【指導参考事項】
                                      イチゴ作型・栽培一般 道南農試
          施設野菜の周年栽培体系確立試験
            イチゴの短日育苗夏秋どり栽培試験
            (1)短日処理法および苗の種類
 期  間 昭和49年〜53年
 予算区分 道 単
 協力・分担 な し

1 担  当 園芸科 今野寛・高橋総夫

2 目  的
 本道の夏期冷涼な気候特色を活用し、短日処理によって強制花成をうながし端境期の夏〜秋どり作型を設定する。

3 試験方法
 1 短日処理法
  1m巾の苗床においてシルバーポリトウ(3層フィルム)をトンネル方式に被覆し、それぞれの日長時間にあわせて開閉した。いづれの試験も被覆中はトンネル内昇温防止のため、小型換気扇を用いた。短日処理における明期時刻は49年は7時〜15時半の8.5時間日長としたが被覆直後のトンネル内温度が高温経過になることから50年以降は9時〜17時の8時間日長とした。
 トンネル内風速は0.3m/秒であり、照度(東芝5型照度計)は104,000ルックス時においてフィルム厚さ0.05㎜は苗の部分で4ルックスであり、0.07㎜は反応しない状態であった。49年は0.05㎜を供試したが50年以降は0.07㎜を用いた。
 2 苗の種類
・子株= 本道ではランナー発生が遅く、ろ地では7月下旬〜8月上旬の採苗となり短日
処理時期が遅い。なお親株をハウスやトンネル等の高温管理でランナー発生を
促進すると20日程度の前進となり10月中旬以降の収穫用として利用する。
・多年株= ろ地収穫終了後の多年株を用いる場合は7月中旬以降の短日処理時期となり10
月下旬以降の収穫用として利用するが、半促成収穫終了後の株を用いる場合は
6月中旬以降の短日処理となり、9月中旬以降の収穫用として利用する。
・越冬子株(仮称)= 7月下旬〜8月上旬の一般採苗時に小さくて利用できない苗や遅く
発生してくるランナーを親株床に残しておき、、9月中旬〜下旬に2
〜4葉になった子株を苗床(短日処理予定床)に移植し、越冬させ、
春に1本〜2本出現する花房を摘除し、苗として利用するが、短日
処理時期が早くから実施できるので8月上旬以降の収穫用として利用する。

4 結果および考察
 以上大別すると3種類の苗形態があり、利用法の概略は表に示した。同じ種類の苗でも短日処理時期によって収量は変動するが、従来良品質品種で生産できなかった夏〜秋の生産が可能となり、これらの作型にろ地、無加温半促成、加温半促成などの作型を組合せると厳寒期の1〜2月を除きほとんど周年的な経済栽培体系が確立する。
                                                          (なお1部は試験反覆中)

5 主要なデーター
目標
収穫始
(月・旬)
利用苗
の種類
短日処理
開始時期
(目安月・日)
栽培型 目標
収量
(kg/a)
平均
1果重
(g)
苗素質および留意事項
8.上 越冬子株 (5.10) ろ地 (90) (6) ○越冬子株
 苗素質=9月中〜下旬 2葉卜4葉苗
 苗床密度=44本/㎡(苗が小さい場合や短日処理計画時期が
       早い場合は適宜密植する)
 苗床肥料=施肥基準による
 追肥=融雪直後N0.5kg/a施用
 管理=短日処理前に花房は摘除
○多年株(A=半促成収穫終了株.B=ろ地収穫終了株
 苗素質=収穫終了時に3芽とし1芽当4葉に摘葉
 苗床肥料=N無施用、その他は施肥基準による
 苗床密度=44本/㎡程度
○子株(A=トンネル等で促進採苗、B=普通採苗)
 苗素質=展開葉 3葉以上
 苗床肥料=N無施用、その他は施肥基準による
 苗床密度=80本/㎡程度の密植
(本ぽ栽植方法)、
 高畦100㎝/2条×株間25㎝千鳥=800株/a栽植。
 (畦高25cm、上面巾30㎝、底面巾70㎝、通路30㎝)
8.中 越冬子株 5.20 ろ地 90 6
9.上 越冬子株 6.5 ろ地 100 6
9.中 越冬子株 6.14 ろ地 100 6〜7
多年株(A) 6.14 (7)
9.下 越冬子株 6.20 ろ地〜ハウス 100〜130 7
多年株(A) 6.20 7〜8
10.中 多年株(A) 7.7 ハウス 90 (10)
子株(A) 7.7 80 10〜14
10.下 多年株
(A〜B)
7.16 ハウス
収穫後期加温
50 11〜19
子株(A) 7.19 40 16〜20
11以降 多年株(A) 8.1 ハウス
収穫後期加温
40 13〜15
子株(A) 8.1 20〜22

6 今後の問題点
 ①高遮光性、強耐候性で且つ作業容易な遮光資材の検索
 ②短日処理法の省力化