【指導参考事項】
牛 家畜衛生
窒素多肥草による家畜の硝酸塩中毒に関する試験
−硝酸塩中毒の検討−
期  間 昭和49〜51年
担  当 滝川衛生科・草地科,新得衛生科
予算区分 道単
協力関係

目  的
窒素多肥草地における放牧家畜の生理障害を特に硝酸塩中毒について検討し、障害防除の対策資料を得る。

試験研究方法
 1.硝酸塩投与による羊の急性硝酸塩中毒試験
 2.乳牛への高硝酸塩含有乾草および亜硝酸塩添加飼料の給与試験
 3.窒素多肥草地における羊の放牧試験
 4.羊による硝酸塩中毒発症誘因の検討

結果の要約
 1.羊での急性硝酸塩中毒のLD50は硝酸態窒素(N03-N)として,200〜300㎎/kgの範囲内にあり,メトヘモグロビン(M-Hb)が最高値を示す時間は投与量の多いものほど遅くなる傾向にあった。
 2.乳牛に高硝酸塩含有乾草および亜硝酸塩添加飼料を長期間給与したところ,急性硝酸塩中毒および慢性硝酸塩中毒として考えられる肝臓と甲状腺の機能障害,増体の抑制・乳量の低下などはみられなかった。
 3.羊を窒素多肥草地に放牧したところ,急性硝酸塩中毒および慢性硝酸塩中毒として考えられる肝機能障害,増体の抑制などはみられなかった。
 4.羊のルーメンの状態を変化させて,硝酸塩および高硝酸塩含有乾草を投与した結果は次の通りであった。
 イ.配合飼料の多給はM-Hb形成をおさえる傾向にあった。
 ロ.配合飼料への尿素添加は1〜3%ではM-Hb形成をおさえ,8%では逆にその形成を促進する傾向にあった。
 ハ.抗生物質(クロールテトラサイクリン)の経口投与は2.22〜6.66㎎/kgではM-Hb形成を促進し,11.1㎎/kgでは逆にその形成をおさえる傾向にあった。
 二.絶食したのちに窒素多肥牧草を給与したところ,M-Hbの上昇がみられる場合もあった。

主要成果の具体的数字

 1.乳牛への高硝酸塩含有乾燥(乾物中0.41%)の給与試験

 2.窒素多肥牧草地における羊の放牧試験

今後の問題点
 1.硝酸塩中毒発症にはルーメン性状が大きく関与していることは明らかであり,さらに追究すべきである。
 2.多肥が牧草中のミネラルに及ぼす影響およびその牧草を摂取した家畜でのミネラルの吸収,排泄,利用について明らかにする必要がある。

指導参考上の注意事項
 1.窒素多肥によって硝酸塩中毒は起こりにくいものと考えられるが、窒素多肥に加里多肥が加わった場合の障害、起立不能症候群、グラステタニ−等のミネラル代謝障害については十分注意する必要がある。