1.課題の分類 果樹 2.研究課題名 リンゴ樹体のゆ合組織形成促進に関する試験 3.期 間 昭和47〜49年 4.担 当 北海道立中央農業試験場園芸部 5.予 算 区 分 道単 6.協 力 分 担 なし |
7.目 的
リンゴ樹体の傷口のゆ合組織の形成促進を図り、近年増大しているリンゴ腐らん病対策の一方法とする。
8.試験研究方法
(1)傷発生の時期とゆ合組織形成
樹体に傷をつけた場合、傷口のなおり易い時期を圃場および室内(切枝)で検討した。
(2)枝剪去時期とゆ合組織形成
枝の剪去時期がゆ合組織の形成および枯込みに及ぼす影響を検討した。
(3)枝剪去方法とゆ合組織形成
剪定時期に枝の基部を残して切り、傷口のなおり易い時期に残りの部分を切る「二回切り」について検討した。
(4)傷口の処理とゆ合組織形成
ゆ合組織の形成が良好な傷口の処理方法について、塗布剤を塗布するまでの期間および植物ホルモンの効果を検討した。
(5)樹体栄養条件とゆ合組織形成
施肥量および着果量がゆ合組織の形成に及ぼす影響を検討した。
9.結果の要約
(1)圃場においては、ゆ合組織の形成は夏期間において旺盛であり、ゆ合組織の形成される期間、枯込程度などから傷口の最もなおり易いのは4月から6月にかけて傷をつけたものである。
(2)11月および1月に枝を剪去したものは、3月および6月に剪去したものに比べて、ゆ合組織の形成が劣り、枯込みも大であった。
(3)大枝の剪去、心の切り下げの場合は「二回切り」を行うことにより、ゆ合組織の形成が良く枯込みが少ないことが認められた。
(4)傷口に塗布剤を塗布する場合、余り大きな傷でなければ1週間程度の期間をおいて塗布してもゆ合組織の形成には余り影響がなかった。しかし傷口のなおり難いものについては塗布が遅れることによる影響が強く現れるようであった。ホルモン剤の塗布効果は切枝では2、4-D、NAAで顕著であったが、圃場では2、4-Dの効果は小さかった。
(5)着果量を多くした樹ではゆ合組織の形成が劣ることが認められた。施肥量については明らかでなかった。
10.主要成果の具体的数字
第1図 時期別ゆ合組織形成
(1) 塗布剤無塗布
傷口面積の減少程度 昭和47年
(2) 塗布剤塗布
第1表 枝剪去方法とゆ合組織形成
区名 | 処理方法 | 塗布剤 | 供試 枝数 |
ゆ合組織 の形成状況 |
切口全周に対する ゆ合組織形成割合 |
枯込 程度 |
フラン病 発病枝数 |
3月塗布区 | 3月に目標とする 位置まで切り下げる |
塗布 | 10 | 2.0 | 6.7 | 0.9 | 0 |
3月無塗布区 | 無塗布 | 10 | 1.2 | 4.1 | 2.3 | 1 | |
6月塗布区 | 3月に目標とする位 置の10cm程度上で 切り6月に残りを切る |
塗布 | 10 | 2.5 | 7.9 | 0.1 | 0 |
6月無塗布区 | 無塗布 | 10 | 2.0 | 4.5 | 2.0 | 1 |
第2表 施肥および着果量とゆ合組織形成
区 | 土壌 施肥 |
尿素葉 面散布 |
着果量 | ゆ合組織進展程度 | 備 考 | |
タテ方向 | ヨコ方向 | |||||
1 | ◎ | ○ | 無 | 3.0mm | 3.3mm | 1.土壌施肥は1樹当り、NPK各成分 昭和48年は200g、昭和49年は◎印は 400g、○印は200g 2.尿素は0.5%液を6月上旬から約2週間 おきに4回散布 3.ゆ合組織の形成は、49年7月処理、 11月調査。 |
2 | ◎ | ○ | 標準 | 2.1 | 3.2 | |
3 | ◎ | ○ | 多 | 1.8 | 3.0 | |
4 | × | ○ | 標準 | 2.4 | 3.2 | |
5 | ○ | × | 無 | 2.4 | 3.0 | |
6 | ○ | × | 標準 | 2.2 | 3.1 | |
7 | ○ | × | 多 | 1.3 | 2.6 | |
8 | × | × | 標準 | 2.1 | 3.1 |
11.今後の問題点
(1)整枝、剪定の時期および方法が樹体に及ぼす影響
(2)簡便で効果的な傷口の保護方法
12.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
(1)圃場においては、4月から6月にかけてつけた傷口のゆ合組織の形成が良好であるが、生育期間中の剪定は樹体に及ぼす影響が大であることから、大枝の剪去、心の切り下げなど傷口のなおり難いものについては「二回切り」の方法をとることが望ましい。
(2)また腐らん病の病斑を削り取る場合も、遅くなるに従い病患部が進展し、胞子も分散することから、見つけしだい削り取りを行い、できるだけ早く塗布すること。
(3)過度の着果はゆ合組織の形成を不良にし、また凍害を誘発することにもなるので適正な着果量とすることに留意し、施肥についても、特に窒素肥料の過不足により冷害が誘発され、また腐らん病にも罹病し易くなるので、施肥についても適正なものとすること。