農林省登録候補系統オーチャードグラス北海2号

農林省北海道農業試験場草地開発第2部
　牧草第2研究室

１．来歴および育成経過
　昭和40年に月寒在来1,619個体、道東地方の生態型4,187個体、導入56品種よりの8,260個体の合計14,066個体からなる選抜基礎集団を作り、41年春までの調査を行った結果129個体を選抜して、出穂期により4集団に分けた。集団ごとに隔離圃場で多交配させた。多交配種子について、43年より3年間にわたって後代検定を実施して、多収を示した栄養系をMEとML群おのおの8個体選抜し、それらの組合せによる合成品種をそれおれ「北海1号」および「北海2号」と命名した。
　47年から系適試験、特性検定（耐雪性・放牧適性）および育成地での試験を実施した結果「北海2号」の優良性が認められた。

２．特性概要
　A、形態的特性：草型はほぼ立性で、稈長・草丈・穂長は中程度であるが、葉長は顕著に長く、葉巾も広く、多葉性であることと出穂茎数が多いことが特徴とされる。
　B、生理的特性：晩生種である。総合的な耐病性は「キタミドリ」に勝る。越冬に関与する形質は極めて良好で、耐雪性および耐寒性は何れも最強のグループに属する。草収量は「キタミドリ」と同程度の水準である。採種性は極めてすぐれている。

３．適地と用途
　採草用または採草放牧兼用の晩生品種として、北海道全域及び本州の高冷地に適応する。現在の普及品種よりは晩生であるのでそれらと組み合わせて利用適期の巾を拡大することが可能となる。
　また、耐冬性に優れているので道北、道央部においては冬枯れのおそれが少なくなり、道東部においても既存品種に替って比較的安全に利用できる。

４．試験成績
　A、風乾収量（キタミドリを100とする）、キタミドリは実数（kg/a）

場所 年次 北海
1号		 〃2号 〃3号 〃4号 〃5号 〃6号 〃7号 アオナミ フロード フロンティア キタミドリ LSD5%(%）
天北 49 99 93 101 87 89 94 97 102 96 99 76.8 11
50 101 98 100 95. 90 98 94 94 97 100 82.2 NS
計 99 95 103 92 89 95 96 98 95 101 197.0 7
根釧 49 103 99 103 90 94 99 100 104 104 103 53.8 8
50 104 94 88 95 89 82 86 80 73 99 42.7 9
計 103 98 97 91 91 92 93 95 90 100 113.8 NS
北見(A) 49 106 100 107 94 96 95 103 − 92 94 99.4 NS
50 120 169 134 167 137 170 171 − 81 124 25.4 NS
計 112 114 111 112 107 89 116 − 93 104 203.0 NS
北見(B) 49 105 95 108 97 95 95 94 − 96 94 90.8 NS
50 83 223 122 204 179 197 202 − 70 119 18.6 104
計 99 103 111 99 99 104 110 − 93 90 163.6 NS
新得 49 99 83 90 82 87 87 88 − 91 86 75.4 10
50 100 91 84 92 100 97 90 − 95 93 63.0 NS
計 98 85 89 85 88 90 88 − 88 88 181.7 9
中央 49 108 95 104 94 93 102 98 − − − 80.3 NS
50 106 88 97 89 82 95 89 − − − 67.2 12
計 107 93 102 94 90 99 97 − − − 165.5 N9
北農試(A) 49 114 105 113 106 96 101 89 104 104 105 85.6 13
50 103 99 116 104 97 100 87 98 90 99 80.8 10
計 1Q9 103 113 103 97 100 89 102 96 102 193.0 10
北農試(B) 49 95 95 99 95 89 90 93 93 93 105 67.1 NS
50 107 101 101 99 100 101 93 100 106 114 61.8 NS
計 102 99 101 100 94 97 95 98 99 112 153.8 7
道内平均 104 99 103 97 94 96 98 − 93 99 155.9 5
青森 計 102 95 − 91 95 − 98 103 100 105 352.7 　
山形 〃 104 96 − 94 98 − 103 108 102 100 333.6
宮城 〃 100 98 − 90 88 − 89 100 101 92 370.8
長野 〃 104 95 − 85 93 − 93 110 99 97 313.0
石川 〃 98 97 − 97 108 − 97 110 99 113 274.5
本州平均 101 96 − 91 96 − 96 105 100 101 　

注）計は3年間合計値。北見・北農試Aは3回刈、Bは5回刈。

B、形質（採種量と出穂期は北農試、耐雪性は新潟農試で調査）

採種量 49 6.4 7.1 5.2 6.6 3.8 4.1 4.4 3.0 6.1 5.6 6.0 kg/a
月日
出穂期 49 6.1 6.5 5.28 6.6 6.9 6.5 6.10 5.30 5.31 6.1 5.27
耐雪性 49 強 極強 強 強 強 強 強 中 中 中 強
〃 50 極強 極強 強 強 強 強 強 中 − − 極強