【普及奨励事項】
 オーチャードグラス適品種選定に関する試験成績
  −とくにケイについて−
 (昭和48年〜52年)
                                                農林省北海道農業試験場
                                                 草地開発第二部牧草第二研究室
                                                道立中央農試,同天北農試,同根釧農試,
                                                 同滝川畜試,同新得畜試

1.試験目的と経過
 北方寒地型放牧用適草種品種選定として昭和48〜52年の5ケ年にわたって連絡試験が行われたが,その結果越冬性において良好な成績を示したオーチャードグラスの品種ケイ(カナダ育成品種)の試験結果を,同時に行われた北海道農試の試験結果とあわせて報告する。

2.ケイの特性概要
(1)出穂始は札幌においてキタミドリより9〜10日おそいやや晩生ないしは晩生品種である。
(2)葉長・葉幅,茎の太さともに大きく,穂揃期の稈長はキタミドリより大きく直立型を示す。穂数はキタミドリ並びに多くの葉色はキタミドリよりはうすい。
(3)雲型病,条葉枯病等の葉枯性病害に対する抵抗性については,キタミドリとの差は明らかでない。雪腐大粒菌核病および雪腐黒色小粒菌核病に対してはキタミドリより明らかに強い抵抗性を示す。
(4)茎葉収量は春から初夏までは高いが夏以後の生育は急速に衰え,年間合計収量はキタミドリの90%前後となるのが普通である。ただし,冬枯激甚年には比較的多収を保つ,品質はキタミドリと大差ない。

3.適品種選定試験の概要
(1)北方寒地型放牧適草種品種選定試験:試験場所は上記の道立5場所,供試6品種(根釧農試は13品種),1区面積7.2〜20.0㎡,3〜4反復,滝川はめん羊,新得は肉用牛による放牧,その他は年4〜7回の刈取りによった。
(2)北海道農試における試験:昭和50〜52年にわたって16品種と供試して個体植(1区18個体),採種性検定(1区9㎡),茎葉生産性検定(1区3㎡),いずれも4反復の試験が,また,48年8月末播種(1区40個体3反復)で越冬性検定試験が行われた。
(3)試験成績の概要:道立5場所における収量を表1に,その他の特性に北農試成績を含めて表2に示す。

表1 茎葉収量(北方寒地型)
  数年間合計収量① 刈取期別風乾収量(K%)
 

滝②
新③

根釧(S50年)
(期 間) 48〜52 48〜52 49〜52 49〜52 49〜52 1番 2番 3番 4番 合計 同比
キタミドリ 295 204 1,638 1,408 288 3.8 5.9 11.3 16.4 37.4 100
ケイ 90 93 82 89 92 6.0 8.5 12.2 13.4 40.1 107
ドリーゼ 94 91 94 94 89 6.4 6.0 11.5 16.8 40.6 109
テンダーバイト 93 70 94 94 86 2.0 4.8 8.7 16.8 32.3 86
マスハーディ - 92 - - - 6.8 6.5 9.6 14.9 37.7 101
注①キタミドリは実収,その他の品種は対キタミドリ100分比で示す。②,③以外は風乾kg/a。
 ②滝川は各放牧前現存量を草量計より生草重kg/aに換算合計。
 ③新得は放牧前現存量の草量計示度そのままの合計。

表2 その他の特性
  根釧農試 北海道農試
  越冬状態 秋草勢 裸地率 ホイール・フィールド 個休植
出穂始
採種量 風乾
収量
越冬
個体率
50年 51年 51年 51年 雪腐病 出穂始
キタミドリ 4.5 2.2 3.4 10 3.0 29.7 26.4 8.8 169 89
ヘイキング         2.3 33.7        
フロンティア         1.7 31.7        84
アオナミ 1.0 1.7 4.9 0 3.7 30.0 30.3 4.9 171 57
ケイ 3.9 2.5 3.4 28 1.7 33.3 35.9 8.1 155 89
ドリーゼ                   82
フロード         2.7 32.7 32.2 7.1 168 81
マスハーディ 4.0 2.0 4.0 5 2.7 35.3        
調査基準 良1  0
〜〜 〜
否5  5
1

5


%
50年
徴 1
甚 5
50年
5月の
52年
5月の
51年
kg/a
3年間
合計
kg/a
49年
%

4.奨励態度
 越冬性はすぐれるが,収量は春から初夏に偏り,その後の生育は急速に衰えて年間収量は通常低いから,冬枯れ激甚地以外では利点が少ない。道東地方のやや晩〜晩生品種として普及することがのぞましいと考えられる。オカミドリ,ヘイキング等の晩生品種との優劣,使いわけについては今後さらに検討を要する。