【指導参考事項】
1.課題の分類  作物(14種) 環境保全 道立中央農試
2.研究課題名  二酸化窒素に対する農作物の可視被害について
3.期  間  昭和53〜54年
4.担  当  道立中央農試環境保全部第二科
5.予算区分  道  費
6.協力分担  な  し

7.目  的
 二酸化窒素接触による農作物の種類別可視被害症状、感受性などについて検討する。

8.試験研究方法
 自然光型人工気象室3台を用い、一台を対照区として、5段階のガス接触処理を3回にわたり実施した。供試作物を1/5,000aポットで20日〜90日間ガラス室で栽培後、実験に供した。具体的接触条件、供試作物を表-1、2に示した。

表-1 ガス接触条件
処理区
/項目
実験1 実験2 実験3

ガス
ガス
ガス
1 2 1 2 最大 最小 平均
NO2濃度(ppm) - 24 10 - 8 4 - 9.5 2.0 6.0
接触時間(hr) - 1 1 - 2 4 -   17  
湿  度(%) 87 80 69 81 78 72 66   55  
温  度(℃) 23 23 23
天   候 はれ うすぐもり -
期間、時刻 1979年7月22日
11時〜12時
1979年7月27日
11〜13、15時
1978年
9月27日〜10月6日(4回)

表-2 各作物の栽培期間
作物名 は種日 実験
1
実験
2
は種日 実験
3
トマト 5月1日 83日 88日 - -
なす 〃 〃 - -
てん菜 〃 8日 76日 81日 7月20日 70日
水稲 〃 24日 60日 65日 - -
アルファルファ 〃 28日 56日 61日 7月20日* -
赤クローバ 〃 〃 - -
チモシー 〃 〃 - -
オーチャー
ドグラス
〃 〃 - -
きゅうり 6月19日 34日 39日 8月30日 29日
小豆 6月20日 33日 38日 〃 〃
菜豆 〃 26日 27日 32日 〃 〃
そば 〃 〃 〃 〃
大豆 〃 〃 - -
とうもろこし 〃 〃 8月30日 29日
*8月31日刈り取り後供試

9.結果の概要
①ガス接触の結果、可視害は脱水症状をともない、不定形の煙斑となって、葉部に発現した。その発現位置は、葉位では中位葉に多く、葉身では、主として葉脈間、葉縁、先端などに認められた。
また、煙斑1の色は、ガス濃度、接触時間による差異は、ほとんど認められず、作物間では、若干異なった色を呈したが、大部分の作物は、橙色から黄褐色が主体であった。
②ガス濃度、接触時間の処理の差によって、作物間の煙斑発現に差異が生じ、これをもとに、相対的感受性を3つに分類し、その結果、アルファルファ、小豆、赤クローバ、菜豆など、豆科の4作物の感受性の高いことが明らかになった。
③各作物の被害程度は、各ガス濃度、接触時間で異なり、高濃度の接触ほど被害程度は大きい傾向にあった。
④葉中の窒素含有率は、全窒素については判然としないが、硝酸態窒素、亜硝酸態窒素において、高濃度のガス接触の場合、増加する傾向を示した。

10.主要成果の具体的数字
表-3 ガス接触による作物別の被害頻度(%)


処理区
/作物名
実験1 実験2 実験3
24
ppm

1hr
10
ppm

1hr
8
ppm

2hr
4
ppm

4hr
2.0〜9.5
ppm

17hr
アルファルファ 100 70 84 78 +
小豆 94 71 47 +
赤クローバ 85 41 18  
菜豆 80 60 41 6 +
そば 99 79 19 0 -
大豆 83 20 32 0  
チモシー 100 0 16 0  
水稲 87 31 0 0  
きゅうり 82 13 0 0 -
オーチャー
ドグラス
100 0 0 0  
トマト 0 0 0  
てん菜 67 0 0 0 -
とうもろこし 87 0 0 0 -
なす 62 0 0 0  
(注)+,−は発現の有無

表-4 NO2に対する相対的感受性
アルファルファ そば 水稲 トマト、なす
小豆 大豆 オーチャード
グラス
赤クローバ チモシー てん菜
菜豆 きゅうり とうもろこし


図-1 ガス接触による各作物の全葉の被害面積率


図-2 葉位別被害面積率


図-3 ガス接触による葉中NO3--N、NO2--N含有率の変化(対照区との差)

11.今後の問題点
 本試験では二酸化窒素の高濃度、短時間の接触による可視害についてとりまとめたが、今後、生育時期や品種、環境要因などの関連について明らかにするとともに、さらに低濃度、長期間の接触影響、とくに生育収量や品種などについても検討する必要がある。

12.成果の取り扱い(指導上の注意事項)
 現地での作物の可視害について、二酸化窒素による影響の有無を判定することが必要となった場合には、その時点での被害内容解析(被害の現われかた、発生の地域分布など)、大気汚染物質以外の原因によるものとの識別、大気観測資料の利用などを併行し、また、他の大気汚染物質との比較を加えながら、総合的な立場から検討する必要がある。