【指導参考事項】
1.課題の分類  野菜育苗 土壌肥料 道立中央農試
2.研究課題名  土壌改良材「ハイフミン」の野菜育苗用床土に対する施用効果
3.期  間   昭和52年〜53年
4.担  当   中央農試化学部土壌肥料第1科
          道農務部農業改良課
5.予算区分  道費 (受託)
6.協力分担  な し

7.目 的
   野菜育苗用速成床土造成の混合資材としての「ハイフミン」の効果を検討する。

8.試験方法
中央農試  供試作物及び試験規模:トマト1区60鉢、メロン1区35鉢、800mLポリポット
        供試土壌(混合基土):細粒質褐色低地土(Lic)
        試験区別:原土区、ハイフミン20%(容量比)区、同40%区、原土+ピートモス50%区、火山性土+ピートモス50%区、火山性土区、他に参考区として農家床土(トマト27点、メロン10点)速成・市販床土を使用。
        施肥量(㎎/4):N 240、P2O5・600、K2O 240、酸性矯正は苦土石灰4.6g/Lを使用。
普及所現地試験  有珠地区(トマト、キュウリ)、渡島中部地区(トマト)、富良野地区(スイカ)
    供試土壌(混合薬土):水田土壌(有珠・渡島中部)、畑土壌(富良野)
    試験区別:慣行床土区、ハイフミン20%区、同30%区、40%区、60%区
    施肥量(㎎/L):N 200、P2O5・500、K2O 200(一部慣行床土は無肥料)
供試ハイフミンの特性:草質泥炭質のアルカリ抽出・りん酸中和物(フモエキス)を泥炭質に吸着混合させ、苦土石灰で中和させた細せん維状物(容積重50g/L)PH6.4、EC1.06

9.結果の概要・要約
 中央農試温室内で慣行床土、速成床土と対比して、沖積埴壌土を基材とするハイフミン混合床土について育苗試験を2ヶ年行った結果は次のとおりである。
 (1)トマト育苗(60〜70日苗)においては、ハイフミン20%区の生育は慣行床土や他の速成床土より旺盛で、がっしりした老化大苗となった。しかし塩基養分の規制などにより生育を抑え、ある程度老化防止が可能であった。
 (2)ハイフミン40%区のトマト苗生育は、標準施肥ではEC上昇のため初期生育が抑えられたが老化の少ないがっしりした小苗で長期育苗に適していた。また塩基養分の規制により初期生育抑制を回避し得たが、生育が旺盛な大苗となった。
 (3)メロン育苗(35日苗)においては、ハイフミン混合床土は粗孔隙が少なく、混合比を高めるとECが上昇して生育を抑制した。細粒質沖積土を基材とする速成床土造成には、通気性を重視する野菜に対してハイフミン混合は問題があり、基土の粒径組成を検討する要がある。
 (4)以上の結果、細粒質沖積土に対するハイフミン混合は、あまり通気性を求めないトマト・ナスような中・長期育苗に適しており、用途により配合比を考慮すべきであると考えられる。
 普及所実施現地試験(農家ハウス内育苗)の結果、各地とも慣行床土と同等以上の良苗を得たが
 (1)原土に対するハイフミン混合比は、中期育苗トマト及びキュウリ(有珠)では20%では理学性改善が充分でなく30〜40%が好適で、短期育苗トマト(渡島中部)では混合比増大によるEC上昇があり20%が良かった。
 (2)スイカ育苗(富良野)では20%混合のみであるが、ピートモス30%混合と同等以上である。
 (3)したがって、混合比は基土の性状や作物によって考慮する必要があるが、20〜40%の範囲で利用でき、基土によっては通気性を重視するウリ類にも適用できると考えられた。

10.主要成果の具体的数字
 第1表  トマト苗の生育および苗素質
試 験 区 分 52年 52年・70日苗 53年69日苗
60日
G・1
G・Ⅰ
×103
黄化葉
%
花芽数
乾物重
g/株
葉/茎
茎葉/草丈 平均節間長
G・Ⅰ
×103
乾物重
g/株
葉/茎
原 土 区 825 1.43 16.8 3.3 4.58 2.27 0.174 2.80 1.59 4.25 2.92
ハイフミン20区 1301 2.18 13.6 5.9 7.63 2.32 0.216 3.43 1.64 4.49 3.48
ハイフミン40区 730 1.54 4.9 5.2 4.83 3.19 0.172 2.94 1.86 5.13 3.01
ピートモス50区 785 1.39 4.0 6.0 5.72 3.53 0.219 2.61 1.34 4.26 3.90
火山灰ピートモス 960 1.78 1.0 5.5 5.86 3.37 0.206 2.80 1.91 6.86 2.71
慣行床土 B 652 1.05 1.5 4.9 3.51 3.64 0.146 2.69 ハイフミン混合区は
53年苦土石灰を施用
せずカリも半量施用
慣行床土 C 896 1.52 7.2 5.5 4.85 2.87 0.183 2.73
慣行床土 D 1101 1.59 36.2 4.7 5.22 2.03 0.187 2.96

 第2表 床土の理化学性 (52年度)
試 験 区 分 孔隙分布 % 鉢上げ時の化学性 育苗中(鉢上げ20日目)
全孔隙 粗孔隙 有効水孔隙 pH EC
ミリモー
無機N
有効P
CEC
m・e
pH EC
ミリモー
無機N
原 土 区 50.9 9.5 20.9 6.05 1.255 37.38 23.5 17.91 5.93 1.205 15.08
ハイフミン20区 59.2 17.9 21.1 6.55 1.565 34.93 39.9 20.09 5.80 1.630 30.55
ハイフミン40区 64.9 26.1 19.9 6.65 2.434 36.45 59.7 27.01 5.92 2.295 22.86
ピートモス50区 68.2 27.6 21.8 5.90 2.120 35.45 19.8 25.20 5.02 1.880 20.84
火山灰ピートモス       5.95 1.670 35.00 7.1 13.09 5.60 1.000 12.00
慣行床土6点平均 65.1 31.6 19.3                

11.今後の問題点
 混合基材(原土)の理学性及び野菜の種類・育苗目的に対応した適正混合比の検討

12.成果の取扱い(指導上の注意事項)
 (1)ハイフミン混合によりECが高まるので、混合比を高めることは経済上ばかりでなく育苗管理や苗素質の面からも望ましくない。
 (2)細粒質土壌に対するハイフミン混合床土は、粗孔隙不足・EC上昇の面から短期育苗には不適であり、中・長期育苗向き(トマト・ナスなど)である。
 (3) しかし中粒質土壌に対するハイフミン混合床土は、ウリ類などの短期育苗にも利用できる。