【指導参考事項】
1.課題の分類  5-(1) 麦類・乾燥
2.研究課題名  種子小麦生産施設機械に関する試験
           (2)乾燥施設の性能と乾燥基礎試験
3.期  間  昭52(52〜55)
4.担  当  北農試畑作部
5.予算区分  −
6.協力分担  十勝農試・帯広畜産大学

7.目  的
 種用小麦の生産は従来まで手刈り-自然乾燥-小型脱穀機の手段で行われていたが、近年の麦作面積の増加に伴い合理的な大型機械化体系の確立が急務である。大型コンバインによる収穫および施設乾燥調製法について検討するため、施設の乾燥機の性能と乾燥に必要な基礎データを得る。

8.試験研究方法
1)試験期日 昭和52年8月1日〜8月30日
2)試験場所 芽室町および北農試畑作部
3)供試材料 コンバイン収穫小麦 品種 ホロシリ
4)供試機械 循環形穀物乾燥機(シヅオカSAC32HZ,容量3.1ton
環境試験器(タバイ PL3A、風速3m/s)
5)調査項目 含水率、乾燥各部の温度、発芽勢(20℃、3日間)発芽率
(20℃、7日間)、TZ値、脂肪酸度

9.結果の概要・要約
 1)施設の乾燥機による仕上がり水分までの連続乾燥試験では、バーナ設定温度50、60、70℃に対して実際に乾燥部へ入る温度は7〜10℃低下しており、12cmと厚層で風量比も小さいため排風温度は16〜30℃低下した。このためタンク内穀温は35℃以下、平均乾燥温度は0.5〜0.9%/hrとなり、発芽率などの品質低下はなかった。(第1表)
 2)収穫適期が短く、高水分であるため施設では18%水分まで予備乾燥し一時貯留後仕上げ乾燥を行っている。予備乾燥では搬入水分のむらが大きく、乾燥時間を平均16hr要しており、増風量、昇温などによる短縮が望まれる。設定温度62〜64℃では、予乾で0.7%/hr、仕上げ乾で0.5%/hrなり発芽率など品質上の問題はなかった(第2表)。
 3)通風式恒湿器による高温処理では、発芽勢は50℃100分でも低下しないが、70℃20分以上では低下した。高温ほど速度が速く、高水分時など速度がわずかに大きい(第1図)。
 4)発芽勢(S)は発芽率(R)と相関高く(R=63.4+0.36S r=0.62mm)、感度が高いため乾燥途中の品質判定指標となる。0.25%TTC液によるTZ値は、25℃24hr処理が発芽勢と、48hr処理は発芽率とそれぞれ相関高く対応する。電気抵抗式水分計(K)では20%以上の高水分段階で炉乾法(D)よりかなり低い値となるので注意を要する(K=-16.4+1.72D,r=0.97**)。

10.主要成果の具体的データ

 第1表 連続乾燥試験結果(しづおか)
収穫時期 8月3日 8月11日
熱風温度(℃) 44 52 60 44 50 59
排風温度(℃) 28 30 31 26 26 30
乾燥穀温(℃) 30 34 38 32 34 35
タンク内穀温(℃) 30 32 34 30 28 35
乾燥前含水率(%) 36.4 26.5 32.1 29.9 29.9 29.9
乾燥後含水率(%) 13.5 15.7 13.1 14.6 14.6 14.5
乾燥時間(hr) 41 20 20 25 21 17
毎時乾減率(%/hr) 0.56 0.53 0.94 0.57 0.68 0.86
発芽勢(%) 82 59 72 74 65 66
発芽率(%) 89 94 87 88 83 82
発芽勢(%) 67 33 51 53 70 45
発芽率(%) 80 87 90 81 84 89

 第2表 施設での運転結果(シヅオカ)
  予乾 仕上乾
熱風温度(℃)   53 48
排風温度(℃)   26 26
乾燥穀温(℃)   30.6 26
タンク穀温(℃)   27 29
乾前水分(%) 29.7(34〜27) 30.0(40〜24) 17.4(20〜15)
乾後水分(%)   18.4(22〜15) 13.2(14〜13)
乾燥時間(hr)   16.1(32〜7) 8.5(14〜3)
毎時乾減率(%/hr)   0.74(1.5〜0.3) 0.54(1.2〜0.3)
発芽勢(%) 67(72〜61) 59(81〜25) 55(75〜30)
発芽率(%) 86(96〜78) 83(94〜71) 83(93〜71)

11.今後の問題点
 予備乾燥での高能率化、許容乾燥速度の上下限、収穫換傷程度と品質

12.次年度の計画  上記の点について検討予定