【指導参考事項】
                         イチゴ 作型・栽培一般
                         道南農試
 施設野菜の周年栽培体系確立試験
 イチゴの短日育苗夏秋どり栽培試験
   (2)子株に関する試険

期 間  昭和49年〜52年
予算区分 道単
協力 土壌肥料科

1.担  当  園芸料今野寛・高橋総夫

2.目  的  (1)のとおり

3.試験方法
 1.短日処理法(1)に準ずる。
 2.試験区別
  A、日長時間と花成効果(50年) 日長6時間・8時間×処理日数21日・28日
    (宝交早生4葉苗 処理時期 8月1日 苗床N無施用)
  B、品種の花成感応(49年〜50年)

  49年=紅鶴、堀田ワンダー、はるのか、406(兵庫)
     ヒミコ、盛岡16号、宝交早生
  処理日数
×14日・21日×8.5
日長時間
・自然日長
  50年=406(兵庫)、ダナー、宝交早生×処理日数21・28日×8時間日長・自然日長
  (各4葉苗 処理時期は49年8月5日 50年8月1日 苗床N無施用)

C、苗床N量と短日花成効果(49年〜51年)

  49年= N施用量(㎏/a) 1.5・0.75・0× 処理日数 14日・21日×1年株・2年株
  50年= 1.0・0.5・0× 21日・28日×1年株・2年株
  51年= 硝加5.0・0.3・硝安0.3・0・無肥料× 〃 21日・28日-1年株
  (宝交早生4葉苗 処理時期49年7月16日と8月5日 50年8月1日 51年7月19日)

D、苗の大きさと苗床栽植密度(50年〜52年)

  50年= 3葉・ 4葉・ 5葉×密度 15×15 ×処理日数 21日・ 28日
  51年=  〃× 15×15・×10×7.5 ×
  52年=  〃×  〃 〃  〃 〃 ×
(宝交早生 処理時期50年8月1日 51年〜52年7月7日 苗床N無施用)

4.結果および考察
 A、日長時間と花成効果
 6時間と8時間における出蕾株率は21日処理では同程度であるが28日処理では8時間区が高率となり、又その出蕾速度も明らかに速い。1株当の収穫果数には時期的な面があり一定の傾向はみられないが、着果数は6時間区や28日処理など短日条件の強いものほど少なくたる傾向がみられた。収量は6時間区が花成感応が弱いことや出蕾速度が遅いことから時期的に収穫株率が低くなり減収した。6時間区は短日時間が多くなるが`そのほとんどが花成に弱い〜花成不能と考えられる24℃〜32℃の範囲であり、花成有効時間の増加要因よりも同化能率の低下要因が大きく影響しているものと措定された。短日処理時期が8月の高温時においては6時間日長は不適当と考えられる。
 B、品種の花成感応
 品種間に大きな差異がみられ、「紅鶴」「堀田ワンダー」「はるのか」など花成の限界温度が比較的高温に属する浅休眠性グループ間でも短日花成に大きな差ががみられる。
 花成が比較的容易であり、収量性、品質がすぐれている「ヒミコ」「宝交早生」かこの作型に適していると考えられる。なお「盛岡16号」は耐病性(Alternaria属菌による病害)において他の品種より弱いが、品質はもっともすぐれており、夏どり用品種として検討の余地かある。
 C、苗床N量と短日花成効果
 14日処理や高温年での21日処理ではN量による効果は判然としないが、28日処理および低温年の21日処理ではN無施用区の出蕾株率が高率となり、又出蕾速度も早くなっている。苗のN含有率と出蕾株率には負の相関がみられN吸収の少ない区ほど出蕾株率は高い。収量は収穫期間が短かいため低水準であるが、概ね出蕾株率同様の傾向であり、N施用量の少ない区ほど早期、全期収量とも高収であった。子株を移植する際め苗床(短日処理床)においてはN施用は花成に負の要因であり、処理日数が28日以内ではN無施用で良く、又なるべくN含有量の少ない土壌(やせ土、心土)を用いると良いと考えられる。
 D、苗の大きさと苗床栽植密度
 出蕾株率は花成環境が弱い(短期間処理・高温経過)場合に苗の大きさによる差がなくなり3葉苗が劣るが、強い場合には僅差であった。収量は51年度芽えそ症状の株が多く(特に大苗に多い)検討不可能となった。50年・52年は低水準であるか、苗の大きさや苗床密度による収量効果は僅差であり統計的に有意差はみられず、又これらの交互作用もみられなかった。出蕾株率、出蕾速度から4葉苗が能率的であるが、展開葉1枚の増加に10日程度要することから処理時期が遅れ、結果的に収穫期間が短かく低収にならさるを得ないことと、3葉苗でも28日処理によって4葉苗と大差ないことから実用的苗大として展開葉3葉苗以上で良いと考えられる。苗床密度では密植による悪影響がみられず、又苗床資材や処理労力の軽減など利点があり80本/㎡の程度の密植が良いと考えられる。

5.主要な試験データー
  花成 品質 収量
耐病
総合
紅鶴 × × ×    
堀田ワンダー ×    
はるのか ×    
406(兵庫)    
ヒミコ  
盛岡16号 ×  
ダナー    
宝交早生  

A試験 短日処理における日長時間と花成効果
B試験 品種の花成感応
C試験 苗床N量と短日花成効果
D試験 苗の大きさと苗床栽植密度

6.今後の問題点