1.課題の分類  野鼠・果樹
2.研究課題名  果樹の野鼠害に対する中低圧ポリエチレン多孔管(ネトロンパイプD-100)の物理的防除効果試験
3.期  間  昭和52年〜54年
4.担  当  中央農試病虫部発生予察科
5.予  算
6.協力分担

7.目 的
 りんご、なし等の果樹苗木および幼木に対する冬期間の野鼠害の状況と中低圧ポリエチレン多孔管(以下ポリパイプと略す)による物理的防除効果を調べる。

8.試験研究方法
 (1)長沼町、余市町の果樹園における野鼠類の生息状況調査
 (2)ポリパイプによる防除効果試験
 (3)各地における果樹の被害状況調査

9.結果の概要・要約
 (1)冬期間積雪下にてりんご等の果樹の樹皮を食害する野鼠はエゾヤチネズミである。
 (2)ポリパイプを樹幹にかぶせて物理的に被害を防ぐ方法は有効であり、エゾヤチネズミの多発年においても著しく被害を軽減させた。
 (3)従来使用されている金網、ビニール等に較べて、ポリパイプは耐久性にすぐれ、かつ装着が容易で省力的である。
 (4)被害はりんご、なし等に多く、次いでさくらんぼ、うめ等にみられる。
 10年以下の苗木、幼木が好んで食害され、かつ樹幹の全周を剥皮されて枯死する率が高い。
 (5)林地やササ地等のエゾヤチネズミの生息好適地に近い果樹園で被害が多く、また、園の周辺部の果樹に被害が目立つ。
 (6)被害量は年によって異なるが、地域や環境条件による違いが大きく、また、園内外の雑草除去等の管理が悪い果樹園では例年被害が多発する。

10.主要成果の具体的数字
 (1)果樹園とその周辺地における10月の野鼠類生息密度 (頭/0.5ha)

調査地 エゾヤチ
ネズミ
ミカド
ネズミ
エゾアカ
ネズミ
カラフトアカ
ネズミ
ヒメ
ネズミ
ハツカ
ネズミ
51 長 沼 66 0 10 0 0 0
52 38 0 9 1 0 0
53 63 0 21 0 1 1
余市新生 17 0 2 0 11 0
余市豊丘 7 0 22 0 5 0
注)1.長沼は記号放逐調査による推定数。
  2.余市は3日間の捕殺数を示す。

 (2)ポリパイプの防除効果 (りんご、スターキング、デリシャス苗木を供試)
調査地 区 別 被害程度別本数 被害程度指数
0 1 2 3 4
52 長 沼 ポリパイプ 18 5 3 1 0 12.9
無処理 4 20 16 7 2 41.3
53 長 沼 ポリパイプ 12 4 3 1 0 16.3
無処理 7 20 14 7 2 38.5
54 長 沼 ポリパイプ 48 0 0 2 0 3.1
無処理 18 7 11 11 3 37.0
余市新生 ポリパイプ 22 2 1 0 0 4.0
無処理 12 0 2 3 6 37.0
余市豊丘 ポリパイプ 24 0 0 0 1 4.0
無処理 16 2 1 2 4 26.0
注)1.52、53年はポリパイ プの長さは30㎝、54年は50㎝を使用した。
  2.被害程度および被害程度指数は下記によって算出した。
  0:無被害
  1:樹幹または枝に2、3の点状の剥皮
  2:樹幹の周囲の1/4以下の帯状の剥皮
  3:  〃   1/4〜3/4の帯状の剥皮
  4:  〃   3/4以上の帯状の剥皮
  被害程度指数=Σ(各階級値×本数)/総本数×4×100
  3.調査は各年の4月、融雪後の行なった。ポリパイプの装着は、各年の前年の根雪始め前に行なった。

 (3)各地の野鼠多発果樹薗における被害状況
樹種 調 査 地   被害程度指数
52年 53年 54年
りんご 余市町 豊丘   39.1 9.0 23.
  〃   登   14.4 27.0 10.0
  〃  新生   4.3 7.0 17.5
大野町 農試   0 4.0 0
  〃  松原   10.0 2.0 1.0
  〃  岡田   1.0 3.0 1.0
滝川市江部乙1. (放任園) 50.8 - 62.5
  〃 江部乙2.   4.0 - 3.0
増毛町 別刈   - - 70.2
  〃  今田   - - 8.5
  〃  丹尾   - - 4.5
なし 余市町 登1. (放任園) - 53.0 -
  〃  登2.   - 14.0 -
仁木町   - 11.0 -
注)1.調査地によって調査本数は異なるが、ほぼ50〜100本を調査した。
  2.余市町では毎年秋に殺そ剤の空中散布を実施している。

11.問題点

12.成果の取扱い (指導上の注意)
 ポリパイプと樹の根元の地表面との間にすき間ができないように装着すること。