水稲の機械移植栽培基準　（１）　　（昭和51年1月改訂）
　〔北海道〕　箱マット苗型式

１．適地
　（１）　稚苗：道央以南とする。ただし遅延型冷害の恐れのある不安定地帯は除く。
　（２）　中苗：全道

２．品種の選定：その地帯において出穂安全限界内に出穂する品種で、倒伏性の強い品種を選定する。

３．育苗
　（１）　床土の準備：農閑期にあらかじめ床土を培養しておく。本田10a当り5mm程度の節でふるった土壌を、稚苗移植は0.12m³程度が必要である。土性は砂壌土〜植壌土のものが望ましい。砂質土壌や極端な粘質土壌の使用は避ける。土壌のPHは、4.5〜5.0の間にすることが必要である。
　 　　　は種、出芽前の箱づめ後長時間放置は、リゾープス菌発生の恐れがあるので避ける。
　（２）　床土施肥：施肥量は1箱（床土約5L）当り、N、P₂O、K₂Oそれぞれ1gを土壌とよく混和する。
　（３）　苗立枯病防除：苗立枯病防除のため、ヒドロキシイソキサゾール粉剤（タチガレン）を使用するときは、1箱当り4〜6g（床土1m³当り1kg）をあらかじめ床土とよく混和する。また、液剤を使用するときは、は種覆土後500倍液3L/㎡あるいは、1000倍液5L/㎡を散布する。
　（４）　種子予措：種もみの発芽率が高く、苗立ちがそろうことが必要なので、採種、脱穀、脱芒、消毒に留意し、とくに塩水選および催芽（鳩胸程度）を励行する。
　（５）　は種
　　ｱ　稚苗：は種期は4月下旬を適期とする。10a当り20箱程度を準備し1箱当り催芽籾350〜400mLを均一には種する。覆土は0.5〜0.7cmの厚さにする。
　　ｲ　中苗：は種期は4月後半を適期とする。10a当り34箱程度を準備し1箱当り催芽籾200mLを均一には種する。覆土は0.5〜0.7cmの厚さにする。
　（６）　育苗管理
　　ｱ　出芽：は種後は出芽前まで32℃前後になるよう保温する。出芽器を使用するときは、覆土のもちあげ防止のため、苗箱をを積み重ねて出芽させることが必要である。出芽揃い後は直ちにビニールハウスまたはビニールトンネルに移し育苗する。育苗箱を設置するときは床面と密着させること。
　 　　　ビニールハウス内で出芽させるときは、は種覆土後は床土水分保持と保温の面から二重被覆する。この場合、断熱効果の高い資材が望ましい。高温のときは箱内地温が35℃以上にならぬようハウスのビニールを開け温度を調節する。
　　ｲ　灌水：箱育苗は土量が少ないので適正な灌水を行うこと。葉身が巻きはじめるほどの過乾は、生育障害をおこし、過湿は徒長となるので十分注意すること。
　　ｳ　温度管理：出芽揃後は床内温度が高すぎぬようにビニールの開閉に十分留意すること。とくに育苗後期には外気にさらし、苗の硬化をはかる必要がある。
　　ｴ　追肥：苗の生育および活着をを促進するため、稚苗は1.0〜1.5葉期、中苗は1.0〜1.5葉期と2.0〜2.5葉期に苗の生育状況に応じて窒素追肥料を追肥すること。なお、1回当り追肥量は、1箱当り成分量で1g程度とする。

４．移植時期および苗の形質
　（１）　移植時の苗の形質
　　ｱ　稚苗：移植時の苗は、苗令2.0〜2.5葉、苗長8〜12cm、乾物重は1.0g/100本以上で育苗日数は20〜25日とする。
　　ｲ　中苗：移植時の苗は、苗令3.1葉以上、苗長10〜12cm、乾物重は2.0g/100本以上で育苗日数は35日程度とする。
　（２）　移植時期
　　ｱ　稚苗：稚苗の活着性と出穂の安全限界を考慮すると、その地帯の平均温度が11.5℃（移植後5日間平均）に達する日から5月25日が適期である。
　　ｲ　中苗：中苗の活着性と出穂の安全限界を考慮すると、その地帯の平均気温が12℃（移植後5日間平均）に達する日から5月末日が適期である。

５．本田耕起：慣行移植栽培に準ずる。

６．本田基肥：慣行移植栽培に準ずるが、普通苗よりも倒伏しやすい傾向がみられるので多肥は避ける。

７．整地代かき：田面の整地、均平は念入りにし、稲株、土塊、浮遊物などを埋める。なお、移植時の土壌の硬さを、下ふり深10cm程度になるよう土性に応じて代かき程度を加減する。

８．除　　　草：除草剤の使用は、除草剤使用基準に準じて行うが、深水の場合や植付け姿勢が不良のときは、薬害のでる恐れがあるので水管理ならびに植付け精度を高めるように留意する必要がある。

９．移　　　植：栽植密度は25株/㎡以上とし、植付けの深さは約2cm/株本数は4〜5本を標準とする。移植時の水深は、できるだけ浅水とし、ヒタヒタ状態が望ましい。

１０．分追肥：慣行移植栽培に準ずる。

１１．病害虫防除：慣行移植栽培に準ずる。

１２．水管理：4葉頃までは浅水にし、初期生育の促進をはかる必要がある。その後の水管理は慣行移植栽培に準ずる。