【指導参考事項】
施肥田植機による高粘度懸濁複合肥料の局所施肥に関する試験(追補)
−水稲に対する有機入尿素硬度液状複合肥料の肥効特性−
                             道.農務部 農業改良課
昭和54年

目  的
 本肥料については北農試、中央、上川農試、道農業改良課で昭和49〜51年の3ヶ年試験が実施され、昭和51年度成績会議に於て指導参考事項に決定を見たが、肥料そのものが製造中止となったことから外部への発表を1時間保留した。しかし今般、他のメーカーによってまた製造されることになったので、本年は新製品についてその肥効特性を検討する。

試験方法
1)試験場所、耕種概要
(1)北桧山町字愛知 沖積土 品種 キタヒカリ 中苗、5月22日移植局所(側条)施肥 横2cm 深さ5cm
(2)長沼町東4線南9号 沖積土 品種 イシカリ 中苗、5月22日移植            〃
(3)風蓮町字日進 洪積土 品種 はやこがね 中苗、5月22日移植            〃

2)試験区別
 (1)北桧山町…1.全Nの80%全層、20%止葉期分施(標準) 2.元肥Nの71%(全Nの57%)局所施肥
   3.元肥Nの71%局所施肥、全Nの20%幼形期7日後分肥 4.元肥Nの71%局所施肥、全Nの20%止葉期分施
 (2)長沼町…1.施用N全量全層(標準) 2.施用Nの80.2%局所施肥 3.施用Nの80.2%局所施肥・20.8%幼形期7日後
   分施 4.施用Nの80.2%局所施肥20.8%止葉期分施
 (3)風蓮町…1.施用N全量全層施肥(標準) 2.標準+局所施肥追肥(N2.4kg相当量/10a) 3.施用Nの86%局所施肥
   4.施用Nの86%局所施肥、21.4%幼形期分施 5.施用Nの86%局所施肥、21.4%止葉期分施
3)各試験地に於ける標準区N施用漁(kg/10a)
 北桧山町は全N9.0kg 長沼町は施用N9.6kg 風蓮町は施用N7.0kg
4)供試肥料
 基肥全層施肥は複合硫加燐安286号で施用、局所施肥は高度液状複合肥料062号(N10 P16 K12)で施用

試験成果の概要
 1)稲株の横2cm深さ5cmへの高度液状複合肥料の側条局所施肥は施肥位置の関係から初期生育の確保上有利な施肥法といえる。
 2)局所施肥の場合は、元肥として全層施肥されるN量の80%程度でも初期生育が明らかに優り、幼穂形成期、出穂期も早まり、またその肥効も割合持続するので初期生育の促進効果はその後の生育上にも反映し登熟性の低下を招かずに同等以上の収量が確保された。従来のN分施法時の元肥N量より控えたN量で出発し、N分施(全N量の20%程度)を実施した場合、登熟性の低下を招かず更に高い収量が得られた。(北桧山町試験地が良い例)
 3)稲体Nの分折でも局所施肥区は標準区の元肥量よりも少ないにもかかわらず、幼穂形成期前後のN含量が高かった。

主要成果の具体的データー
1)北桧山町
試験区別





7月5日 成熟期 玄米
収量
(kg/10a)
同左
玄米
千粒重
(g)
登熟
歩合
(%)
玄米
等級
施用
N
総量
(kg/10a)
草丈
(cm)
茎数
(本)
稈長
(cm)
穂長
(m)
穂数
(本)
1.全Nの80%全層
20%止分施(標準)
7月
7日
8月
6日
9月
23日
38.4 25.5 56.2 14.6 25.4 463.4 100 21.4 80.0 1 9.0
2.元Nの71%局所
(全Nの57%)
6日 4日 22日 37.7 27.3 64.4 15.6 25.9 474.9 102 21.2 81.0 1 5.1
3.元Nの71%局所
全N20%幼7日後
分施
6日 7日 24日 38.5 27.7 61.9 14.3 28.9 534.1 115 20.9 82.0 1 6.9
4.元Nの71%局所
全Nの20%止分施
6日 7日 25日 39.4 27.2 61.7 14.9 28.7 557.9 120 21.3 82.0 1 6.9

2)長沼町
試験区別





7月13日 成熟期 玄米
収量
(kg/10a)
同左
玄米
千粒重
(g)
登熟
歩合
(%)
稲体
乾物
N%
7月13日
施用
N
総量
(kg/10a)
草丈
(cm)
茎数
(本)
稈長
(cm)
穂長
(m)
穂数
(本)
1.施用N全量全層
(標準)
7月
14日
8月
13日
10月
5日
39.0 14.8 65.7 17.9 20.9 471 100 21.7 62.0 3.08 9.6
2.施用Nの80.2%
局所
13日 12日 43.5 19.3 63.0 17.3 22.7 509 108 21.9 66.3 3.24 7.7
3.施用Nの80.2%
局所
20.8%幼7日後
分施
13日 62.2 18.3 23.0 533 113 21.0 61.2 - 9.7
4.施用Nの80.2%
局所
20.8%止分施
13日 63.6 18.5 22.7 532 113 21.6 59.8 - 9.7
注)1区 3.4区は元肥局所施肥量7.7kg/10aでN稍々過剰状態下での分施

3)風蓮町
試験区別





6月30日 成熟期 玄米
収量
(kg/10a)
同左
比率
玄米
千粒重
(g)
稲体
乾物
N%
7月19日
施用
N
総量
(kg/10a)
草丈
(cm)
茎数
(本)
稈長
(cm)
穂長
(m)
穂数
(本)
1.施用N全量全層
(標準)
7月
5日
8月
8日
9月
30日
35.5 14.8 62 14.7 27.4 517 100 20.4 2.77 7.0
2.標準+局所追肥 3日 6日 28日 36.7 17.0 63 14.0 26.3 498 95 20.8 2.67 9.4
3.施用Nの86%
局所
29日 35.2 18.4 66 14.8 31.6 546 106 20.5 2.84 6.0
4.施用Nの86%
局所
21.4%止分施
8日 30日 37.2 18.3 65 14.9 31.7 523 101 20.8 - 7.5
5.施用Nの86%局所
21.4%止分施
10月
2日
35.3 17.3 64 14.2 30.1 524 101 20.9 - 7.5

普及指導上の注意事項
 1)局所施肥は施肥位置の関係から肥効が早くから現われ、必要茎数の早期確保と生育の促進がはかられ、稲は安定した生育相をとるようになるので初期生育の促進を必要とする地帯で増収効果が大きいと云える。
 2)局所施肥については基礎的な研究の積上げが必要であり、これに基づいて地域別、土壌別の施肥体系を確立する必要があるが、当面、実用的には従来の標準施用N全量の20%程度を分施N量とし、高度液状複合肥料による局所施肥N量は標準施肥Nの64%(80%×80%…普通肥料で全層施肥される元肥N量の80%)とすることが良いと考えられる。