1.課題の分類 2.研究課題名 スラリーローリの利用試験 3.期 間 昭和50年 4.担 当 十勝農試農業機械科 5.予 算 区 分 総合助成 6.協 力 分 担 |
7.目 的
ふん尿処理の基本は運搬作業の合理化である。近年このために混合流動方式が一般化し、附随してポンプ、スプレッダ、あるいはインジェクタなどが開発されている。しかし、これらはトラクタを対象にするものであり、広域利用の観点からは機動力に貧しくトラックの導入が望まれていた。専用スラリローリを開発したので、この実用性について検討し、導入利用上の参考に供する。
8.試験研究方法
1)供試機 スラリローリ いすずTWD23型
135PS/2600rpm、タンク容量6ton
2)試験項目 ア、散布試験−散布分布、ポンプ吐出量
イ、けん引力試験−十勝農試 11月6日
ウ、作業能率試験−池田町 11月1日
9.結果の概要・要約
1)バキュームタンカの吸入・排出能力は通常500L/min程度である。大量のふん尿を能率処理しようとするには容量不足であり、このためにはポンプを利用した2ステージ方式が適当している。スラリローリにはヒューガルポンプを装備した。吐出量は約2000L/minであり、バキュームの約4倍の能力である。汲上げポンプは4000L級のスラリポンプ利用であり組作業となる。
2)散布法は高所から衝突板による下方散布方式であり、比較的均一に散布されている。霧散量が少なく風による影響もほとんど認められない。
3)スリップ率15%けん引係数は空タンク時0.366、満タン時0.315であり、2輪駆動のトラクタとほぼ同等の能力であり類似した性能曲線である。
4)6輪駆動ではあるがタイヤの径とラグの形状からトラクタの4輪駆動のような粘り走行は示さない。スリップ率15〜20%程度を限界としてけん引の伸びは停滞する。
5)普通型のトラックのけん引係数は空タン時0.15程度である。これに比較すると悪路、あるいは傾斜地走行にはすぐれた性能を示すといえる。草地では15度の傾斜も難なく登板し安定して作業できた。(鹿追、池田町営大規模草地)
6)マッド&スノーの横ラグタイヤを採用しているが、ラグのパターンが改良されれば、けん引力はさらに向上しよう。作業条件範囲を広げることが可能である。
7)作業能率は圃場内距離400mにおいて68.3a/kであり、同条件におけるトラクタけん引4000Lに比較すると約2倍の能率であった。約2kmにおいては42a/kであり約4倍の能率である。圃場内の距離が遠くなれば、この差はさらに大きくなる。
8)スラリローリは家畜ふん尿ばかりでなく農産加工場の廃液処理にも利用することができる。処理経費はてん粉工場を対象とした場合、ton当り545円であり、公害対策と土地還元利用に期待される。
10.主要成果の具体的数字
図1 機体仕様
●ローリ型式 | 金剛製SL-6000(ダ円形) |
●寸法(mm) タンク全長 タンク長径 タンク短径 |
3,580 2,050 1,100 |
●積載容量(L) | 6,000 |
●空間容積(L) | 400 |
●室 数 | 1室(防波板2枚) |
●タンク内面処理 | 亜鉛メタリコン処理 |
●ポンプ(攪拌装置付) | ビューガルタイプ液中ポンプ |
●スプレッダ | 平面水流拡散方式 |
●吐出能力(L/min) | 1,500〜2,800 |
●散布幅(m) | 8.5〜12.0 |
●マンホール | 円形又は角形1個、キャブ内又は外にて開閉 |
●バルブ | 4インチ3方ボールコック |
●寸法(mm) 車両全長 車両全幅 車両全高 ホイルベース トレッド(前) 〃 (後) 最低地上高 |
7,040 2,390 2,530 3,420+1,160=4,580 1,575 1,750 230 |
●重量(kg) 車両重量 最大積載量 乗車定員(人) 車両総重量 |
5,765 6,000 3 11,930 |
●性能 最高速度(km/h) 登板能力(tonθ) 最小回転半径(m) |
70 1.00 10.0 |
●エンジン 名称 型式 総排気量(cc) 最高出力 最大トルク(kgm/rpm) |
ディーゼルDA640 水冷4サイクル直列予燃焼室式 6,373 135/2600 41.5/1600 |
●変速機 変速比 |
3-4連シンクロメッシュ式直結4段 ①6,451②3,617③1,916④1,000(R)6,305 |
●副変速機 変速比 |
常時噛合式 高1,000 低2,534 |
●減速装置 減速比 |
ハスバ傘歯車1段減速 6,500 |
●タイヤ(前後共) | 8,25-20-14P |
●操向装置 | ボールナット式パワステアリング |
表1 スラリローリの作業能率 その1 (池田町)
作業速度 (m/sec) |
面積 (a) |
作業時間 | 作業能率 | |||||
汲上げ | 走行 | 散布 | 調量 | 計 | a/ka | hr/ha | ||
0.68 | 72 | 21′20″ | 18′05″ | 22′00″ | 150″ | 1゜03′15″ | 68.3 | 1゜27′50″ |
(33.7) | (28.6) | (34.8) | (2.9) | (100.0) |
圃場間距離 400m 走行速度4.42Pka(15.9km/ha)散布量5ton/10a
図2 けん引力曲線
表2 スラリローリの作業能率 その2
作業速度 (m/sec) |
面積 (a) |
作業時間 | 作業能率 | |||||
汲上げ | 走行 | 散布 | 調整 | 計 | a/hr | hr/ha | ||
0.69 | 108 | 34′45″ | 1゜20′45″ | 32′30″ | 6′15″ | 2゜34′15″ | 42.0 | 2゜22′49″ |
(22.5) | (52.3) | (21.1) | (4.1) | (100.0) |
圃場間距離 2130m 走行速度8.0m/sec(28.8km/hr)