【指導参考事項】
1.課題の分類  新得畜試 B-7 寒地型牧草
2.研究課題名  牧草品種に関する試験
            -牧草品種の栄養価査定に関する試験−
3.期  間   (昭和49〜53年)
4.担  当   新得畜試・研究部草地飼料作物科
5.予算区分  道 単
6.協力分担  な し

7.目  的
 牧草品種の生育ステージとその栄養価及び収量を検討し、刈取りスケジュール立案の資料とする。

8.試験方法
 1)供試草種:8草種22品種
 2)試験区設計:1区面積:50㎡(5m×10m)、2反復
 3)施肥量 (N-P2O5-K2O ㎏/10a)
   イネ科牧草:20-9-20、マメ科牧草:4-9-18
 4)刈取月日
刈 取
スケジュール
昭 50 年 昭 51 年
1番草 2番草 3番草 4番草 1番草 2番草 3番草 4番草
A 5.27 7.8 8.21 9.30        
B 6.7 7.17 8.27 10.6 6.5 7.16 8.25 10.2
C 6.14 7.24 9.2 10.13 6.15 7.24 9.2 10.13
D 6.25 8.4 9.12   6.28 8.6 9.16  
E 7.4 8.12 9.22   7.5 8.13 9.24  
F 7.15 8.25 10.2          
G 7.25 9.3 10.14          
H 8.4 9.11 10.21          
                 (再生の生育期間は約40日である。)
 5)調査項目
 乾物(DM)収量、粗蚤白質含量(CP)、in vitro乾物消化率(IVD)……T&T法

9.主要成果の概要
1)草種、品種の栄養価特性
 (1)イネ科牧草のIVDは、Ti>Mf>Tf>Og、Rcgの傾向であった。CPには明確な差異は認められなかった。
 (2)ALとRCの栄養価はほぼ同じであり、IVDはイネ科牧草ではやや高いMfなみであり、CPはイネ科牧草より明らかに高かった。
 (3)LCの栄養価は極めて高く、年間を通じてIVD70%、CP23%以上であった。
 (4)Ti品種間ではノースランドが高い栄養価で、ホクオウがやや低い傾向であった。Ogではヘーキングが高いIVDで、フイロックスは高いCPでありながら、IVDはやや低い傾向であった。Tfではホクリョウが高いIVDであった。ALではデュピュイの栄養価がやや低かった。Rcでは3品種ともほぼ同じであった。

2)1番草の栄養価及び収量
 (1)IVDは生育に伴い減少した。減少割合(%/日)は、イネ科牧草ではRcg 0.55、Mf 0.54>Ti 0.46、Og 0.44>Tf 0.39であった。マメ科牧草ではRc 0.41>AL 0.33>Lc 0.22であった。
 (2)出穂期における栄養価はIVD63〜72%、CP11〜18%と巾があり、出穂の早い草種の栄養価が晩い草種より高い傾向があった。ALとRcの開花始における栄養価はIVD68、78%、CP18、16%であった。
 (3)IVD65%の起日はRcg、Og、Tf(早生)、Mfが早く6月25日頃でその時のCPは12〜13%、Tf(晩生)、Ti(早生)は7月1日頃で10〜11%、Ti(晩生)は7月10日頃で11%、AL、Rcは7月10日頃で15〜18%であった。
 (4)IVD65%の収穫可能期間は6月25日から7月10日までの約15日間である。
 (5)DM収量はTi、Tf(晩生)、Rcg、Rcが多収であった。

3)1番草をIVD65%で収穫する刈取りスケジュールの場合の栄養価及び収量
 (1)2、3番のIVDはTiが70%以上と高く、Rcg、Og、Ti(早生)、ALは70%以下と低く、Tf(晩生)、Mf、Rcはその中間であった。
 (2)CpはAL、Rcが高く年平均で20%あった。イネ科牧草ではTi(晩生)が18%でやや高い傾向であった。他の草種は14〜16%でほぼ同程度であった。
 (3)年間DM収量はTf(晩生)、Rcgは1,000㎏/10a以上の収量であった。Tf(早生)、Ti(早生)、Rcは900㎏以上、Og、Mf、Ti(晩生)は800㎏以上であり、ALは740㎏と少なかった。

4)栄養収量
 (1)栄養収量はDM収量と強く関連したが、栄養価の高い草種、品種、刈取りスケジュールの収量がDM収量に比較して多くなる傾向があった。

10.主要成果の具体的データ

図1. 1番草におけるIVD70:65、60%の起日とCpおよびDM収量

表1. 1番草をIVD65%で収穫する刈取スケジュールの場合の栄養価および収量
草 種 IVD (%) Cp (%,DM) DM収量 (㎏/10a) 年間
DDM収量
(㎏/10a)
年間
Cp収量
(㎏/10a)
1番草 2番草 3番草 平均 1番草 2番草 3番草 平均 1番草 2番草 3番草 平均
Rcg 65 63 68 65 12 16 20 16 610 260 170 1,040 680 149
Og 65 64 69 66 13 15 17 15 400 240 250 890 580 128
Tf(早生) 65 63 68 65 13 16 16 15 480 240 230 950 620 135
Mf 65 69 72 69 12 18 18 16 480 190 190 860 580 125
Ti(晩生) 65 67 73 68 11 15 16 14 620 230 220 1,070 720 134
Ti(早生) 65 70 75 70 10 16 18 15 630 180 120 930 630 115
Ti(晩生) 65 73 77 72 11 20 22 18 590 100 140 830 560 115
Rc 65 69 70 68 15 20 24 20 580 250 80 910 600 156
AL 65 64 70 66 18 19 23 20 340 260 120 720 470 137

11.今後の問題点
 1)刈取り間隔50日、60日の場合の栄養価の検討
 2)採食量の検討
 3)施肥と栄養価の検討

12.普及指導上の注意事項
 1)IVD、Cpそれぞれ±5%、±3%である。
 2)本試験では再生草の生育期間を約40日としたので、これ以上の場合にはIVDは低下する。
 3)IVDが50〜70%の範囲でTDN含量を求めるには、IVDより5%値を引く。(回帰式より算出)。
 4)この試験成績は十勝地方及び牧草の生育が類似する地方に適用する。