1.課題の分類 経営 畜産経営 2.研究課題名 採卵鶏の飼料管理方式の経済性に関する調査 3.期 間 昭和47〜49年 4.滝川畜試経営科 5.予 算 区 分 道費単独 6.協 力 分 担 滝川畜試家きん科 |
7.目 的
多羽数化が進行し、飼養技術が著しく標準化してきた養鶏経営においても、いかなる詞養管理の方式をとるかは、経営主体の直観的選択に委ねられている現状にある。そこで、ここでは合理的な管理方式を経済的な視点で検討する。
8.試験研究方法
(1) 管理作業方式の経済性
道内3カ所(栗山町・東川町・滝川市)の比較的大規模な経営のうち、主として給餌・採卵・除糞作業の省力化度合により類型区分した鶏舎ユニットを選定し施設・装備の状況および飼養管理作業の把握を行って、作業能率と資本効率(労働と資本の代替関係)を解析する。なお作業時間の把握は実測(マンツーマン)によるクロスセクションデーターを用いた。
(2) とう汰、補充(更新)方式の経済性
3経営体(東川町)の実態調査成績およぴ「採卵鶏の性能試験(ホクレン)」、「経済能力検定成績(滝川畜試)」より、供用期間と残存率の種々の組合せから、経済的なとう汰、補充の方式を検討する。
9.結果の概要・要約
(1) 管理作業方式の経済性
手作業方式の各鶏舎は床面が土間の簡易構造てあるため、3.3㎡あたり建築費は約11,900円(1羽508円)と極めて安く、部分機械化方式ではN25,100円(1羽844円)K27,100円(1羽876円)と上昇し、機械化方式になると、Sでも37,000円(1羽1,017円)、ウインドレス本格鶏舎のKでは75,500円(1羽2,076円)と手作業鶏舎の6.3倍(4.1倍)に達する。
なお、機械化方式の主要装備である自動システムの投資額は、Sで307万円(1羽499円)、Kで343万円(1羽602円)となっている。年間必要投下時間から、対象鶏舎の1,OOO羽あたり労働コストと施設・機械関係費用を表に示した。
ウインドレスKを除く、4つが実際的な選択の対象となるが、ここで労賃水準を300円を中心に上下にシフトさせて相互の関係を検討してみると、まず1時間単価が200円の場合では、手作業と部分機械化のN事例かほぼ同水準(約22万円)で他2者より有利となるが、逆に100円上昇して400円となった場合には、Nの優位は動かないが、手作業は他2者と同水準の34万円となる。以上要約すれば ①家族労働主体であれば、部分機械化方式をとって合理的な労働投下と収益性を確保する ②雇用労働主体で比較的安い賃金で雇用しうるような条件があれば、安全性視点からみて現行手作業方式の採用が肯定される。
また労賃水準が高い場合には、条件によって機械化方式の採用も考えられる。ただし、自動システムとウインドレス鶏舎の組合せは、生産性(産卵量・生存率等)が他方式より大巾にまさっていなければ、その採用は困難である。
(2) とう汰・補充方式の経済性(5,000羽モデル)
モデル鶏群の規模は5,000羽、供用期間を12ヵ月、14、16、18の4区分とし、供用終了時残存率は40%、50、60、70の4水準をとった。さらに生産力(産卵能力)を標準産卵率と高位産卵率の2段階とした。この組合せによる補充方式とオールイン・オールアウド方式の羽数異動モデルに月令別産卵パターンを鶏群毎にあてはめて、2カ年間の投入・産出の試算した。このモデル間の一元的比較を可能にするために鶏卵生産原価を算上した。これを表に示したが、総体的にみてオールイン・オールアウト方式は補充方式にくらべて生産原価は高くなっており、産卵水準の相違によってもこの関係は逆転しない。
標準産卵でいえば供用12ヵ月では残存率に関らず赤字、14ヵ月では残存率70%以上、16ヵ月60%以上で、18ヵ月では残存率に関らず利潤を発生する。
産卵水準が高位の場合には補充方式ではほぼ供用14ヵ月以上、オーレイン・オールアウトでは16ヵ月以上が採算分岐月数となる。
総じていえば、現状の鶏の生産能力(産卵率、生存率)と関連市況を前提とすれば、補充方式をとって16ヵ月供用、残存70%(へい死率は9%)程度を目標とすることが妥当と判断される。
10.主要成果の具体的数字
1,000羽あたり労働費用と施設機械費用 (単位:円)
区分 | 手作業 | 部分機械化 | 機械化 | |||
S | N | K | S | K | ||
あたり(円) 労賃1時間 |
200 | 220,400 | 214,600 | 257,900 | 266,200 | 384,100 |
300 | 282,100 | 248,600 | 304,200 | 305,300 | 417,100 | |
400 | 343,800 | 282,600 | 350,500 | 344,400 | 450,100 |
供用月数・残存率別鶏卵生産原価 (円/kg)
区分 | 標準産卵水準 | 高位産卵水準 | |||||||||||||||
補充方式 | オールイン・ オールアウト |
補充方式 | オールイン・ オールアウト |
||||||||||||||
使用月数 | 12 | 14 | 16 | 18 | 12 | 14 | 16 | 18 | 12 | 14 | 16 | 18 | 12 | 14 | 16 | 18 | |
残存率(%) | 40 | 358 | 348 | 338 | 327 | 378 | 361 | 350 | 338 | 341 | 332 | 322 | 313 | 358 | 342 | 333 | 323 |
50 | 355 | 342 | 331 | 326 | 363 | 350 | 339 | 336 | 338 | 325 | 316 | 310 | 345 | 332 | 323 | 320 | |
60 | 347 | 335 | 327 | 321 | 352 | 340 | 331 | 327 | 331 | 318 | 311 | 305 | 334 | 323 | 315 | 313 | |
70 | 339 | 328 | 323 | 320 | 342 | 330 | 323 | 323 | 321 | 312 | 309 | 302 | 325 | 314 | 309 | 307 |
注)太線で囲まれた部分は卵価330円の場合の利潤発生範囲
11.今後の問題点
(1)比較期間を長期にとった場合のモデル間の有利性比較
(2)とう汰率が産卵水準に及ぼす影響
12.成果の取扱い