【指導参考事項】
作物育種   課題の分類
場 所 名  北海道農業試験場
新品種候補系統名  えん麦「北海21号」

来歴
 「北海21号」は、昭和42年北海道農業試験場において「カ一夕ースラクスタ」を母とし、「ニュートン」を父として人工交配を行い、F3F5を派生系統とし、以後系統育種法により選抜固定をはかったものである。
 長稈で茎葉の繁茂の著しい「カ一夕ースラクスタ」に対して「ニュートン」の早熟、強稈性を加えることをねらいとした。
 昭和49年より生産力検定予備試験、昭和51年より生産力検定試験、系統適応性検定試験、特性検定試験ならびに奨励品種決定調査に準ずる試験を行った。昭和54年度の世代はF12である。

1.草型は直立型で初期伸長性がすぐれ旺盛な分けつ力を有する。再生力は「前進」と同程度である。
2.出穂は早生〜中生である。
3.稈長は「前進」より長い。
4.乾物収量が多い。北海道の春播栽培の早刈では対前進比が140、秋季栽培では対モイワ比が131である。
5.採種量は「前進」より少ない。
6.冠サビ病には弱い。耐倒伏性は、とくに強い方ではない。耐寒性は「前進」と同程度である。
7.飼料成分は「前進」に比べて大差がない。

試験成績
1.育成地における成績(㎏/a)
系統名
品種名
早  刈 出穂期刈 秋季栽培 採種栽培
乾物重 乾物重 乾物重 子実重
北海21号 27.1 140 28.4 98 39.3 131 35.2 87
前  進 19.4 100 29.0 100     40.4 100
日向改良黒 21.7 112 21.1 73     30.4 75
モ イ ワ         30.1 100 42.6 105
注)秋季栽培の播種期は8月25日、試験年次は、早刈 昭51〜53、出穂期刈 昭51〜54、秋季栽培 昭52〜54、採種栽培 昭53〜54。

系統名
品種名
耐倒伏性 冠サビ病
北海21号
前  進
モ イ ワ
 注)試験年次は、耐倒伏性 昭和51〜54、冠サビ病 昭和51を除く、昭和50〜54。

2.道内における試験成績(㎏/a)
系統名
品種名
中央農試 常 呂 網 走 芽 室 倶知安
乾物重 生草重 生草重 乾物重 生草重
北海21号 39.1 114 542.5 150 322.8 127 4.1 114 242.5 148
モ イ ワ 34.4 100 362.5 100 254.3 100 3.6 100 163.5 100
オホーツク 28.0 81 287.5 79 225.5 89     160.2 98
前  進     380.0 105            
 注)試験年次と播種期は、中央農試 昭53 8月21日 昭54 8月20日、
 常呂 昭53 8月10日、網走 昭53 8月22日、芽室 昭54 9月20日、
 倶知安 昭52 9月8日。

配布しうる種子量: 100㎏

採用予定県: 北海道

栽培適地、用途および普及見込面積: とくに秋季の緑肥用として、ほぼ全道一円に好適する。

普及見込面積: 20,000ha

栽培利用上の注意: 秋季の生産量を多く期待するには8月中に播種することが望ましいが、まき付けが遅れる場合は播種量や施肥量をやや多目にした方がよい。