1.課題の分類  分類番号Ⅰ−a  整理暗号111−2−1
2.場  所  名  北海道立十勝農業試験場豆類第1科
3.新品種候補系統名  大豆十育161号(十交3907・P2・97・2・4・2・3・8・8・4・4)

4.来 歴
  白目大粒の良質多収品種の育成を目的として、昭和39年十勝農試において、「十育129号」を母とし、「カリカチ」を父として人工交配を行い、以来選抜固定を図った。昭和45年より生産力を検定するとともに系統適応性検定試験に供し、さらに昭和46年より「十育161号」の系統名で地方適否を検定するとともに特性検定試験に供試した。昭和50年度で雑種第11代にあたる。

5.特 性
 (1)形態的特性:主茎長は「トヨスズ」より長く、「キタムスメ」と同程度である。主茎節数は「トヨスズ」より1〜2節多い。分枝は長く、やや開張する。年次あるいは地域によって、主茎長や分枝数、上位節の着爽数にやや変動がみられる。葉形は円形で花色は紫、耳他茸は白色、熟爽色は淡褐色を呈する。子実は球形で、種皮色は黄白、臍は黄色である。子実の大きさは、100粒重35g内外で「トヨスズ」よりも大きい。子実の外見的品質は、粒ぞろいもよく豊満な白目良質種である。
 (2)生態的特性:子実が大きいため、発芽は小粒のものより1〜2日程度遅れるが、初期生育は旺盛である。開花期は「トヨスズ」よりやや遅く、「キタムスメ」並である。成熟期は「キタムスメ」より2〜3日遅く、「トヨスズ」より4〜5日早い中生種である。登熟、枯上がりは良好である。耐倒伏性は「トヨスズ」より弱く、「キタムスメ」並で、なびき型の倒伏をする。多肥密植栽培では倒伏の恐れがあるので、極端な多肥密植栽培にはむかない。
 マメシンクイガの被害はやや多く、「キタムスメ」並である。ダイズシストセンチュウに対しては抵抗性はない。
 収量性は「トヨスズ」より早熟のため安定性が高く、多収であり、ほぼ「キタムスメ」並である。開花時期の低温に対しては、「トヨスズ」より安定している。裂爽性は従来の品種と同程度である。

6.試験成績
 (1)育成地における成績(十勝農試、昭和45〜50年、6ヶ年平均)

系統名または
品種名
開花期
月日
成熟期
月日
倒伏
程度
主茎長
cm
主茎
節数
分枝数 稔実
爽数
a当り収量 kg 100粒重
g
品質
全重 子実
比%
十育161号 7.25 10.4 0.5 66.0 12.1 5.5 52.3 56.7 28.5 107 35.8 1中
トヨスズ 23 9 0.2 49.9 10.7 4.7 51.2 52.6 26.7 100 32.4 1下
キタムスメ 23 1 0.6 65.9 12.0 5.7 59.6 53.1 28.0 105 29.3 2上
北見白 26 3 0.5 59.5 13.0 7.1 65.7 49.2 26.7 100 25.0 2上

 (2)配布先における成績(奨決基本調査)

系統名または
品種名
北見農試 上川農試
供試
年数
成熟期 主茎長 子実重 100粒
供試
年数
成熟期 主茎長 子実重 100粒
    月日 cm kg/a g   月日 cm kg/a g
十育161号 4 9.30 69.5 29.5 113 35.3 5 10.1 70.3 31.2 103 35.8
トヨスズ 4 10.3 51.3 26.1 100 30.7 5 (10.9) 53.0 30.2 100 32.1
キタムスメ 4 9.29 70.8 29.0 101 28.1 5 10.2 69.6 31.4 104 29.6

系統名または
品種名
中央農試原々種農場 中央農試
供試
年数
成熟期 主茎長 子実重 100粒
供試
年数
成熟期 主茎長 子実重 100粒
    月日 cm kg/a g   月日 cm kg/a g
十育161号 5 9.23 50.9 29.2 99 34.1 5 9.28 52.7 25.2 104 34.6
トヨスズ 5 28 40.8 29.5 100 31.8 5 10.4 39.9 24.3 100 32.5
キタムスメ 5 24 53.8 29.8 101 28.7 5 1 53.9 26.3 108 29.3

 (3)現地試験収量比一覧(対トヨスズ比%)

供試年数 4 3 3 3 2 2 1 2 2 4 3 2 1 3 2
場 所 本別町 幕別町 新得町 上士幌町 同左
(現選)
鹿追町 足寄町 豊頃町 大樹町 同左
(現選)
美幌町 斜里朱円 斜里以久科 和寒町 滝川市

7.配布しうる種子量
   1,090kg

8.採用県
   北海道

9.栽培適地及び普及見込面積
   系適、奨決、現地調査等の結果から、本系統は十勝管内中央周辺部、網走管内中央部、上川管内南部およびこれらに類似の地帯に適する。十勝中央部は豆作率高く、ダイズシストセンチュウの密度が高いので適さない。上記の地帯で白目良質品種を望むところは、「北見白」、「キタムスメ」の一部におきかえる。またこの地帯で、ダイズシストセンチュウの被害の認められない地帯では、「トヨスズ」を全面的におきかえる。
 対象品種:北見白、キタムスメ、トヨスズ
 普及見込面積:4,000ha

10.栽培上の注意
 (1)子実が大きいため、発芽が遅れ、発芽率がやや低下する場合がありうるので、必ず種子粉衣すること。また、マメシンクイガの被害が比較的多いので、適期防除すること。
 (2)肥沃地では倒伏の恐れがあるので、極端な密植はさけた方がよい。
 (3)ダイズシストセンチュウに対して抵抗性はないので、被害の恐れのある圃場での栽培は避けること。