【指導参考事項】
1.課題の分類  家畜管理
2.研究課題名  スラリばっ気機の利用に関する試験
3.期  間  昭和51年〜53年
4.担  当  十勝農試
5.予算区分
6.協力分担  北農試畑作部、帯畜大

7.目  的
 家畜のふん尿処理はスラリ方式に切換えられつつあり、スラリストアも53年3月現在、道内に約100基建設されるに至っている。スラリストアは貯溜槽であると同時に調製槽でもある。ばっ気腐熟処理してスラリを土地に還元することができる。スラリばっ気機の性能をあきらかにし利用技術体系を組立て、導入上の参考に供する。

8.試験研究方法
 1)試験月日  昭和51年5月〜昭和53年11月
 2)試験場所  道立十勝農試および士幌町
 3)供試機   (1)表面ばっ気機 エアロミキサ OBE340型(バウワ)
          (2)液中ばっ気機 デイフィーザM5型(斉藤工業)
 4)試験項目  (1)発酵過程における細菌相および各種成分の動態
          (2)所要動力  (3)混入空気量

9.結果の概要
 1)表面ばっ気機エアロミキサOBE340型
(1)基礎試験の供試材料は乳牛ふん尿を主体にして一部人間のふん尿も利用した。内容分析では表1、表3に示されるように約2週間でPH20〜25→8.0〜8.5、色 黄褐色→黒褐色〜茶褐色、臭 強→弱に変化し発酵している。
(2)発酵過程における細菌相および各種成分の動態は図1,2,3,4である。
(3)肥育牛ふん尿830tonスラリストアにおける内容分析は表2であり、基礎試験とほぼ同じ結果であり、効果を認めることができる。
(4)ばっ気機を利用することによりスカムは発生しない。また、全槽均一に撹拌され扱い易い状態になっている。エアロミキサの利用は発酵促進ばかりでなく、省力化の面からも有利である。
 2)液中ばっ気機 デイフィーザM5型
(1)基礎試験の供試材料は乳牛と人間ふん尿に厨芥を粉砕して加えた。内容分析の結果を表4に示した。表面ばっ気機とほぼ同じ発酵である。厨芥量を多くすると発酵は遅れる傾向にあるので空気量を多くする必要がある。
(2)液中ばっ気法は表面にしぶきをあげないので熱を奪われることは少ない。寒冷地のスラリストアには利用期間の延長をはかることができる。

10.主要成果の具体的数字

図-1 好気及び嫌気性細菌の消長


図-2 好気性細菌による呼吸


図-3 pHの変化


図-4 窒素化合物の消長

表-1 乳牛、人間スラリの分析内容 その1 ─実験ストア、表面ばっ気、昭和51年度─
要  項 処理月日 経過日数 PH 水分
(%)
有機物
(%)
灰分
(%)
(ppm)
T-N
(%)
(ppm)
NH3-N
(%)
NH3-N
T-N
(%)
P2O5
(%)
K2O
(%)
Na2O
(%)
CaO
(%)
MgO
(%)
投入量
(ton)
現在量
(ton)
散布量
(ton)
混合比(%)
スラリ:屎尿
累積 処理
第1回投入スラリ 6月28日 0 0   91.52 6.62 1.83 0.357 0.166 47 0.115 0.382 - 0.195 0.078 11.8 11.8    
混合 7月5日 7 7 7.44 91.12 6.99 1.88 0.355 0.149 42 0.108 0.433 0.046 0.210 0.077   10.5    
混合 7月13日 15 15 8.40 90.35 7.61 2.05 0.337 0.070 21 0.126 0.449 0.060 0.235 0.086    9.1      
混合 7月20日 22 22 8.35 88.87 8.68 2.99 0.341 0.057 17 0.171 0.548 0.069 0.264 0.103   7.8    
第2回散布 9月15日 85 17 8.32 93.70 4.36 1.94 0.197 0.0423 22 0.191 0.317 0.123 0.245 0.059   19.9 9.5 42.3:57.7
第1回追加スラリ 9月15日 85 0 7.00 93.60 4.89 1.51 0.249 0.137 55 0.110 0.283 0.044 0.174 0.060 9.2 (10.1)
19.6
     
混合 9月15日 85 0 7.60 93.42 4.83 1.75 0.296 0.095 32 0.155 0.299 0.079 0.206 0.060   19.6    
混合 9月21日 91 6 8.60 93.28 4.88 1.84 0.254 0.043 17 0.162 0.352 0.088 0.228 0.064   18.6    
混合 9月27日 97 12 8.70 92.95 5.06 1.99 0.242 0.021 9 0.168 0.349 0.095 0.261 0.079   17.9    
第3回散布 9月30日 100 15 8.10 93.08 4.96 1.95 0.249 0.023 9 0.172 0.361 0.096 0.228 0.071   17.4 8.3 69.4:30.6
第2回追加し尿 9月30日 100 0 7.00 94.50 3.75 1.74 0.382 0.209 55 0.223 0.348 0.172 0.160 0.074 ○ 8.0 (10.1)
16.1
   
混合 9月30日 100 0 7.1 93.53 4.42 1.86 0.308 0.116 38 0.194 0.381 0.142 0.198 0.072        
混合 10月5日 105 5 7.3 95.70 2.89 1.41 0.254 0.094 37 0.114 0.255 0.173 0.122 0.035        
混合 10月15日 115 15 7.6 95.20 3.20 1.59 0.240 0.084 35 0.169 0.286 0.175 0.143 0.056        

表2 830tonスラリストアにおけるスラリの分析内容 ─士幌肥育牛─
サンプ
ル日
経過
日数
PH 水分 灼損 灰分 T-N NH3
-N
P2O5 K2O Na2O CaO MgO SO4 CL
6/7   6.54 92.08 6.24 1.66 0.3465 0.1254 0.2336 0.1596 0.0286 0.0777 0.0676 0.0403  
6/20 13 7.23 95.50 3.46 1.03 0.3353 0.0965 0.2133 0.1621 0.0215 0.0778 0.0608 0.0192 0.0905
6/20   6.28 91.29 6.73 1.96 0.4505 0.1175 0.2837 0.1975 0.0372 0.0988 0.0852 0.0444 0.0868
7/11 9 6.96 93.97 4.86 1.16 0.3422 0.0922 0.3244 0.1356 0.0248 0.1457 0.0601 0.0125 0.0862
7/20   7.96 96.48 2.21 1.29 0.3181 0.1531 0.1457 0.2111 0.2383 0.0759 0.0317 0.0218 0.3370
8/2 12 8.42 96.33 2.49 1.18 0.2599 0.0208 0.1100 0.2357 0.2099 0.0693 0.0231 - 0.3155

11.今後の問題点
 1)エアロミキサ 冬期間の収納法
 2)デイフィーザ 超大有機物対策、簡易分離装置の設置

12.次年度の計画
 有、農産加工施設排出物の混合利用