【指導参考事項】
1. 課題の分類  農業気象
2. 研究課題名  防風施設の冷害気象改善効果
3. 期 間  (昭和52〜 55)
4. 担 当  農業気象研究室  泊 功・藤原 忠・石黒 忠之
5. 予算区分  別枠
6. 協力分担  空知支庁・南西地区農業改良普及所・長沼町農協・長沼町役場

7. 目 的
 水田における防風施設の気象改善効果についてはこれまでほとんど研究がない。本研究においてはとくに防風林、防風網の減風効果と水温上昇程度を明らかにし、その根拠を究明し、冷害時の水稲の被害軽減技術の確立を図る。さらに、前期の研究において、水温上昇のメカニズムを究明し、一段と効果の高い防風施設の開発を行い、冷害軽減の効果を高める。

8. 試験研究方法
 防風林:長沼町の水田地帯に試験地を選び、防風林の風下170mの間に高さ4mのポ−ル3本をたて、それぞれのポ−ルでは3ヶ所で風速、気温、湿度測定を行った。また、純放射、水温の測定も6月から8月上旬の長期間行った。本年度は初年度であるため、水温上昇の効果を確認するため、解析を行った。防風網:防風林に隣接して防風網(高さ2m)を張り、風下に風速、気温、水温、日射計等を配置し、防風林と同様長期間の観測を行い、水稲生育、収量との関係をみた。

9. 結果の概要・要約
 防風林の効果:6月上旬の田植直後からの観測が理想であったが、15日から観測に移った。7月中旬まで風速も大きく、気温は13〜14℃の低温(15〜25日)に推移した。しかし、防風林の減風効果の及ぶ範囲の水温は図1に示したように4〜5℃も高い日があり、夜間も1℃前後高く推移している。13m高の防風林の風化170mまでその効果が及んでる。しかし、7月中旬以降、水稲の分けつ増加、風速の減少等で水温上昇効果は次第にうすれ、8月上旬には効果がほとんど認められなくなった。これ等効果と水稲の生育は関連性が高く、収量の増加が明らかに期待できることが生育調査でわかった。
 防風網の効果:観測期間は防風林とほぼ同析である。図2に示したように水温上昇効果は10m風下が高く、日中、6〜7℃も高くなった。その効果は減風効果と関係が高く、その及ぼす範囲は防風網の高さの30倍以上に達し、効果の大きいことが明らかとなった。これとは別にガイドベンを3枚もつ防風しようについても上向風向による減風効果の試験を行った。

10. 主要成果の具体的数字


図1. 防風林の減風効果と水温の変化(6月22日はれ)


 図2. 防風網の減風効果の減風効果と水温の変化

11. 今後の問題点
  本年度の研究により、防風施設の水温上昇効果が確認されたので、今後、メカニズムを究明して行く必要がある。又、減風効果が水稲生育、収量に及ぼす影響を究明し、とくに、生育期間中の体温、蒸散等と減風効果との関係を知る必要がある。

12. 次年度の計画(成果の取扱)
  次年度は田植え直後から観測を開始し、田植え直後の効果えお明らかにするとともに本年度の成果を再確認する。又、本年度行った熱収支の解析を一段と精密に正確に行う。モデル実験として、ガイドベン型防風しようの形を決定し、予備試験を行う。