1.課題の分類  病害・畑作
2.研究課題名  ジャガイモの切断刀に対する消毒剤とその殺菌効果
3.期  間   昭和51〜54年
4.担  当   道立十勝農試
5.予算区分   道 費
6.協力分担

7.目 的
 ジャガイモの切断刀によって伝染する輪腐病、黒脚病に対して現在昇汞が広く用いられているが、これに代る消毒剤が望まれている。そこでジャガイモの切断刀消毒剤を探索するため、数種の薬剤の殺菌効果について検討した。

8.試験研究方法
 試験場所:十勝農試々験ほ又はハウス(ポット試験)、
 供試品種:N-1又は紅丸、
 対象病害:輪腐病・黒脚病、
 切断刀接種:自然罹病又は接種腐敗薯の切断、罹病塊茎の断面を切断刀に塗布又は病原菌混入おろし薯をハケで塗布、
 薬剤処理:処定濃度液(約8℃)に5秒間浸漬、
 効果判定:黒脚病=地上茎発病と地際茎導管褐度、
 輪腐病=stem oojeとtuber ooje法、
 施肥・一般防除・管理:農試慣行

9.結果の概要・要約
 1.次亜塩素酸カルシウム70%粒剤(ケミクロンG)の切断刀消毒効果は現行の昇汞と同等で、薬害もなく輪腐病、黒脚病細菌の切断刀による接触伝染をほぼ完全に防止できた。1Lの液量で2010回以上使用可能とみられる。
 2.塩化ベンザルコニウム20%液剤(アンチジャーム20)と塩化ベンゼトニウーム10%液剤(ハイアミン)は昇汞に比較すると薬害はなかったものの、効果はかなり劣った。
 3.ストレプトマイシン硫酸塩+オキシテトラサイクリン、15+1.5%水和剤(アグリマイシン100)は昇汞とほぼ同等の効果があるとみられるが、薬害(萌芽抑制と生育遅延)が認められた。
 4.以上の結果から昇汞に代り得る切断刀消毒剤として次亜塩素酸カルシウム70%粒剤(ケミクロンG)が実用可能と思われる。

(1)輪腐病に対する効果
薬  剤 ケミクロンG
10倍・5秒
アンチジャーム20
10倍・秒
ハイアミン
10倍・5秒
アグリマイシン100
10倍・5秒
昇 汞
500倍・5秒
健全塊茎
無処理
品種
年次・事項
S51 病株率(%)(ポット) 0 10 40 15 10 *1) 55 農林
1号
S52 病株率(ほ場) 0 36.2 25.0 0.8 0 0 81.7 紅丸
(次年の病薯率%) 0) (3.5) (4.7) (0.2) (0) (0) (21.4)
S53 病株率(ほ場) 0.4 * * * 8.9 0 98.4 紅丸
(次年の病薯率%)2) (0.3) (*) (*) (*) (3.5) (0.2) (35.7)
S54 病株率(ほ場) 0 * * * 1.4 0 93.6 紅丸
薬 害 - - - + - * * *
注1)*は試験なし
 2)は他の原因でミイラ化した薯を含む。

(2)黒脚病に対する効果
薬  剤 ケミクロンG
10倍・5秒
アンチジャーム20
10倍・秒
ハイアミン
10倍・5秒
アグリマイシン100
10倍・5秒
昇 汞
500倍・5秒
健全塊茎
無処理
品種
年次・事項
S52・病株率(%)1)(ポット)
(E.C.vsr atraseptin)
0 0 5 0 5 *2) 35 農林
1号
S52・病株率(%)1)(ポット)
(E.C.var carotovoru)
0 0 0 5 0 * 35 農林
1号
S53・病株率(%)(ポット)
(3病原細菌混合)
0 2.6 1.5 0 0 0 33.3 紅丸
(地際茎導管褐変率%) (1.3) (3.8) (4.6) (2.7) (1.3) (0) (44.4)

12.次年度の計画(成果の取扱い)
 次亜塩素酸カルシウム70%粒剤(ケミクロンG):有効成分、中性次亜塩素酸カルシウム70%、10借液・5秒
・金属類を腐植させるので容器は金属製品を使わない。
・消毒液の調整は必ず屋外で行ない冷水(約8℃)を用いてよく撹拝する。
・屋内(ハウス)等で使用する場合は屋外で1時間位放置してから持ち込む。
・ハウス内等で使用する場合は、においが足元に停滞することがあるのでハウスのスソを開けるなどして換気を行ないながら使用。・使用の際は必ずマスク、ゴム手袋を着用する。
・使用後の切断刀は水洗し油をぬる。
・薬液の1日使用後、翌日は新しい液と取りかえる。
・残液は直接河川等に入らぬよう注意。
・皮ふについたら水洗い。
・衣類の漂白に注意。
・その他記載注意事項を守ること。