1.課題の分類  病害、虫害・野菜
2.研究課題名  ハウス病害虫に対するフローダスト剤効果試験
          (新農業資材の実用化試験)
3.期  間   (昭50〜54年)
4.担  当   道南農試病虫予察科
5.予算区分
6.協力分担

7.目 的
 ハウス病害虫の省力防除、並びに農薬散布時の危被害防止をはかるため、蒸散法およびプルスフオグ煙霧法が開発、実用化されているが、今回、同じ目的で開発されたフローダスト剤(Flour、Float、Flowなどから名称づけられた)のきゆうりの病害虫に対する防除効果、薬害を検討する。

8.試験研究方法
 (1)試験場所:農試ハウス
 (2)区制面積:FD剤区は5×20mハウス1棟、対照、無散布区は5×20mハウス1棟使用した。
 (3)散布方法:夕方(日没後)ハウス風上入口から、背負型動力散粉機(エンジンフル回転、吐き出し量は最少)で所定薬量を散布し、ハウス入口を密閉した。また翌朝入口を開き、換気扇を作動して換気した。
 (4)調査方法:病害は病葉数、発病度、虫害は寄生虫数を調査した。

9.試験結果の概要、要約
 (1)TPNFD(30%)を10a当り500g散布は、きゅうりのべと病」に対して、対照薬剤と同等の効果を示し有効である。
 (2)サリチオンFD(15%)を10a当り500g散布は、きゅうりのアブラムシに対して、対照薬剤と同等の効果を示し有効である。
 (3)両薬剤ともきゅうりに対する薬害の発生は認めなかった。
 (4)フローダスト剤は手持ちの背負型動力散粉機を利用しての散布が可能で、動噴などの慣行散布法に比較すると、不良環境における防除作業の改善、散布時間の短縮など、ハウス病害虫防除の省力および危被害防止に有効と判断される。

10.主要成果の具体的数字
(1)きゅうりのべと病に対する効果
 ①昭和50年の試験成績
供 試 薬 剤 10a当り散布量 病葉率 (%) 発 病 度
8.29 9.8 9.8 9.25 10.9
TPNFD 30'% 500g 66 71 25.0 38.3 62.5
TPN水和剤 75% 600倍/200L 66 73 25.0 26.7 66.7
無散布 - 75 82 48.3 70.0 100.0

 ②昭和51年の試験成績
供 試 薬 剤 10a当り散布量 病葉率 (%) 発 病 度 10a当り収量
7.30 8.16 8.5 8.16 8.31 本数 重量
TPNFD 30'% 500g 15 67 25.0 25.0 30.8 4,740本 833㎏ 247
TPN水和剤 75% 600倍/200L 17 66 25.0 25.0 25.0 4,650 979 291
無散布 - 598 87 66.7 75.0 90.8 2,790 337 337
注 7月19日から7日ごと6回散布、30株調査、収量は8月9日から4回調査。

(2)きゅうりのアブラムシに対する効果
 ①昭和53年の試験成績
供 試 薬 剤 10a当り散布量 アブラムシ寄生数(30葉当り、頭)
 散布前 散布5日後 11日後 15日後 19日後 26日後
サリチオンFD 15'% 500g 466 0 0 0 0 24
ESP乳剤 45% 1,000倍/100L 550 0 0 0 0 78
無散布 - 501 2,200 14,967 22,087 37,723 6,367
注9月5日散布、30株調査。

②昭和54年の試験成績
供 試 薬 剤 10a当り散布量 アブラムシ寄生数(30葉当り、頭)
 散布前 散布3日後 7日後 14日後 21日後
サリチオンFD 15'% 500g 1,961 0 0 0 46
ESP乳剤 45% 1,000倍/100L 1,669 3 15 53 251
無散布 - 1,706 2,860 3,101 6,183 12,127
注 6月25日散布、20株調査。

11.今後の問題点

12.次年度の計画(成果の取扱い)
 (1)TPNFDおよびサリチオンFDは、背負型動力散粉機を用いエンジンはフル回転、吐き出し量を最少として、10a当り500gを散布する。
 (2)散布は夕方(日没後)ハウスの風上入口から散布し、散布終了後戸を閉める。翌朝戸を解放、換気する。
 (3)府県の成績より大型ハウス(長さ30m以上)の散布は、換気扇を作動し反対側の入口から散布する。終了後反対側の換気扇からFD剤の流出を認めたら換気扇を止め、戸を閉める。また換気扇のないハウスは、必要薬量の半量ずつ2方向から散布する。
 (4)散布にあたっては使用上の注意をよく守ること。
 TPNFD(30%)(ダコニールFD):毒性普通物、魚毒C、未登録
 サリチオンFD(15%)(サリチオンFD15):毒性劇物、魚毒B、未登録

13.参考成績
(1)散布地点からの距離別効果(昭和51年)
供 試 薬 剤 散布地点
からの距離
落下指数 アブラムシ寄生数 (2葉当り、頭)
散布前 散布3日後 7日後 10日後 14日後 21日後
ダイアジノンFD
20% 500g/10a
3m 5.0 174 0 0 0 0 3
6 5.0 518 0 0 0 0 4
9 4.7 140 0 0 0 0 2
12 5.0 142 0 0 0 0 1
15 4.3 90 0 0 0 0 1
18 4.7 118 0 0 0 0 2
DDVP乳剤 50% - - 137 2 2 19 29 268
無散布 - - 91 660 4,123 5,011 4,381 77
注 6月18日散布、DDVP乳剤は1,000倍 120L/10a散布、落下指数は1〜5段階でハウスの中、左、右の3ヶ所の平均。

(2)府県の試験成績
①FDの経時的浮遊量(昭和51年、TPN剤供試)

②FDの散布地からの落下状況(昭和49年、サチリオンFD供試)

③FD換気扇利用散布の落下状況(昭和49年、TPNF供試)

④FDの2方向散布の落下状況(昭和49年、サリチオンFD供試)

(3)FD剤散布と慣行散布との比較
散 布 法 防除効果 10a所要時間 作 業 環 境 備   考
FD剤 慣行と同等 1人10分 ハウス入口から散布するので、
農薬との接触がない。
果実の汚れがほとんど
問題にならない。
動力噴霧機 3人48分 ハウスの中に入り散布するので、
農薬との接触がある。
果実に汚れがある
背負型手動噴霧機 2人180分 同上 同上