【普及奨励事項】
1.課題の分類  分類番号 草・飼 A5
           作物育種 0A 20
2.場 所 名  十勝農業試験場(とうもろこし育種指定試験)
3.新品種候補系統名  サイレージ用トウモロコシ「道交S1号」

4.来  歴
 十勝農試において昭和45年にN19×T015を種子親とし,CM37×CMV3を花粉親としたフリント種×ゲント種の複交配一代雑種である。
 昭和46年度より育成地において生産力検定試験を開始,昭和47年には「十交107」の系統番号を付し,また昭和50年以降「道交S1号」の配付系統名で道内試験機関および現地試験で検討してきた。
 昭和50年からは岩手農試においてすす紋病抵抗性検定試験,昭和52年には北農試においてすす紋病およびごま葉枯病抵抗性検定試験に供試した。
 また,昭和50年以降,北農試畑作部において成分分析を行うと共に実際にサイレージを調製,消化試験を行ってきた。さらに昭和52年には草地試験場で成分々析を行った。

5.特  性
(1)発芽および初期生育:
 「ヘイゲンワセ」よりもすぐれ,特に不良条件下(低温)でまさる。
(2)茎葉の特性と耐倒伏性:
 「ヘイゲンワセ」より稈は高いが,着雌穂高低く,稈が太く,耐倒伏性がすぐれ,ほとんど倒れることはない。また,葉身が長大で,個体全体の草勢が極めて旺盛で,茎葉収量は「ヘイゲンワセ」をかなり上廻る。
(3)熟期と収穫時熟度:
 絹糸抽出期は「ヘイゲンワセ」より2日内外晩いが,対象地域では初霜前に黄熟期に達し,高品質のサイレージ原料が得られる。
(4)収量性,雌穂および粒:
 子実収量は「ヘイゲンワセ」並みであるが,茎葉収量の多いことにより,生草収量,乾物収量,TDNは10%内外多収となる。雌穂及び粒の諸形質は「ヘイゲンワセ」並みであるが,フリント種がやや強く表われている。
(5)耐病性:
 すす紋病およびごま葉枯病について,「ヘイゲンワセ」の「弱」および「中」に対し,各々「中」および「強」で強い。
(6)サイレージ特性:
 サイレージとしての栄養価,品質は「ヘイゲンワセ」並みで,乾物中TDNが70%前後の高品質サイレージがえられる。
(7)採種性:
 同時播種が可能で,種子親:花粉親の畦比は4:1で良い。採種量は450㎏/10aが見込まれる。種子親がフリント種であるので,雌穂の乾燥が容易で,乾燥経費が節減できる。

6.試験成績(対象地域)
形質 品種
鹿



















(月日)
道S1 - 5.24 6.4 - 6.1 5.25 5.31 6.1 5.31 6.10 6.7 6.6 6.6 6.1
ヘイ - 24 4 - 4 25 6.3 2 6.1 11 6 7 11 1

道S1 - ヤ良 ヤ良 ヤ良 ヤ良 ヤ良
ヘイ - ヤ良 ヤ否 ヤ良
初期*
乾物重
道S1 2.5 0.28 - 1.0 - 良1.5 4.5
ヘイ 2.3 0.28 - 0.8 ヤ良 - 1.0 ヤ良 3.0 ヤ良



道S1 糊黄
ヘイ


(%)
道S1 0 0 0 4 0 21 0 0 0 1 19 0 0 0
ヘイ 23 28 0 14 0 32 0 0 2 1 13 0 0 0
稈長







(%)
106 101 107 102 102 109 113 93 101 105 102 99 102 106
着雌高 93 81 92 86 92 90 124 77 85 96 92 89 76 84
稈径 111 114 - 108 - 108 - - 108 - - - 108 -
生総重 125 121 105 116 96 124 113 86 112 98 89 108 90 107
乾総重 117 121 103 112 100 106 123 104 112 103 102 104 99 116
TDN 117 116 103 110 100 104 120 105 111 103 102 100 98 116
乾物率
(%)
道S1 29 30 24 26 23 33 31 26 26 23 27 28 19 37
ヘイ 31 31 25 27 22 37 29 22 29 22 24 29 17 34
乾物中
TDN
(%)
道S1 74 72 71 73 71 73 70 73 72 70 71 71 71 77
ヘイ 74 75 72 74 71 75 72 72 73 70 71 74 71 78
 1.*;g/pL
 2.飼料成分は「ヘイゲンワセ」とほとんど差がない。

品種・系統 すす紋病抵抗性
(岩手農試,北農試)
ごま葉枯病
(北農試)
道交S1号 中 , 中
ヘイゲンワセ 弱 , 弱

7.配付しうる種子量
 自殖系統;6〜169kg,単交配;88〜143kg,複交配;1,310kg

8.採用予定県  北 海 道

9.栽培適地及ぴ普及見込面積  道東,道北,道央北部
                      10,000ha

10.栽培上の注意
 強稈で耐倒伏性が強いので,密植栽培によっても倒伏はほとんど発生しないが,無効雌穂着生個体が発生するので極端な密植はさける必要がある。道東道北の条件の良い中央部ないし内陸部では7,000本/10a内外,山ろく沿海地帯では5,000本内外が適当である。