【指導参考事項】
1.課題の分類  分類番号 Ⅸ-c 整理番号 951-2-6
2.研究課題名  てん菜登熟調査-2 (物理的刺激によるてん菜移植苗の徒長防止に関する試験)
3.期  間   昭54(51〜54)完了
4.予算区分  道費
5.担  当   道立十勝農試・てん菜科
6.協力分担関係  日本甜菜製糖(株)農事研究部

7.目 的
 てん菜の移植苗に対する物理的刺激による徒長防止効果について検討する。

8.試験研究方法
試験Ⅰ(処理の開始時期) (昭52〜54年度) 開始時期:2〜3処理  期間:1〜2処理
試験Ⅱ(処理の時間) (昭51〜52年度) 時間:2〜3処理
試験Ⅲ(処理の期間) (昭53〜54年度) 期間:2〜3処理  開始時期:1〜2処理
試験Ⅳ(処理の強さ) (昭54年度) 強さ:2処理、  ほうき:2種類

9.結果の概要・要約
試験Ⅰ(処理の開始時期)
 1)いずれの時期に処理が開始されても葉長が短かくなり、さらに、単位葉長当りの乾物重が大きくなる傾向を示し、徒長防止効果が認められた。
 2)10日間処理では処理時期が早いほど、処理効果が大きかった。
 3)20日間処理では、試験年度によって異なり、処理の開始時期と処理効果こは明らかな傾向は認められなかった。

試験Ⅱ(処理の時間)
 1)処理の時間を朝および夕方あるいはこれらの種々の組合わせにより処理効果を比較した結果、いずれの時間の処理によっても葉長および単位葉長当りの乾物重におよぼす処理効果は明らかであった。
 2)処理時間の違いと処理効果には明らかな差異は認められなかった。

試験Ⅲ(処理の期間)
 1)10日間、20日間および30日間の処理期間を設け、その処理効果を比較した結果、処理期間が長いほど葉長および単位葉長当りの乾物重におよぼす効果が大きかった。
 2)処理の開始時期が早い(播種後13〜19日目開始)場合でも遅い(播種後26〜29日目)場合でも処理期間が長いほど処理効果が大きかった。

試験Ⅳ(処理の強さ)
 1)座敷ぼうきと稲わらでつくった特製ぼうきを用いて、5回および10回処理の2段階の強さについて処理効果を比較した結果、いずれを用いた場合にも処理の強さが葉長および単位葉長当りの乾物重におよぼす影響は極めて小さかった。
 2)稲わらでつくった特製ぼうきを使用した場合でも座敷ぼうきを使用した場合と同様に処理効果が認められた。
 以上、この物理的刺激による徒長防止技術は、通常の気象および土壌条件では収最に差はないが、融雪遅延や長雨などによって畑の準備が遅れ、移殖の時期が遅れる場合や、育苗期間が高温で苗が徒長する恐れがある場合に対応することができ、また、徒長苗の場合に生ずる機械移植での”苗がらみ”の問題も軽減されろものと考えられる。

10.主要成果の具体的数字
試験Ⅰ (処理の開始時期)

年度
場所
処理区分 処理
期間
処理
開始
時の
本葉数
(㎝)
育苗調査(5月7日) 生育調査**
(7月2日)
収量調査***
(10月23日)
葉長
(㎝)
葉数
(枚)
生重(g)* 葉長
比率
頸葉
根重 根重 糖量 根中
糖分
頸葉
昭54
芽室
1.無処理 10.8 2.8 143.2 9.6 0.96 410 101 (6.25) (1,163) (18.60)
2.16日目開始 10日間 0.2 8.6 2.5 115.0 9.4 1.05 343 92 102 102 100
3.26日目開始  〃 1.6 9.7 3.0 131.4 10.2 1.07 369 95 104 104 100
4.16日目開始 20日間 0.2 8.7 3.1 117.6 9.4 1.06 390 100 103 102 99
5.26日目開始  〃 1.6 7.6 3.0 126.4 10.2 1.32 388 102 103 104 101

試験Ⅱ (処理の時間)
年度
場所
処理区分 処理
期間
処理
開始
時の
本葉数
(㎝)
育苗調査(5月7日) 生育調査**
(7月2日)
収量調査***
(10月23日)
葉長
(㎝)
葉数
(枚)
生重(g)* 葉長
比率
頸葉
重(g)
根重
(g)
根重 糖量 根中
糖分
頸葉
昭51
幕別
1.無処理 7.3 3.6 73.9 9.6 0.85 34 5 (7.19) (1,251) (17.41)
2.朝処理 26日間   4.6 3.8 54.7 10.21 1.09 26 4 96 96 100
3.夕処理 4.7 3.7 44.5 4.8 1.04 31 4 96 95 100
4.朝夕処理   3.3 3.6 31.1 5.0 1.18 31 4 9500 95 100

試験Ⅲ (処理の期間)
年度
場所
処理区分 処理
期間
処理
開始
時の
本葉数
(㎝)
育苗調査(5月7日) 生育調査**
(7月2日)
収量調査***
(10月23日)
葉長
(㎝)
葉数
(枚)
生重(g)* 葉長
比率
頸葉
重(g)
根重
(g)
根重 糖量 根中
糖分
頸葉
昭54
芽室
1.無処理 10.8 2.8 143.2 9.6 0.96 410 101 (6.25) (1,163) (18.60)
2.10日間処理 4.7 0.2 8.6 2.5 115.0 9.4 1.05 343 92 102 102 100
3.20日間処理 (16日目) 8.7 3.1 117.6 9.4 1.06 390 100 103 102 99
4.30日間処理   7.0 3.0 106.8 10.0 1.20 438 104 101 100 99
5.10日間処理
(後期)
4.17 1.6 9.7 3.0 131.4 10.2 1.07 369 95 104 104 100
6.20日間処理
(後期)
(26日間) 7.6 3.0 126.4 10.2 1.32 388 102 103 104 101

試験Ⅳ (処理の強さ)
年度
場所
処理区分 処理
方法
処理
開始
時の
本葉数
(㎝)
育苗調査(5月7日) 生育調査**
(7月2日)
収量調査***
(10月23日)
葉長
(㎝)
葉数
(枚)
生重(g)* 葉長
比率
頸葉
重(g)
根重
(g)
根重 糖量 根中
糖分
頸葉
昭54
芽室
1.無処理 10.8 2.8 143.2 9.6 0.96 410 101 (6.25) (1,163) (18.60)
2.5回処理 座敷ぼうき 0.2 7.0 3.0 106.8 10.0 1.20 438 104 101 100 99
3.10回 6.6 3.5 103.0 10.0 1.36 453 107 102 103 101
4.5回理 特製ぼうき 6.9 3.7 112.8 10.4 1.42 414 105 105 105 101
5.10回処理 6.6 3.4 105.6 11.8 1.39 382 104 103 103 100
注)*:100個体重で示す。
 **:1個体重で示す。
 ***:無処理に対する比%で示す。( )の単位は根重:t/10a、糖量:㎏/10a、根中糖分:%。

11.指導上の注意事項
 1)てん菜の健苗をつくるためには育苗時の温度管理および灌水などを適切に行い、徒長しない苗をつくることが基本である。
 2)育苗中に斑点細菌病の発生が認められた場合には処理により病害を広げるおそれがあるので処理をしないこと。
 3)発芽が不揃いのときや子葉展開直後の極めて小さい苗の時に処理した場合、あるいは処理が強過ぎると苗の損傷を多くするおそれがあるので注意すること。

12.次年度計画
 完了、昭和54年度農業試験会議(成績会議)に提出。