1.課題の分類   果樹 土壌肥料
2.研究課題名   重粘果樹園土壌における排水ならびに下層土改良に関する試験
             (1)排水溝の深度と水分管理がリンゴ樹体におよぼす影響に関する試験
             (2)下層土の改良法に関する試験
3.期     間   (昭和45〜50年)
4.担     当   化学部 土壌肥料第二科
             園芸部 果樹科
5.予 算 区 分   道単
6.協 力 分 担

7.目 的
  試験(1)重粘果樹園土壌における排水改善が、リンゴ樹体におよぼす効果を検討する。
  試験(2)老令果樹園の改植にあたり、下層土の改良法を明らかにする。

8.試験研究方法
  試験地:滝川市江部乙町12丁目中央農試園芸部江部乙りんご試験地ほ場
  試験(1)、試験区:①暗0.6+心破、②暗1.0+心破、③暗0.6、④暗1.0、⑤無処理、⑥直上
  処理内容:昭和45ほ場設置、46年春リンゴ品種「ふじ」の1年生苗木を定植
         暗渠渠間7m、渠深0.6および1.0m、心土破砕の深さ45cm、暗渠に直角
  試験(2)、試験区:①トレンチャー・全層、②植穴・全層、③植穴・中層、④植穴・深層、⑤植穴・無施用、⑥無処理
  処理内容:トレンチャー耕深60cm、巾45cm、植穴深さ60cm、半径60cm
         資材施用量は苦土石灰(16kg/m3)熔燐(4kg/m3
         全層20〜60cm、中層20〜40cm、深層40〜60cm施用、表土0〜20cmは共通改良、46年春リンゴ品種「ふじ」の1年生苗木をトレンチャー施行直上に定植

9.結果の概要・要約
 試験(1)、1)地下水位の変化、排水量、水分張力などからみる土壌の排水効果は、心土破砕併用区が優れ、これが土層の膨軟化、透水性の増大、地温の上昇など、土壌の理学性改善におよぼす効果は著しい。しかし、試験ほ場のように重粘かつ堅密な土壌の地帯においては、暗渠排水単用だけでは充分な排水効果は期待できず、心土破砕の併用が必要である。
        2)経年的にみた幹周の肥大状況および解体調査結果などから、リンゴ樹の生育は、概ね暗渠1.0m+心土破砕区の生育が最も良く、次いで暗渠0.6mおよび暗渠0.6m+心土破砕区の順序で、暗渠1.0mおよび無処理区の生育は劣った。特に無処理区は地下部の生育が悪く、根幹直下のみに分布して、下層への伸長が極めて少なかった。
 試験(2)、1)トレンチャーおよび植穴の施行により、深さ60cmまでの土壌は極めて膨軟となり、通気水性など土壌の物理性が改善された。
        2)土壌改良資材の投入により、下層土の化学性は改善された。
         なお、本試験ほ場のように、下層土における塩基類および燐酸含量などが少なく、かつ、強酸性を呈する土壌に置いては、粗皮病など生理的障害の対策上からも、樹体の健全な生育を図るためには、下層土改良は大切で、本試験における土壌改良資材量、苦土石灰(16kg/m3)および熔燐(4kg/m3)は、ほぼ妥当と考えられる。
        3)経年的にみた幹周の肥大状況および解体調査結果などから、リンゴ樹体の生育は全層つづいて中層改良区の生育が比較的勝っていた。

10.主要成果の具体的数字

試験(2)第1表、跡地土壌の分析値(47年度)

  項目

区別
PH
H2O
置換性塩基mg/100g 有効態
P2O5
mg/100g
CaO MgO K2O
1-1 6.90 315 39.5 24.4 19.7
2 6.92 310 40.3 24.1 15.6
3 6.83 296 33.3 26.6 17.5
2-1 7.10 414 36.9 21.6 18.4
2 6.83 395 35.3 15.9 15.8
3 7.12 334 42.1 11.1 16.1
3-1 7.44 519 36.4 24.4 23.2
2 7.20 563 41.8 19.9 19.0
3 7.00 336 34.9 14.7 6.7
4-1 7.02 437 45.6 23.2 17.5
2 6.90 149 15.8 22.6 2.1
3 5.40 519 45.7 13.6 39.2
5-1 7.02 444 38.3 29.4 24.0
2 6.90 360 28.0 22.4 13.0
3 5.40 187 24.3 15.1 3.6
6-1 7.41 465 50.6 29.5 23.4
2 4.20 137 15.5 10.0 4.0
3 3.88 75 7.0 6.8 1.5

試験(2)第2表、リンゴ樹の生育状況(49年度で樹令5年生)

    項目

区別
幹周
(cm)
47生体重
(g)
49生体重
(g)
49全葉分析
(%)
47 49 地上部 地下部 地上部 地下部 N P K Ca Mg
1 95 220 1,232 983 3,935 3,584 2.18 0.28 2.12 1.38 0.20
2 88 195 1,380 967 5,870 4,066 1.95 0.26 1.96 1.24 0.18
3 84 195 1,917 1,307 3,900 3,243 1.95 0.22 2.04 1.09 0.17
4 79 191 1,230 998 2,840 2,682 1.98 0.23 2.07 1.06 0.17
5 71 188 499 521 3,007 2,881 2.02 0.22 1.97 1.09 0.16
6 78 195 910 891 3,363 3,353 2.31 0.19 1.90 1.23 0.19

11.今後の問題点
  1)排水効果の持継性の検討
  2)下層土における土壌改良資材が、リンゴ樹の生育におよぼす効果の持続性の検討

12.成果の取扱い(普及指導上の注意事項)
  1)トレンチャー施行に当っては、透水性の小さな土壌では、溝が逆に溜池とならないよう排水対策も考慮する必要があり、土改資材は土壌と良く混和することが大切である。