、水面OED被覆、昼夜12℃および昼24℃
夜19℃(湿度75%)下の72時間値を測定
9.結果の概要・要約 :(本年)
1)型枠苗は簡易マット苗に比して、葉数・地上部乾物重・充実度が大きい反面、第1鞘高が短く、苗質は健苗型であるのに対し、簡易マット苗の苗質は軟弱徒長型であった。
2)剪根直後の根長が3cm以上の軽度の剪根処理の場合は、移植後の生育量(草丈、最長根長)は温度条件にかゝわらず、無剪根の場合の大差ないが、剪根程度がこれより大きくなると、移植後の生育量は急減する。
3)苗質の相違を通じて
移植10日間後の生育量(最長根長、草丈増加量、葉数増加量)(y)は移植直後の苗の乾物当たり吸水量(x1)と移植以降の気温(x2)の函数としてよく表される。
y=a+bx1+cx2(第1表)
4)移植直後の乾物当たり吸水量(y)と剪根直後の根長(x)はy=c+x/(a+bx)で示される関係にあり(a、b、cは移植以降の温度条件および苗質によって定まる常数)xが3cmより小さくなるに伴いyの低下が著しくなる。(第1図)
5)剪根の程度が大きい場合(剪根直後の根長が3cm以下)の乾物あたり吸水量(z)は剪根直後の最長根長(x)と移植後の温度(y)との次の函数として表示される。
z=a+bx+cy+dxy(第2図)
6)以上の相互間関係の計量化は想定条件下における生育量の予測評価を可能とするが、これには苗質が密接に関係することが知られた。すなわち低温下の移植に際しては、苗質向上と強度の断根を避けることによる吸水力の低下、軽減が甚だ重要であることが分かった。
10.主要成果の具体的数字 :
表1 移植直後の吸水能力、気温条件と移植後10日間の生育量
移植10日後の最長 新根長 (Y1) |
Y1=-2.8819+0.3834x1+0.0816x2 R =0.9917*** sy=0.447 |
同 草丈増加量 (Y2) |
Y2=-24.530+1.734x1+0.184x2 R =0.9882*** sy=1.873 |
同 葉数増加量 (Y3) |
Y3=-1.397+0.153x1+0.006x2 R =0.978*** sy=0.188 |
x1 :移植直後の乾物当たり吸水量
x2 :移植以降の気温
R :重相関係数
sy :回帰の推定の標準誤差
11.今後の問題点
苗質および断根の程度と活着限界温との関係の明確化
12.次年度計画
上記問題点は今後別途試験において検討の予定