1.課題の分類   根釧農試 乳牛 放牧
2.研究課題名   イネ科主体永年放牧地における全日放牧による乾涸・妊娠牛の飼養法
3.期     間   1973〜1975年
4.担     当   根釧農試 酪農科
5.予 算 区 分   道単
6.協 力 分 担   なし

7.目 的
 放牧主体飼養と省力管理をはかるため、全日放牧による乾涸・妊娠牛の飼養法を実証的に検討する。

8.試験研究方法
 1973年5月から1975年10月の放牧期間を通じて、イネ科主体永年放牧地2.4ha(4牧区)に乾涸・妊娠牛3〜10頭を1群に全日放牧し、1牧区約1週間の滞牧で輪換放牧を行った。供試牛は3ヶ年で延47頭を供用した。
 草地管理は全牧区に毎年早春N-3、P2O5-6、K2O-6kg/10aを施用し、一部の牧区には8月にNKを追肥した。掃除刈りは各牧区毎年1回実施した。補助飼料は1973年〜74年の2ヶ年はCr2O3、入配合飼料を0.5kg/日・頭給与した。
 その間、供試草地の収量、植生、一般成分、LnVitroDDM、牧養分、乾涸妊娠牛の採食草、採食量、増体、産仔、分娩、疾病、血液性状、行動などを調査した。

9.結 果
 (1)供試した永年放牧地は放牧期を通じて良好に利用され、6〜9月の期間は入牧頭数も必要に応じて、ある程度増減しえた。
 (2)放牧牛は現存牧草を選択採食し、粗蛋白質、LnVitroDDMの高いものを好食した。また採食量は必要量を充分満たすだけ摂取した。
 (3)乾涸・妊娠牛の日増体量、産仔体重は3ヶ年平均で1.43kg/日・頭、46kg/頭と順調であった。分娩時の状況も概ね、問題はなかった。
 (4)乾涸・妊娠中の疾病発生は見られなかった。血液性状は正常値をやや上廻るものがみられたが、以上とは断定しがたかった。
 (5)放牧牛の全日行動から、通常の管理にわずらわしさを持ち込むことは少ないが、毎日の放牧看視、特に分娩前後は注意をはらう必要があった。
 (6)放牧期の急速乾乳は搾乳停止后、約1週間、外観的にも乳房の腫張、発熱など、異常が認められるが、時間がたつにつれて軽減、消失し、省力的であった。

10.主要成果の具体的数字

表1 放牧前牧草、牧養力、家畜の行動の季節変化

  5 6 7 8 9 10月
放牧前牧草 DM収量(kg/10a) 41 96 116 130 136 80
イネ科率(%) 87 79 69 69 72 81
粗蛋白質 24.0 20.2 18.7 21.8 22.0 20.3
一般成分(%) 粗脂肪 5.4 5.5 5.1 5.9 5.7 5.2
NFE 44.0 44.1 43.8 39.3 39.9 43.8
粗繊維 17.9 21.9 23.1 22.7 22.1 20.6
粗灰分 8.7 8.2 9.4 10.3 10.3 10.2
LnVitroDDM(%) 77 76 70 70 70 65
放牧延頭数(頭/2.4ha) 45 200 192 174 172 102

表2 増体、産仔、分娩、疾病

年次 乾涸・妊娠牛
の増体(kg/日・頭)
産仔 分娩牛の
体重減(kg)
分娩の経過 分娩前后の疾病
体重 自然 介助 起立不能 後産停滞
1973 1.34±0.44 ♂11 47 68 14 1 2 2
♀4 42
1974 1.48±0.34 ♂5 49 73 11 1 1 0
♀7 46
1975 1.51±0.39 ♂6 47 63 8 1 1 0
♀3 43
1973〜75 1.43±0.40 ♂22 47 68 33 3 4 2
♀14 45

11.今後の問題点
 全日放牧中の乾涸・妊娠牛へのミネラル補給

12.成果の取扱い
 草地面積の制約が少ない地域、農家に適用しうる。