【指導参考事項】
1.課題の分類 北海道農試 経営方式 経営設計 肉用牛 2.研究課題名 肉用牛繁殖専門経営の飼料生産方式 3.期 間 昭50〜54年 4.担 当 草地開発第一部 草4研:宮沢香春 5.予算区分 別枠・研究 6.協 力 農技研・草地試・総研 東北農試・中国農試・九州農試 |
7.目 的
畑作限界地帯での肉用牛繁殖専門経営(黒毛和種)の土地利用のあり方を考慮する。
1)土地規模別に対応した合理的な飼料生産の服用。
2)同一土地規模での収益性の大きい飼料生産方式を検討する。
8.試験研究方法
1)肉用子牛(繁殖めす牛、10か月令までの子牛生産)・粗飼料(牧草・デントコーン)を生産プロセスとする線形計画モデルを構築し、土地規模別最適土地利用方式を解明した。
2)1)のモデルのうち同一土地規模の結果に試算法を併用し、収益性について規範的に分析した。
3)分析に用いた技術係数・利益係数は畑作限界地帯(十勝支庁大樹町)のモデル農家の聴取、大樹町で策定した営農方式などを参考とした。
9.結果の概要
1)土地規模別飼料生産方式の解明
(1)土地利用型は、Ⅰ-1乾草−乾草−乾草(3回刈り)、Ⅱ-1乾草−乾草(2回刈り)、Ⅱ-2乾草−青刈、Ⅱ-3乾草−放牧、Ⅱ-4乾草−乾草、Ⅲ-1青刈−乾草、Ⅲ-2青刈−放牧、Ⅲ-3放牧−青刈、Ⅲ-4青刈、Ⅳ-1放牧(粗放)、Ⅳ-2放牧(集約)、Ⅴ-1デントコーンの12型に分類した。資源制限量は土地(20〜120ha)と労働(家族労働力2.0人)とした。
(2)線形計画の演算結果によると、飼料生産方式は、土地面積が30〜60haでは、Ⅰ-1乾草−乾草−乾草、Ⅱ-1乾草−乾草、Ⅲ-4青刈、Ⅴ-1デントコーンが、100〜120haでは、Ⅰ-1乾草−乾草−乾草、Ⅱ-1乾草−乾草、Ⅳ-1放牧(粗放)、その他が採用される(図表-1参照)。
2)飼料生産方式別収益性の解明
(1)土地資源制限を30haとし、Ⅰ牧草(放牧)型、Ⅱ牧草(青刈)型、Ⅲ放牧・デントコーン型の3つに分類し、試算法によって収益性を検討した。
(2)経営成果をみると、家族時間当り労働所得、ha当り土地資本収益、ha当り収益地価、ha当り農業資本収益などのいずれかもⅠ型<Ⅱ型<Ⅲ型である。また、農業資本収益率はⅠ型、Ⅱ型は10%未満となり、飼料生産視点からみた肉用牛繁殖専門経営(黒毛和種)の成立は、土地集約化の方向でのみ可能性が認められる(図表-2参照)。
10.主要成果の具体的数字
図表-1 土地規模別飼料生産方式
図表-2 飼料生産方式別経営成果(土地:30ha,家族労働力2.0人)
項目/土地利用型 | 単位 | Ⅰ牧草 | Ⅱ牧草 | Ⅲ牧草デントコーン型 | |
土 地 |
土地利用 | ha | 乾草・乾草・乾草14.9 放牧(集約) 15.1 |
乾草・乾草・乾草17.5 青刈 12.5 |
乾草・乾草・乾草8.9 乾草・乾草 1.6 青刈 10.2 デントコーン 9.3 |
肉 用 牛 |
繁殖めす牛(育成牛 | 頭 | 49.3(10.8) | 58.1(12.6) | 65.9(14.4) |
肥育用素牛(♂)・(♀) | 〃 | 38.9 | 45.8 | 52.0 | |
経 営 収 支 |
農業粗収益 | 千円 | 12,990 | 15.261 | 17,352 |
農業経営費 | 〃 | 9,138 | 10,152 | 10,616 | |
農業所得 | 〃 | 3,852 | 5,109 | 6,736 | |
経 営 成 果 |
家族時間当り労働所得 | 円 | 140 | 769 | 1,274 |
ha当り土地資本収益 | 千円 | 69 | 97 | 138 | |
ha当り収益地価 | 〃 | 1,380 | 1,940 | 2,760 | |
ha当り農業資本収益 | 〃 | 12 | 42 | 84 | |
農業資本収益率 | % | 1.8 | 5.9 | 11.6 |
11.今後の問題点
1)育成牛の公共用草地への預託の経営・経済的評価の検討が残されている。
12.普及指導上の注意
1)普及指導の対象は、畑作限界地帯で特にデントコーンの栽培が可能なこと。家畜品種は黒毛和種に限定する。
2)対象農家は現在肉用牛繁殖専門経営を指向しているものとする。