春播タマネギの栽培管理改善による品質向上に関する試験
 Ⅰ-2 タマネギの時期別好適水分条件
 Ⅰ-3 水分条件とN用量の相互関係
(北海道立中央農業試験場 化学部)
(昭和48〜50年)

目 的
 土壌水分の多少がタマネギの生育・収量・品質におよぼす影響について試験し、タマネギの生育時期好適水分条件を明らかにするとともに、土壌水分条件との関連でN施肥量の影響を検討し、水分管理ならびに施肥管理改善の資料とする。

試験研究方法
 試験地及び土壌条件  中央農試場内 大型枠試験 1区12㎡ 2連制 細粒質褐色低地土
                 目標PF(10cm)2.6、2.3、2.0の3水準、処理期間内降雨遮断、パイプかん水による水分調節
 処理区別
  Ⅰ-2(48年)  倒伏期までの水分処理:(活着後〜外葉発育期)(〜結球期)の各時期土壌水分3水準の組合せ。計9処理。
     (49年)  倒伏期以降の水分処理:倒伏期以降土壌水分3水準とN(10、20、40kg)3水準の組合せ。計9処理
  Ⅰ-3(50年)  活着後〜結球期初期の土壌水分条件3水準とN(10、20、40kg)3水準の組合せ。計9処理

結果の概要・要約
 Ⅰ-2
  (1)春播タマネギに対する土壌水分の影響(かん水効果)は処理期間が早いほど明らかで、外葉発育期〜結球期の多水分条件が養水分吸収を促進し、栄養生長を旺盛にし、倒伏期は遅延するが球肥大を良好にし、増収につながった。
  (2)生長前半の多水分条件は良好な球肥大により、収量向上ばかりでなく、貯蔵中の減量率を低下させ、萌芽球の減少をもらたし、貯蔵性向上につながった。
  (3)倒伏期以降の水分条件は生育・収量にあまり影響しないが、この期間の多水分条件は貯蔵性を低下させる傾向が認められる。
 Ⅰ-3
  (1)春播タマネギに対する生育初期〜外葉発育期にかけての土壌水分の影響(かん水効果)は各Nレベルにおいて明確に認められ、一般的に多水分条件ほど旺盛な栄養生長、球肥大がみられた。
  (2)N多用−少水分条件で、土壌中E.C値が著しく上昇し、生育初期〜外葉発育期のE.C値の高まりは同期間の草丈を明らかに抑制していた。
  (3)外葉発育期の草丈が抑制されている区ほど、腐敗(尻ぐされ)、欠株が多く、そのため規格内球数が減少し、収量低下につながった。
  (4)球肥大始めの草丈(栄養生長)が旺盛なものほど球肥大が促進され、L球率が高まり、収量向上につながった。
  (5)養分吸収は多水分条件によって一般的に促進されるが、N多用による体内N濃度の上昇N吸収量の増加は、条件によってはP2O5吸収の相対的低下をもたらし、栄養生長の抑制球肥大不良の要因となった。

主要成果の具体的数字
 Ⅰ-2 タマネギの時期別好適水分

水分処理と貯蔵性(48年)

項目 水分処理 後期(球肥大始め〜倒伏)
H M L 平均
減量率
(%)
前期
(活着後〜球肥大始め)
H 13.5 11.5 12.2 12.4
M 10.0 8.6 9.4 9.3
L 9.4 8.8 8.5 8.9
平均 11.0 9.6 10.0  
萌芽球率
(%)
H 42.3 29.5 26.3 32.7
M 35.1 23.7 27.5 28.8
L 21.8 26.0 18.9 22.2
平均 33.1 26.4 24.2  
腐敗球率
(%)
H 0.3 1.7 1.4 1.1
M 3.4 3.1 1.5 2.7
L 1.5 2.2 1.9 1.9
平均 1.7 2.3 1.6  

49年3月20日調査

Ⅰ-3 水分条件とN用量の相互関係

指導上の注意事項
 1)定植期から活着、外葉発育にかけて土壌乾燥傾向にあるタマネギ栽培では、かん水の必要性が高い。しかし定植後のかん水は作業上遅れがちであり、灌水効果が滅殺されていると思われるので、早期かん水が必要である。
 2)地温の低い時期の早期かん水は、地温低下から生育抑制の傾向がみられるので、必要最小限のかん水に留める必要がある。
 3)しかし、水分処理の効果はN施肥量で大きく変り、N施肥量の少ない場合は水分条件でも初期生育抑制や腐敗(尻ぐされ)発生が軽度である。したがって、灌水管理よりもまずN期肥量の適正化が最重要であり、この後に水分管理を考えるべきである。また、灌水はNの溶脱を伴うので施肥法や土壌管理の改善とともに考慮していく必要がある。