【指導参考事項】
1 課題の分類 畜産 牛 飼養
2 研究課題名 哺育技術の開発
 イ. 初乳の貯蔵と利用
3 期間: 昭和51年〜54年
4 経費の区分: 別粋、経常
5 担当: 北農試畜産部家畜第1研究室
6 協力関係: 

7 目的
 乳牛の初乳期間に生産される初乳の量は、その産子が利用するに余るものがあり、余分の初乳は廃棄されているのが現状である。この初乳を有効に利用するため初乳の長期保存法について検討するとともに子牛に対する給与方法を開発し、哺育径費の大巾な節減をはかる。

8 方法
 分娩後5日間の新鮮初乳を採取し、室温下で自然発酵させ酸化乳を作成した。貯蔵容器は灯油用のポリ製容器(18L容)及びポリ製ごみバケツ(90L容)を用い、1日1回かくはんを行った。貯蔵後、経時的に、におい、味、pH、酸度、遊離脂肪酸(FFA)、非蛋白態窒素(NPN)及び物理的性状の変化を調べた。これと並行して、温度と発酵初乳の品質との関係を明らかにするため、0℃、15℃、25℃の恒温下で性状の変化について調べた。
 以上の様にして作成した発酵初乳を子牛(延べ29頭)に実際給与し、嗜好性及び下痢の発生等の健康状態について観察を行った。
 夏期高温時の貯蔵方法を検討するため、52年7月上、中旬に初乳を採取し、これに乳酸蟻酸、プロピオン酸を1%及び0.5%それぞれ添加し、酸化乳を作成し、室温で56日間貯蔵し、自然発酵初乳との比較を行った。

9 結果の概要
 自然発酵初乳の品質は外部の温度の影響を強く受けるが、酸化乳の生成には15℃前後が適しており、良質のものが、得られた。0℃では発酵が著しく遅延し、充分なカードの形成は認められなかった。しかし、FFA、NPNも著しい上昇を示さず、長期間の保存が可能であった。25℃では、発酵が急速に進み、FFA、NPNも高くなり、不快臭の発生、乳清の分離が促進し、保存期間は著しく短縮した。
 発酵初乳の摂取拒否は、供試頭数29頭中3頭あったが、代用乳の摂取拒否は認られなかった。下痢は発酵初乳区で29頭中8頭、延べ13日間の軽症のものが発生した。これに対し、代用乳区では13頭中8頭、延べ23日間の下痢が発生した。なお、発酵乳区の摂取拒否及び下痢はすべて夏期間の高温時に集中した。
 夏期高温時に有機酸の添加を行うと、蛋白及び脂肪の変成が著しく抑制され、良質の酸化乳が作成出来、保存期間も著しく伸びた。

10 主要成果の具体的数字

表1 自然発酵及ぴ有機酸添加による酸性初乳の性状の経時的変化
  処  理 貯 蔵 日 数
0 14 28 42 56






%
自然発酵 6 6.2 8.8 9.7 12.8 15.6
乳酸添加1% 2 6.1 6.6 6.5 7.3 10.3
蟻酸添加1% 2 6.2 6.5 6.7 7.1 7.4
ブロピオン酸添加1% 2 6.2 6.5 6.8 7.4 8.0
F
F
A
自然発酵 6 7.7 95.3 167.5 215.0 257.9
乳酸添加1% 2 12.0 21.0 22.0 30.0 32.3
蟻酸添加1% 2 33.7 40.3 46.8 45.0 51.8
ブロピオン酸添加1% 2 74.1 74.8 73.6 75.9 74.4
  注 FFAの単位は100gの脂肪を中和するに要した1Nアルカリのml数

表2 下痢と哺乳拒否の発生状況
処 理 供試頭数 下 痢 哺乳拒否
発生頭数 子牛一頭当り
平均日数
発生頭数 子牛一頭当り
平均日数
発酵初乳 29 8 0.45 3 0.43
代用乳 13 8 1.77 0 0

11 今後の問題点

12 次年度の計画
 1 貯蔵中のビタミン活性の失活の程度を明らかにする。