1.課題の分類    分類番号Ⅰ−a  整理番号121−2−1
2.場 所 名     北海道十勝農業試験場
3.新品種候補系統  小豆「十育85号」

4.来 歴
 北海道十勝農業試験場において、早生・良質・多収を主要育種目標として、「宝小豆」を母とし、「斑小粒系−1」を父として人工交配した。F1〜F2は圃場でF3は鹿児島県で世代短縮をはかり、それぞれ集団育種法で養成した。F1で個体選抜し、以後系統育手法により選抜固定をはかってきたものである。昭和45年には「5082」の系統名で生産力検定予備試験に入れられ、昭和47年以降は、「十育85号」の系統名を付し、生産力検定試験を、昭和48年からは特性検定試験、地域適応性試験、奨励品種決定現地調査(育成系統比較現地試験)を行って地方適否を確かめたものである。

5.特 性
 形態的特性〜茎色・花色などは「茶殼早生」と同じであるが、葉色は生育後期になると「茶殼早生」より、ややうすい緑である。葉形は生育後期になると小葉の先がややとがり、剣先様を呈する。草丈・主茎節数などは「茶殻早生」と「宝小豆」の中間に位する。着爽数は「茶殻早生」より多く、ほぼ「宝小豆」並みである。熟爽色は「茶殼早生」と同じ褐色を呈し、先端はわずかに湾曲し、やや細めである。子実の形状は短円筒形で丸味を帯び、粒色は「茶殻早生」よりやや濃い赤であるが、刈り遅れなどで粒色にムラを生じることがある。
 生態的特性〜開花始は「茶殻早生」より3日前後早く、成熟期は2〜3日遅い早生種に属する。耐倒伏性は「茶殼早生」より弱いが、「宝小豆」より強い。輪紋病の被害は「茶殻早生」並みである。収量性は「茶殻早生」より20%前後多収で、ほぼ「宝小豆」並みである。また不良気象条件下でも収量の安定性が高い。

6.試験成績
 1.育成地(十勝農業試験場)における試験成績
  (1)生産力検定試験成績 −昭和47〜50年の4ヶ年平均−

品種および
系統名
開花始 成熟期 草丈 主茎節数 着葵数 10a当り 1000粒重 品質
総重 子実車 茶殻比 宝比
  月日 月日     kg kg % % g  
十育85号 7.25 9.13 38 11.4 48 408 281 122 95 114 3上
茶殻早生 28 11 29 10.3 41 344 231 100 78 117 2下
宝小豆 29 18 51 12.5 47 450 296 128 100 119 2

 2.地域適応性検定試験成績(道立各農試)および奨決現地調査地帯別収量、収量比

場所・地帯別 試験年数 場所数 10a当り 地帯区分
収量 茶殻早生比 宝小豆比
      kg % %  
北見農試 3   298 111 106 早生種地帯
上川農試 3   264 110 104
中央農試原原種農場 3   184 108 90 中生種地帯
十勝中央 3 4 302 122 109 中生種地帯
十勝山麓沿海 3 8 247 111 100 早生種地帯
網走 3 10 229 108 96
上川・空知北部 3 7 206 119 100 中生種(1部早生)
道央以南 2 9 198 107 93 晩生種地帯

 3.低温育種実験室における試験成績(昭和49〜50年の2ヶ年平均)

品種および
系統名
*処理 1葵内粒数 1000粒重 1個体当り収量
1葵内
粒 数
To比 茶 殻
早生比
1000
粒 重
To比 茶 殻
早生比
子実重 To比 茶 殻
早生比
0
      % % g % % g % %
十育85号 T0 6.30 100 89 115 100 110 13.0 100 122
T1 5.14 81 93 128 111 102 8.7 67 124
T2 4.78 76 91 127 110 95 7.1 55 148
茶殻早生 T0 7.04 100 100 105 100 100 10.7 100 100
T1 5.51 78 100 126 120 100 7.0 65 100
T2 5.27 75 100 133 127 100 4.8 45 100
宝小豆 To 6.87 100 98 105 100 100 13.2 100 123
T1 5.99 87 109 112 107 89 10.0 76 142
T2 4.76 69 90 133 127 100 7.8 59 163

*To:無処理 T1:開花始から T2:開花盛期から10〜14日間12〜15℃処理

7.配布しうる種子量
   705kg

8.採用予定県
   北海道

9.栽培適地及び普及見込面積
   十勝の中央周辺・山麓沿海及び網走上川の畑作地帯 5,000ha

栽培上の注意
 「茶殻早生」に準じてよいが、生育後期〜収穫期の気象条件(特に長雨)によっては品質を低下させることがあるので適期収穫・収納に心がける必要がある。