【指導参考事項】
飼料給与方法と離乳方法の改善による発情再帰の集中化
(豚の同期交配技術の確立に関する試験)
期  間  昭和50〜53年
担  当  滝川畜試種畜部養豚科
予算区分  道 単
協力分担  な し

目  的
 授乳期の飼料給与方法と離乳方法の改善によって、発情再帰の集中化をはかり、同期交配技術を確立する。

試験方法
 1.授乳期の飼料給与方法と離乳方法の改善による発情再帰の集中化。
 2.発情再帰の集中化による同期交配、分娩の実証

結果の要約
 (1)授乳中の母豚に対し飼料を不断給与又は日本飼養標準の上限に近い定量給与(6,7kg/日)と離乳方法の改善によって93%以上のものが離乳後12日以内に確実に発情が再帰した。
 (2)発情再帰日数と授乳期間の長さ、離乳時の子豚の頭数、5週令子豚総体重の間には特定の関連性は認められなかった。しかし、産次とは関連が認められ特に初産の場合離乳後の発情はやや遅れがちであった。
 (3)2頭から6頭までの組合わせを作り同じ日に離乳させて発情再帰の集中化の程度を調査したところ、77%以上の組の発情再帰が完全に集中化され、頭数では89%以上が同時に再帰することが認められた。
 (4)発情再帰の集中化による場合の延頭数受胎率は85%以上であった。
 (5)母豚の体重は不断給与では増え、定量給与ではやや減少の傾向にあった。
 (6)飼料摂取量は、いずれも日本飼養標準の基準量を上回った。
 (7)相関係数および回帰式から飼料摂取日量と母豚の体重変化、5週令子豚総体重の間の関連性が明らかになり、定量給与は、子豚の発育や母豚の体重の維持(または増体)に良い影響を与えていることも示された。

主要成果の具体的数字
発情再帰日数の分布
試験区分 全頭数 3日
以内
4日 5日 6日 7日 8日 9〜
10日
11〜
12日
遅延
したもの
第1期 144頭 5.6% 18.2% 27.3% 22.2% 6.2% 5.6% 4.2% 4.2% 6.2%
第2期 248 0.4 8.1 42.3 24.6 10.5 5.2 2.8 1.2 4.8
第3期 182 0.5 9.8 29.1 19.2 15.9 7.7 7.1 4.4 6.6

発情再帰集中化の状況
試験区分 組数 (頭数) 発情再帰の集中化 遅延したもの 発情微弱または無発情
組数 (頭数) 組数 (頭数) 組数 (頭数)
第1期 49 (135) 77.6% (88.9) 14.3% (5.9) 8.2% (3.0)
第2期 74 (234) 81.0 (91.9) 13.5 (4.3) 5.4 (1.7)
第3期 63 (132) 84.1 (92.9) 14.6 (6.0) 1.6 (0.5)

授乳中の母豚の増体重(X)、飼料摂取日量(Y)、5週令子豚総体重(Z)の間の相関・偏相関
試験区分 頭数 γXY γZX γYZ γXY・Z γZX・Y γYZ・X
第1期+第2期 302 0.4420** -0.4300** 0.2914** 0.6569** 0.5945** 0.5945**
第3期 178 -0.4788**
注)**1%水準で有意

今後の問題点
 母豚の栄養状態以外の原因による発情遅延の防止対策の解明が望まれる。

普及指導上の参考事項
 1.授乳期はTDN63%、DCP11%の飼料の場合、分娩後7日目から離乳時まで日量6、7kg程度を給与する。
 2.離乳前後の絶食の必要はなく、離乳時にヨードチンキを乳房へ塗布、または噴霧することによって乳房炎の発生を予防する。
 3.発情再帰を集中化させるためには、同期交配が必要な母豚の授乳期間を調整し、数頭を一度に離乳させることが望ましい。
 4.離乳後は、雄豚と接触する機会を多くする。1日2回朝・晩の発情鑑定を雄豚の巡回でおこなうことが、その意味で重要である。
 5.発情再帰の集中化によって、人工授精による優秀な種雄豚の効率的利用が可能である。