【普及奨励事項】
菜豆「中育F1号」に関する試験成績
北海道立中央農業試験場・畑作部
(昭45〜54年)
育種目標  高級菜豆のついて、大粒・良質・多収品種の育成

来歴
 菜豆「中育F1号」は昭和44年に収集した大福種の在来種のうち熟期の早い北見市豊地産から分離固定を行った系統である。
 昭和52年から生産力検定試験と1部の現地試験を行ない昭和53年から地域適応性検定試験、現地試験特性検定試験を実施して地方適否および特性を確かめた。

特性
 1.一般性状:「大福」および早生系の在来種に類似し、草丈は約3mのまん性の硬莢種で胚軸色は緑、葉は広く大きく稍淡緑でしわが多い。
 2.開花期および成熟期:育成地における開花期は7月中旬〜下旬、成熟期は9月中旬で中の晩に属し、「大福」より7〜14日早い。
 3.子実:子実の形状は扁平なじん臓形で色は白、粒大は中で「大福」より15〜20%程度軽いが、在来種とほぼ等しい。
 4.収量性:在来種にくらべてやや多収である。「大福」にくらべては劣る。
 5.耐病性「大福」在来種と同様、炭そ病、輪紋病にやや強く菌核病、インゲンモザイク病には弱い。黄化病には強い。
 6.品質:外観品質は「大福」より劣るが、在来種と差はない。種皮の厚さ、種皮歩合とも良好である。主として甘納豆、煮豆(きんとん)に適する。

主要な具体的データ
1.中央農試成績 (昭和52〜54、3ヶ年平均)
品種・
系統名
開花期

月日
成熟期

月日
草丈

着莢数

10a当
子実重
左比

%
1000
粒重
宵豆
歩合
%
品質 備  考
中育F1号 7.18 9.10 291 35.8 236 111 658 4.4 中上 北見市豊地産より選抜
大福(北見) 7.18 9.11 285 35.2 212 100 627 5.9 北見市産の在来種
大 福 7.24 9.24 329 36.0 298 141 822 3.0  

2.北見農試成績 (昭和53〜54)
年次 品種・系統名 開花期

月日
成熟期

月日
草丈

着莢数

10a当
子実重
左比

%
1000
粒重
宵豆
歩合
%
品質
昭53 中育F1号 7.17 9.6 347 30.9 348 108 684 1.3 1
大福(北見) 7.17 9.5 354 29.6 323 100 662 1.2 1
昭54
(参考成績)
中育F1号 7.24 9.18 360 24.9 255 101 655 0.3 1下
大福(北見) 7.24 9.18 340 24.4 253 100 649 1.6 1下
大 福 7.24 未熟 - 20.1 502 198 817 2.0 2下

3.現地試験成績
品種・系統名 虻田町 (昭52〜54年) 伊達市 (昭53〜54)
成熟

月日
10a当
子実重
左比

%
1000
粒重
成熟

月日
10a当
子実重
左比

%
1000
粒重
中育F1号 8.31 296 102 629 9.1 292 105 556
大福(北見) 8.30 290 100 100 9.2 279 100 550
大 福 9.8 283 98 98 (9.8) 258 93 655

品種・系統名 留辺蘂町 (昭53年) 留辺蘂町 (昭54参考成績)
成熟

月日
10a当
子実重
左比

%
1000
粒重
成熟

月日
10a当
子実重
左比

%
1000
粒重
中育F1号 9.10 392 112 733 9.17 238 104 620
大福(北見) 9.10 349 100 737 9.15 228 100 636
大 福 - - - - 9.20 252 111 738

注)1.北見農試、留辺蘂町の昭和54年の成績ウイルスは病の被害があったので参考資料とした。
 2.伊達市の成熟期の(9.8)は根上げ日である。

適用地帯ならびに栽培上の注意
 1.胆振地方を中心とする道央南部およびこれに準ずる地帯。
 2.栽培上の注意
 「大福」の栽培に準じてよいが、「大福」同様、インゲンモザイク病菌核病などに弱いので、無病種子の使用と病害虫の防除を励行する。