春播タマネギの栽培管理改善による品質向上に関する試験
Ⅱ-5 貯蔵性の容易解析と本畑の生産条件
道立中央農試 化学部
道立北見農試
(昭和48〜49年)
目 的
土壌環境ならびに栽培管理の異なる条件で生産されたタマネギの貯蔵性を調査し、本畑生産条件の影響を明らかにするとともに、球内成分と貯蔵性ならびに貯蔵中の球内成分の変化を調査し、タマネギ生産改善の資とする。
試験方法
1.本畑生産条件と貯蔵性の関係(中央、48−49年)
場内および現地各試験で得られた収穫物を貯蔵し、風乾減量、萌芽根、腐敗状況を調査。
貯蔵条件:処理・反復ごとにポリコンテナに充槇し吹抜きで11月10日まで予乾後、3月下旬までブロック建試験用貯蔵庫内で貯蔵。庫内温0℃〜5℃。
2.球内成分と貯蔵性の関連(中央、49年)
N用量別(10、20、40kg/10a)に球の大きさごとに50〜120球貯蔵し、前後の球内成分の変化および荷重減量(一軸圧縮試験器による)を調査し、貯蔵性との関連を検討した。
3.土壌別球内成分と貯蔵性(北見、49年)
沖積土および洪積土の標準栽培タマネギを球の大きさ別に各120球貯蔵し、貯蔵前の球内成分と貯蔵性の関連を検討した。
貯蔵条件:予乾後、北見広域農協連タマネギ貯蔵庫内。
試験成果の概要
1.本畑生産条件と貯蔵性
1)貯蔵性は貯蔵条件による差が大であるが、試験地・年次間の差も大である。
2)風乾減量は萌芽の多い条件ほど大で、小球ほど風乾減量多く萌芽も多い。萌芽は貯蔵性低下の最大要因であったが、貯蔵後半(1月中旬以降)に多発する。発根は萌芽よりも少ない。
3)腐敗球発生は大半が予乾中にみられ、本畑の腐敗発生率の高い場合に多い傾向がある。腐敗部位は全体的には尻ぐされが多いが、尻ぐされは予乾中に多発し、頭・横ぐされの多い場合は庫内での腐敗が多くなり、とくに2L球で多く発生した。
4)生育に好適な条件(肥大期までの多水分、N少肥など)は生育肥大が良好でL球率が高いが、萌芽球、風乾減量も少ない。しかしN多肥区は球大が同じでも萌芽そのものを促進する。
2.球内成分と貯蔵性
1)貯蔵に伴い糖類やアミノ態Nの減少が顕著にみられ、とくに非還元糖の低下が大で全糖中の非還元糖割合は低下する。この低下はN多肥ほど、また小球ほど大である。なお、N多肥ほどN化合物が多く糖類が低く、球大については小球ほど非還元糖が低かった。
2)貯蔵前の球内成分と萌芽発生率の関係はアミノ態Nと正の相関がみられた。腐敗球との関係は明確でないが乾物率や糖類と頁の関係があり、腐敗は本畑での罹病に基づくものでありその原因も多様であるが、球成熟との関連が考えられる。
3)これら貯蔵性と、玉じまりの一つの表示法である機械的荷重減量との相関は非常に高く、萌芽は荷重減量の大きいほど発生が多いが、腐敗は逆の相関であった。
3.土壌別球内成分と貯蔵性
1)貯蔵性低下は腐敗と発根によるものであり、腐敗はボトリチス、細菌によるものが多かった。本畑における病害が少なく収量の高かった沖積土では2L球、L球が貯蔵性高く、病害の多かった洪積土ではL、M球が貯蔵性が高い。また長球は両土壌とも貯蔵性が不良であった。
2)球径の大きいものほど汁液のEC、N・K濃度が低く成熟が進んでいると考えられた。また、球のP2O5含量は長球が高く、球径別のP2O5含量と腐敗球率には正の相関がみられた。
主要な成果の具体的データ
貯蔵期間の外気温と貯蔵性ならびに時期別貯蔵性低下(全試験区合計)(中央、48〜49年)
項目 年度 |
外気平均気温℃ | *風乾減量率 % | *萌芽球率 % | *腐敗球率 % | ||||||||
0〜Ⅰ | Ⅰ〜Ⅱ | Ⅱ〜Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | |
48年度 | 11.18 | -3.60 | -6.24 | 4.05 | 6.54 | 11.54 | 1.21 | 2.98 | 41.12 | 3.87 | 4.35 | 5.34 |
49年度 | 10.58 | -5.41 | -7.21 | 3.51 | 5.60 | 9.98 | 0.12 | 0.46 | 18.73 | 7.10 | 10.59 | 12.62 |
平年度 | 10.70 | -3.50 | -6.66 | − | − | − | − | − | − | − | − | − |
0:収穫時、Ⅰ:予乾終3時、Ⅱ:1月16日、Ⅲ:3月下旬 *累積値で示した
球の大きさと萌芽球・腐敗球発生率(全試験区合計)(中央、48〜49年)
項目 年度 |
萌芽球数比 | 全腐敗球数比 | Ⅱ期以降の腐敗球数比 | |||||||||
2L | L | M | S | 2L | L | M | S | 2L | L | M | S | |
48年度 | 6.0 | 29.0 | 51.0 | 58.7 | 1.3 | 3.3 | 4.7 | 5.9 | 0 | 3.0 | 2.8 | 2.7 |
49年度 | 14.1 | 17.1 | 26.3 | 30.1 | 18.0 | 10.9 | 11.7 | 11.8 | 11.1 | 4.9 | 5.2 | 3.3 |
貯蔵性と球内成分、荷重減量の関係(中央、49年)
項目 貯蔵性 |
荷重 減量 |
乾物率 | 全糖 | 還元糖 | 非還元糖 | T-N | 水溶性 T-N |
アミノ態 N |
全糖 T-N |
ジュース | |
pH | RM示度 | ||||||||||
萌芽球発生率 | 0.881** | 0.272 | 0.109 | -0.305 | 0.130 | 0.209 | 0.531 | 0.615* | -0.501 | 0.224 | -0.071 |
腐敗球発生率 | -0.676** | -0.467 | -0.411 | -0.388 | -0.263 | -0.096 | 0.039 | 0.014 | -0.149 | -0.238 | 0.048 |
奨励または指導参考上の注意事項
1.貯蔵性向上は貯蔵条件が最大の要因であるが、栽培管理や病害などによるタマネギそのものの貯蔵性低下も大きいので、好適な生育環境での無理のない栽培が必要である。
2.貯蔵中の腐敗発生は本畑での罹病株の持ち込みによるものであるが、病害の種類によって貯内貯蔵に注意を要する。なお、尻ぐされは予乾中に大部分が発生するので、入庫時の選別により庫内での発生を少なくすることができる。